旗艦級機動戦艦ホームシティ編……出逢った少女と残念なТシャツ
こんばんわ、楽しんでいただけましたら嬉しいです。
拝啓、アラハ先輩。
僕は『機動戦艦』なんてグーグー鳴り響くお腹のたしにもならないアニメの産物とばかりだと思っておりましたが、それは僕の全面的な勘違いだったようです。
『旗艦級機動戦艦ホームシティ』全長305m、全高111.8m、全幅160m、総重量42,530トン、収容人員285名のリリスの方舟と異名をとった伝説級の機動戦艦、かつて『聖魔大戦』のおりに雪女とアンドロイドと九尾きつね……そしてリリスが乗り込み、天使たちと壮絶な戦いを繰り広げた……と極丸さんが流暢にお話をしてくれましたが、アラハ先輩と三日三晩の勉強会(女子会)の成果らしいです……それはともかく只今、落とし穴に落ちてしまって一人ぼっちになってしまいました。
アラハ先輩……色々なことを知りすぎている貴方は一体何者なのですか? ……などと面と向かって聞く勇気のない、こんばんは、豆腐メンタルの僕です。
つい先ほど……。
「うーむ、抵抗もなく思ったよりもすんなり入れたでおじゃる」
「そうですね……いきなり光に包まれたと思ったら真っ白な廊下」
「まるで麻呂とリン殿を祝福するウエディングロードでおじゃるな」
「ほらほら! 極丸さん、あそこに扉が見えてきましたよーって、あれぇぇぇぇーっ!」
「ぐぬぬ、麻呂の一世一代の渾身プロポーズを綿毛の如く軽くスルーしたでおじゃるな……っておろろっ? リン殿!? 一瞬でどこに雲隠れしたのでおじゃるーっ!?」
と言う訳で古典芸能の一つっぽいアナクロな落とし穴におちてしまいました。
もう驚きすぎて心臓が『てやんでい! べらぼうめーっ』などと叫びながら早鐘を打ちつづけて吊り橋効果で極丸さんにほれてしまうところでしたよーっ!
そして着地点は体操マットも敷かれていない地べたに直角型しりもちでアタック……って痛すぎますよーっ! ううっ、何とかクッション・ザ・お尻は四つに割れずにすんだようです。
もうマジで某ジェットコースターより怖かった……シルクと放浪していた頃、「鶏肉まつのですーっ!」と言いながら飛んでいる燕を追いかけて、崖から綱なしバンジーをしてしまったシルクが「もうもう、ビックリしすぎて空中でチビってしまいました」と言っていた気持ちがよくわかったぞ……ってシルク! 今更ながら思い出すと単なる自殺行為じゃないですかーっ!?
不透明な艦内で極丸さんとはぐれてしまったことはとっても危険な予感……いや、貞操的には安全なような気がするぅぅぅ。
「お前……だれミュン?」
「ミュン!!」と背後から猫さんかい!と思ってしまうほど愛らしい奇声ながら凛とした声が僕の聴覚に狙いすましたように突き刺さる。
僕は恐る恐る嫌な予感がいっぱいで振りかえる。
おや、中学生ぐらいだろうか、あどけなさが残る相貌に『電電太鼓!』と大きく金文字が刺繍されてセンスのかけらも感じない黒色のジャージの上下を着ている少女が立っているぞ。
その少女……フラワーロックのようにアホ毛とツインテールをピコピコと揺らしながらぐぐっと気合いが入った腕を組み。
『何、人のお部屋に入ってやがる!』と思わせる傲岸不遜なオーラを漂わせながらこちらを睨んでいるぞーっ。
「不法侵入ミュン! うちのチャーシューメンの至宝チャーシューを脇役メンマと取り替えたぐらいの大罪ミュン! そこのお前! もう、メンマに土下座して謝るミュン、もううちはド怒屋長之助座衛門ミュン! マヨネーズの最後のひと絞りのりきみ加減で土下座外交ミュン!」
「メンマって何ですか? それは崇高な食べ物なのですか?」
「メンマを知らないのかミュン?」
「……はい」
「それは人生損している奴の代表だミュン……もう、オリンピック代表クラスだミュン」
アホ毛をプルプルと揺らしたジャージ少女は腕を組み、小さな声で「うーん、寝起きは頭がぼんやりの助ミュン……美少女の記憶喪失で確定ミュン」とわざとらしく伝えてきますよーっ!
「えっと……僕はリンと言います」
「むむむっ、名前を名乗るなんて殊勝な心がけみゅん! お前が切腹するときはうちが介錯してやるミュン!」
「心からお断りいたします!」
「好意を台無しにするやつは太刀魚の小骨が喉に刺さって三日三晩苦しめば良いミュン……という訳で異物は排除するミュン!」
言葉を短く切って捨てた残念系Тシャツの少女。
もうこれから起こる展開がわからないほど鈍感でない僕はただただ嘆息してしまうのであった。
いかがでしたか?
ついにSF要素まで投入することになりました。
そして、謎の少女……これからいったいどうなることやら。
読者の皆様には少しでもクスッと笑っていただけましたら幸せます。




