魔神殺しの英雄と神速剣使いの剣帝、相対するの巻
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あたしは銅の剣を掲げ雄叫びをあげる。
その声にゴールデンあんぱん兵の士気も上がる。
あたしの丘を駆け下りる足取りは軽い。
粘着く土などものともせず死人あふるる世界に飛び込んでいく。
騒然とする場は死肉で足元が緩む。
「邪魔はゆるさないある!」
かつては村の少女だったであろう死人は皮肉めいた悲鳴が腐った喉から叫ぶと乱暴に切り取られた血の気の薄い顔貌があたしの銅の剣によって切り取られる。
少女ゾンビの眼球が地面に落下すると他のゾンビがそれを踏みつけあたしに襲いかかってくる。
見窄らしい容貌のゾンビたちは自らの意思を持たない死肉。
本能が赴くままに生命体を襲い、肉を喰らう。
地を踏みタタンを片足が跳ね上げて、握り締めた銅の剣を大きく振り回す。
鮮やかな閃光が嘔吐しそうな悪臭を放つ死肉をミンチ状に切り裂く。
あたしは理想の戦闘体系に持っていくため体感誤差を修正して再び死肉の群れに切り込む。
あたしとシンクロした銅の剣の剣撃でその原型をとどめることなく変形する死肉たち。
非現実的な剣撃のスピードは魔大陸でも名を轟かせているご主人様連合の剣帝、神速剣使いの異名を持つ奴隷少女Aならではのもの。
その剣技は魔大陸の魔王クラスも一目置くほどのものである。
「その奇想天外なあんぱん兵・・・そして、強力な魔法少女兵団・・・貴公ら・・・ご主人様連合の兵団か」
避けようとするにもかなわない死肉が飛び散る中、黒い影はあたしの視界に舞い降りる。
ここは戦場。
何があろうとも身をこわばらせる必要なし。
弱くて脆い人型の奴隷、街中ならあたしは路傍の石、そういう下賤をみる眼差しを向けるであろう者達。
強者である者達・・・であった吸血鬼が暗闇に溶け込むようにあたしの前に立つ。
「闇の血族が何かようあるか?」
「それはこちらの言葉」
吐く息が戦場の闇に消えていく。
あたしの視線と詰問に答えるように血肉を滴らせた漆黒のマントを纏った老吸血鬼が悠然した態度で明確な殺気とともに言葉を返してくる。
「我が主たる吸血皇帝マハールが統治していたアササイ地方である。我ら領域を土足で闊歩する下賤たる蛮族、死霊王グリゴールを討つべく始まった聖戦」
やや声のトーンを落としている凄みのある声色だ。
戦場の轟音がかき消されるほどの静寂なる殺気。
あたしは背後から襲ってきた冒険者風ゾンビの喉元を切り裂き、頭部を破壊すると再び吸血鬼に向き直る。
「あたしたちにとって、吸血鬼とゾンビの聖戦なんてどうでもいいある」
あたしは地面を蹴り上げ、仄かに身体が浮き上がるとゾンビの隙間をぬいつつ老吸血鬼との距離を一気に詰める。
そして、振りぬかれた銅の剣は老吸血鬼のマントを捉え、右腕を貫く。
老吸血鬼は身体をよろめかせるが追撃の隙を与えない。
「この剣撃に迷いがない・・・しかし、我らの聖戦に横槍を入れに来たわけではないな・・・」
「そう言っているあるよ」
あたしはとっても強いある・・・だけど、この老吸血鬼はあたしより強いかもある。
そんな思考が脳裏によぎりながらあたしは微笑んでしまう。
「あたしは先に進みたいだけある! こんなところでチャンバラしているのはおまえたちある、とっても迷惑あるよ、もうもう、献血の注射が突然、蛭や蚊になったぐらい迷惑あるよ!」
「我らにとっても血流の欠片もないあんぱん兵など迷惑千万! この場に置いて我らはあんぱん兵に手は出さぬ・・・故、さっさと突破するがよい、ゾンビ相手なら血肉を持たぬあんぱん兵は有効的に突破できるであろう」
ゾンビ相手に好き勝手に暴れまわってくれるは我が軍に利あれど、この戦は吸血皇帝マハールの意思を掲げた聖戦・・・手出し無用。
その意思が存分に伝わってくる。
「名を聞きたいある! あたしはご主人様連合の奴隷少女Aある」
あたしは死肉溜まりを踏みつけながら銅の剣を横凪に振うと禍々しいゾンビたちの血肉が吹き飛んでいく。
「貴女が魔大陸に其の名も高き、ご主人様連合の神速剣使いの剣帝か・・・我は吸血皇帝マハールの臣、クレルド」
「クレルド・・・ああーっ、吸血一族の英雄、魔神殺しのクレルドあるかーっ!? 絵本で読んだことあるあるよーっ!」
「剣帝の余裕か・・・この戦場を達観しての一言だな」
驚いて反射的に言ってしまったあたしの一言に老吸血鬼クレルドは孫をみるような優しい眼差しでこっちを見てくるのであった。
いかがでしたか?
奴隷少女編、もう少しお付き合いください、宜しくお願いします。
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