狂える銅の剣と剥かれた牙の巻
こんばんわ。
やっと書き上げることができました。
大変にお待たせいたしまして申し訳ありません。
「殺すある……あたしの大切なご主人様を手にかけるやつは殺すある! ついでにプリティなあたしから逃げ回って、名前をいっこうにつけようとしない奴もとっ捕まえて拷問して殺すあるよ!」
「「「あんぱーん」」」
「もしかして僕のことですかー!?」
「ご主人さまにはそんな記憶があるあるか?」(←かなりドスがきいていますよーっ)
「じゃ、僕ではな「最後の勧告ある……いいかげんにしないとぶっ殺すあるよ」」
これは危険信号なのですよーっ!
背後にどどーんと居座る人物に振り向けないです。
それに苛立ちを覚えてか鋭い殺気の持ち主が僕の言葉を遮り、かぶせて発言してくる。
もう25mプールの膝丈ぐらいまでは冷や汗をかき続けているぞ……脱水症状になりそうな気がするーっ。
「奴隷少女A……いや、剣帝様……その獲物……私にお譲りください」
フレアの殺意を込めた声、しかし奴隷少女Aが一睨みすると恐怖で身をすくませる。
これが格の違いだろう。
フレアの恐怖の対象を見つめる瞳がとても印象的だ。
僕が土偶神アラハ先輩にいじめ抜かれたあの日の瞳だ。
そう、ニートが壁ドンをして親から勘当されて茫然としながら自分の心配をしまくる瞳にそっくりだ。
「ご主人様に質問ある」
不機嫌そうに腕を組んでいる奴隷少女A。
これは『あたしの質問に答えないと拷問のように白いバリウムを山ほど飲ませて、腸で固めたあとにお尻……そう、菊の門に菊を突き刺して生花ゴッコと称して床の間に飾るぞ』と言っている瞳だ。
「これまでの所業……いったい、ご主人さまはあたしのことを……ど、どう思っているあるか?」
「どう思っているか?」
「そうある……た、例えば、結婚したい女性候補ナンバーワンにしたいあるとか、もう、離したくない候補ナンバーワンとか……ずっと、つきまといたい候補ナンバーワンとかあるあるよ」
最後のやつはストーカーやん! と突っ込みたいが奴隷少女Aの殺気がそれを許さない。
その問いかけそのものは微笑ましくもあるのだが、ついついバッドな言葉を口したときは死亡フラグが立つことが目に見えているぞーっ!
うむ、奴隷少女Aの想い出……僕が初めて異世界に飛ばされたときに道端でお腹を空かせていた少女であり、強制的に奴隷商人のもとに連れて行かれてお金を巻き上げられて。
カバのおっちゃんの串の屋台で散財させられて……古びた銅の剣を与えたらとっても喜んで……亜人をいっぱい殺しまくり、残忍で自分の周り以外の生物を路傍の石程度にしか見ない少女……サイコパスな上にマッドサイエンティストぽい感性。
だけど、純真で世話焼きで……僕のことになるとどんなに苦しい時でもやってきてくれる少女。
だから……はっきりと伝えておこう。
僕は勇気を振り絞って振り向いた。
奴隷少女Aと相対した時、彼女の瞬きもない強い眼光を一身に受けた。
「もう、待つのがツライある……だから……」
すとんと音が鳴る。
すると真っ赤な血が僕の胸から吹き上がる。
一瞬の出来事で痛みが神経に走らない。
伸びていた銅の剣が僕の胸から抜ける。
「だから……気付いて欲しいアル」
僕は力なくその場に崩れ落ちてしまう。
「あたしの愛情と……ご主人さまが持つ魂の欠けらのことを知ることある」
生暖かい鮮血が唇の端からも静かに流れる。
やがて僕の意識が深い闇の狭間に沈んでいく。
いかがでしたか?
楽しんでいただけましたら嬉しいです。
今後とも頑張りますので宜しくお願いします。




