初めての家賃回収・・・ってええーっ、ここはいったいどこなのですか? 貧乏回収人と貧乏少女がであっちゃたの巻
僕は深呼吸をすると意を決して目の前の木造を叩く。
ドンドンドン!
その音は薄暗い廊下に激しく響く。
この近所迷惑な音は自宅警備員の壁ドンや床ドンのレベルではない、今は必至なのだ。
僕とシルクの運命がかかっているのだから。
家賃徴収管理人の実技試験。
正真正銘、たんぽぽ荘・・・101号室の玄関ドアを叩く音だ。
少し離れた場所で土偶・・・いやいや、アラハ先輩とシルクが物陰に隠れてこちらをみている。
おや、シルクが半眼ジト目なのはなぜだろう?
まぁ良い、今は家賃徴収のみに全力を注がねば。
「えっと・・・トロロさーん、居留守はバレバレですよ、そろそろ、耳を揃えて今月の家賃分のお金を持って出てきてくださーい」
待つこと10秒、こちらの呼びかけに反応はなし、ただ台所窓だろう所に影がゆらゆらと忍び足でゆっくり動く。
明らかに居留守だな、それにしてもあの影、震えてる?
「ここ開けてくれないと踏み入りますよ」
「ふえぇぇ、開けます、開けますから痛いことはしないで」
えらく弱々しく怯えた声だ、僕はこれで良いの? と確かめるためにアラハ先輩とシルクを見ると・・・嘘だろー、何、美味しそうにナス田楽食べてるのーっ!?
こちらもお腹と背中が引っ付きそうなのに。
ぼろっとした玄関ドアがゆっくりと開けられる。
もあぁとした空気が廊下に流れ出すと僕の胸がドキンと高鳴る。
見間違えるはずはない、僕の瞳に飛び込んできた映像、それはボロボロのバスタオルを胸元に巻いた少女だった。
上目遣いで見上げる蒼い瞳は怯えた色に侵食されている。
おかっぱに切り揃えられた上質な薄紫色の髪。
眉目秀麗だが怯え切った表情。
小刻みに震える白い肩下から巻かれた古びたバスタオルは僅かに膨れた乳房の膨らみを押しつぶす。
「ひぃぃぃ、そんなに睨まないで・・・・と、兎に角、こ、この、部屋には入らないほうがいいです」
「そういうわけには・・・あれっ!?」
部屋に一歩入ったとたん、妙な違和感が走る。
妙に肌がピリピリする感覚が襲ってくる、まるでわさびを肌に塗りつけられたような嫌な感覚、すると眩しいほどの光が僕を覆う・・・って何? 何がおきてる。
突飛な出来事に僕は思考が一瞬混乱するが直ぐに変化は収まる、いや、変化がおさまると言うより僕自身が変化の中で安定したのだろう。
僕の視界に飛び込んだ風景、思わず半信半疑な視線で見回す。
六畳程度の広さの小屋? 土床に土壁、隅っこに藁が敷いてある、おそらく寝床だろうか。
おや、水浸しのボロ布が干してある、もしや、服なのか?
「あ、あの・・・わたし・・・お家賃。お、お金がこれだけしかないです。だ、だから、叩かないでください」
あかぎれた手に握られた石銭、それほど価値のなさそうに見える、というか、それどこのお金なのですかー!?
一体、何が起きたのか、それに怯えすぎだろこの子。
たんぽぽ荘の実地試験の恐ろしさをこの後、知ることになろうとはこの時の僕は頭の片隅にも想像していなかった。