リン君とシルクの日常……その1
楽しんでいただけましたら幸いです。
僕とシルクは神社の階段を登っていく。
シーンとした神社はどこか寂しい。
何故こんな寂しいところを歩いているかって? 無論、今晩の寝床を探すためだ。
石の階段は左右には狛犬がででーんと陣取っており、真っ赤な鳥居が威厳を放っている。
「あにさま、お賽銭箱のとなりに食べ残しのお弁当が落ちているって教えてくれるこの神社の狛犬は良い奴なのです」
ふふーんと鼻を鳴らして興奮気味のシルク。
狛犬からの情報ってテレパシーですかーっ!?
お弁当の食べ残しだなんて、ご馳走すぎる。
シルク、ヨダレが垂れそうな勢いですよ……そりゃそうだろうな、僕ですらお腹と背中が引っ付きそうだもの。
「シルク」
「あにさま、何々なのですか?」
「ここって神社だよね」
「ほほーっ、なかなか博学なのです。そうなのです、人の善意の貯金箱(賽銭箱)とそれを生活の糧にしている神の一戸建ての住処がある、セレブな奴が住んでいる優良物件なのです」
「シルクは神様だよね」
「そうなのですーっ! もっと崇めてもらっても良いほどの神格の高い赤貧の神様なのです。貢物としてまずは拾ったお弁当のミートボールはうちによこすのです」
ぺったんこの胸をはって『偉いのですよっ』オーラを放ってくるシルク……全然ご利益がなさそうですよ。
頂上付近の鳥居をくぐると境内だ。
小さいながらも本殿があり、日頃は神主さんや巫女さんなどがせっせと仕事をしているのだろう。
「あったのです! 食べ残し弁当なのです、しかもほぼ無傷ではないですかーっ。むふふ、警察には届けてやらないのです、もし落とし主があらわれたら一割しかせしめられないのです!」
「シルク、こっちはお茶のペットボトルが封も切らずに捨ててあるぞ。消費期限がほんの一年しか過ぎてないなんて、良品だな」
「ほほほーっ、もうもう豪勢すぎるのです。昨日のタンパク質晩御飯、ゴキブリの姿焼きとは一味違うのです」
「あれは苦くてグロかったからな」
「そうなのです、うねうねして命乞いしてきましたが食べてやったのです。うちたちの鉄の胃袋、舐めたらいかんぜよ! それにしても黒のG君ホイホイ回収日雇いアルバイトでくすねたゴキブリ付きトリモチから剥がす手間も大変だったのです」
弁当とお茶をゲットした僕とシルクは雨風がしのげそうな境内の下にすすすっと忍び込み、本日の寝床を確保する。
心の中で『神社の神様ごめんなさい』と囁くと「大丈夫なのです、うちの方が神格が上なのです。文句言ってきたらげんこつの刑なのです」と言ってくれた……って心の声が聞こえているのかよーっ!?
さて、御飯タイムだ。
「あにさま、弁当のミートボールは譲らないのです!」
「僕はひじきとコメでいいよ」
「優しすぎるのです、あにさまは優しすぎるのですーっ。もうもう、うちのパンツをクンクンしても良い券を10枚あげたい気分なのです」
「そんな臭いものを嗅ぐはずないだろーっ」
「むむむーっ、クサヤよりは臭うかもしれないですがドリアンよりはマシなのです! そんなに言うなら嗅ぐがよいのです、ほれ、ほれほれ」
バタリ。
僕は意識を失った。
真っ白い世界が……。
何だか、遠いどこかでシルクが「あにさまーっ! 失礼すぎるのです!」と怒りながら呼んでいる気がするが、そっと僕の意識は深い眠りについたのだった。
いかがでしたか、一日一日コツコツと執筆していく所存です
。
皆様、よろしくお願いします。




