ここはたんぽぽ荘? 不思議×不思議は身の危険だらけですの巻
パラパラパラ・・・
何かあやしいものが降ってきた。
ハウスダストもびっくりの砂埃だろうか・・・ボロすぎる天井から僕の頭に積もる。
はぁ、この砂埃、芋虫みたいに蠢いているぞ。
僕が気持ち悪そうに砂埃? ぽいものをはらっているとおかっぱの少女が申し訳なさそうに頭をさげた。
「ご、ごめんなさい・・・これだけしかなくて・・・」
今にも消えそうな声だ。
まったく声量がない、僕同様にまともな御飯を食べていないのだろう。
ぐーっ、そういえばアラハ先輩とシルクが食べていたナス田楽・・・後で貰えるのだろうか。
そんなことを考えていた僕の前で力なく頭を下げるおかっぱの少女。
まともな生活をしていなさそうな101号室の住人? トロロさんが怯えながら少しだけ僕を見上げる。
その蒼い瞳は生気が感じられない、恐怖と諦観が入り混じっていた。
生きていることさえ辛いのだろう、トロロ自身が取り巻く環境が滑稽なまでにわかる部屋の雰囲気。
寝床が土床の敷かれた藁。
どこぞかの牢獄よりも酷い生活環境だ。
「ごめんなさい・・・お金・・・少し、もう少しだけ待ってください・・・必ず払います、お願いします」
微かにトロロの身体が揺れるとニュートン力学を実践するりんごよりも早く、地べたに正座をしておでこを土床に擦りつけて盛大に土下座をする。
この土下座・・・まったく隙がない。
土下座の上位スキルをフルコンポしたような芸術的土下座だ。
見入ってしまった僕の前で仕組まれたように、はらりとバスタオルが外れる。
一糸まとわぬ病弱にやせ細ったあどけない肉体に鮮明にのこる虐待痕。
そして気が付いた・・・この建物を囲むような喧騒。
「逆賊はくたばってしまえ」
「クソビッチ、お前なんて生きてる価値のない」
「大通りで馬鹿な変態に股開いてるクズは死ね」
このボロ屋が揺れるほどの罵倒や罵りの大声量が轟くと窓に石やゴミが容赦なく投げ込まれはじめた。
ちょっとどういうことだ、ここはたんぽぽ荘のはず。
これはヤバイ、外の奴らきちがいか、マジで殺意がある、兎に角早く逃げなきゃ。
ナイフや火炎瓶も投げ込まれる・・・うおぉー、火事ですよーっ、誰かーっ、119に電話してーっ。
背中にものすごくべっとりとした変な汗が流れる。
おーい、トロロさーん、そんなところで土下座している場合じゃないでしょ、投げ込まれるものがフリーダムすぎるぞ。
僕は血相をかえて這い蹲るように土下座をしていたトロロの手を握る。
えっ? と驚くトロロを引き寄せると玄関へ・・・あれ、な、ない、入ってきた玄関が消えてるーっ!
「家賃徴収人さん、窓の近くに立っていてはだめーっ」
――ゴツン――
窓の傍に立っていた僕の頭に破壊的な衝撃がぶつかってきた。
この音と衝撃・・・マンホールの蓋ではないですか。
念のために説明しておくが、僕はこう見えて怪我にも耐久かある強靭な肉体を持っている・・・そう、マンホールの蓋なんかに。
あれ・・・視界が真っ暗になる。
だれかが・・・いや、トロロさんだろう、「しっかりして、目を覚まして」と叫びながら僕の体をゆする、だけど、それすらもう、遠くの出来事に感じてしまう。
そして、僕は意識を失い倒れた。
あれ、三途の川の向こうで閻魔大王と鬼たちがおいでおいでと手招きをしているぞ。
これは予想外の展開だ。
それにしてもたんぽぽ荘の家賃徴収って・・・こんなに過激なのですか!