あれれっ、そういえば知らない人ばかり、我が家のメイド(奴隷)と懇親を深めてみよう……その1 病弱のロキア編
こんばんわ、無事に投稿できました。
ここは魔大陸北部、アササイ地方のとある平原の真ん中。
広大すぎる庭を散歩しながら見上げる景色、あっ、お空にプテラノドンもどきが飛んでる……と現実逃避をしてしまう、こんにちは僕です。
この世界(異世界)に帰ってきてからかれこれ三日が経ちました。
夢の中では奴隷少女Aや片腕の少女フレアルージュに殺されそう……殺されましたが、やはり夢ですねぇ。
「ご主人様、おかえりなさいませ」
玄関先で亜人の少女、フレアルージュが出迎えてくれる。
燃えるような紅色の髪を小奇麗に整え、凛とした面持ちで僕に恭しく頭を下げる。
幽霊奴隷専門店ちちくりマンマン亭で購入したメイド服がとても似合っているなぁ。
「ご主人様、危険ですのでお散歩をされるときは一声かけてください」
「危険?」
「はい、野良スライムをはじめ、ゴブリン、オーク、はたまた野良神や野良ドラゴンまでがウロウロしております」
「うちの庭って危険すぎる場所やんーっ」
「はい、ご主人様の敷地の外、平野のほうが雑魚モンスターしかいません」
そんなことを言いながらフレアは玄関の扉を開けてくれる。
玄関扉を開くと贅の限りを尽くしていそうな御影石がびっしり敷き詰められたただっ広い玄関ホールだ。
この御影石というものは僕やシルクがよく寝泊まりした橋の下のコンクリートとは肌触りが違うね。
そして金銀豪華絢爛の装飾品(前の持ち主が置いていった品)が並ぶ玄関ホールを抜けるとうちのメイドたちによって隅々まで掃除がされた廊下に続く。
廊下にはふかふかの赤絨毯。
ここまで贅沢な屋敷って……前の持ち主はだれだったのだろう?
一階の左奥、広間。
ここは僕がちちくりマンマン亭で購入した奴隷たちが寝食を一室だ。
これといった装飾品はないが12畳程度の広さのスペースが六等分されてそれぞれに簡易ベットと棚が備え付けてある。
僕的には一人ひと部屋を提供したかったのだけど、フレアの「甘やかすことはほどほどに私たちは奴隷という立場なのです!」と一言に同意した奴隷たちが自主的にこの部屋に落ち着いた。
「ゴホゴホ……ご、ご主人様」
「ロキア、無理に起き上がらなくていいよ」
僕の訪問に気づき、スレンダー……と言うより病的に痩せこけた白髪の少女がベッドから申し訳なさそうにこちらを見つめる。
「体調はどう?」
「はい……こ主人さまから支給されるお薬のおかげで楽になっています」
ロキアは安心したように口角をあげてにっこりと微笑む。
そういえば、うちのメイド(奴隷)たちとゆっくり話す機会もなかったなぁ。
よし、まずは話題をふってみよう。
「ロキア」
「はい」
「ロキアは何故、ちちくりマンマン亭で売られていたの?」
一瞬で笑顔が崩れてしまい、戸惑った面持ちのロキアは軽く瞳を閉じる。
青白い顔が真っ青になった……おおーっ、地雷を踏んでしまったかもーっ!?
「私……私は……」
「ごめんなさいーっ! 無理に言わなくていいから、僕が浅はかでしたーっ!」
ロキアは僕の言葉を一つ一つ噛み締めながら顔を横に振る。
「少しだけ私の物語を聞いてください……もう、遥か昔です……産業廃棄物の精霊から転生した父と注射針はチクリと痛い痛い教会でシスターをしていた母が熱い不倫の末に望まれぬ子が生まれてしまいました」
いきなりヘビーすぎる展開やんーっ!
「そ、それはまた……凄いご両親だね……」
「はい……少しだけ複雑な家庭なので」
複雑すぎるだろーっ! と心で叫んだことは内緒である。
「父であった産業廃棄物の精霊は山に芝刈りに行き勇者に殺されたと聞いています」
「山に芝刈りに……突っ込みどころ満載だね……」
「母はポータリア大陸最大派閥である聖天使ラリっちゃった教会の後ろ盾であるポータリア王国から注射針はチクリと痛い痛い教会の教えは邪教と認定され、宗教弾圧にあってしまいました……そして、燃え盛る教会で御神体の注射針と怪しい薬を抱えながら死んでしまいました」
「何だか……色々な意味でみんな邪教に聞こえるよ」
「はい……半分は嘘なので……」
「ええっ、そんなシリアスな雰囲気をまとっているのに嘘なのですかぁーっ!?」
「半分は……です」
この子はまともな子だと思っていたのにーっ。
ちちくりマンマン亭……おそるべし。
「ゴホゴホ……ご主人様……私の立場(奴隷)でこんなことをお願いすることは許されないでしょうが……一つだけ約束してもらえませんか?」
「うあぁぁーっ、ロキア、口から血が吹き出てますよーっ」
「安心してください……虚弱体質です」
「そんな虚弱体質があるかーっ!」
僕の叫びなどどこ吹く風か、ロキアは何か決意をしたようにゆっくりと瞳をあける。
そして、僕にすがりつくような想いを込めて見つめてくる。
「わ、私を……す、捨てないでください……」
「ロ、ロキア」
「私……ご主人さまのためなら喜んで何んでもします……どんなに虐待されても……性奴隷になっても……殺人でもします……だから……隅っこでいいんです……この家においてください」
「……ロキア」
「この言葉は本音です……嘘は言ってないです」
最後の最後でロキアが笑顔を見せてくれた。
病的で儚いけど笑顔だけど……本音の笑顔だって信じたいなぁ。
いかがでしたか?
気が付けばブックマークも99個にまで増えています。
これも本作を支えていただいているファンの皆様のおかげでございます。
早くブックマークが100個になるように魅力的な作品に仕上げていきます。
本当にありがとうございました。




