その乙女の想い・・・奴隷少女Aと国家会議の巻
こんばんわ、病気に負けず書き上げました。
皆さまに楽しんでいただきましたら嬉しいです。
空からチラリチラリと雪が舞い降りていた。
あたしは急ぐ。
夜遅く人の気配がない静寂に包まれた大通りをまっすぐ城に向かった。
頬は紅潮して、露出した肌は少し寒く、乱れる吐息は白く色づく。
やがて深夜の世界の真ん中に大きな建物が・・・そう城が我が物顔で鎮座している。
この辺りになると城兵の姿がちらほら見え始めた。
そう、敵襲に備えて城門の周辺はあんぱん兵が昼夜を問わず守りを固めている。
「来てやったあるよーっ、開門あるーっ! あたしが来たあるよ! すぐに直ちに刹那に開門あるよーっ!」
「「「あんぱーん」」」
はやる気持ちを抑えて奴隷少女Aはとっても大きな声で呼びかける。
厳しい口調とは裏腹に仄かに表情が緩んでいることを認識してしまう。
ギギギーッ
外灯の淡い光に照らされた城門が開く。
あたしは一目散にトロロっちたち幹部が集まっている玉座の間へ螺旋階段を駆け上がった。
階段を上がりきって、だだっ広い廊下を走り抜ける。
もう、安物の赤絨毯は走り難いあるよ!
やがて、突き当たりの鉄扉の前であたしは立ち止まる。
「深夜に呼び出されて来たあるよーっ、とっとと開けるある!」
「「「カレーパン」」」
鉄扉の向こうから精鋭兵のカレーパン兵の声が響くとギギギーッとした音とともに玉座の間が開かれる。
玉座の間に足を踏み入れると夜に起こされて貧血気味のトロロっちとご主人様連合の幹部である魔大陸に武勇も轟く十二将軍が緊張感たっぷりの表情であたしを待っていたある。
「ああっ、良かった、とっても早かったですね。雪がちらつく中でいつもの薄着ですが寒くはなかったですか? カレー兵、すぐに奴隷少女Aさんに暖かい飲み物をもってきてください」
「「「カレーパン」」」
「トロロっちはご主人様と出逢ったときのあたしのセクシーなボロボロ服姿にジェラシーあるか!? ふふん、乳のデカさだけが乙女の武器じゃないあるよ。一回50石銭ののぞき部屋の穴からプライベートを監視しているような言い草ある。覗き料をせしめてやってもよいあるよ」
「そんな下品趣味はありません!」
「乳首黒いくせにある」
「はっくりくっきりピンクです! 絶対に黒くないですーっ!」
「おまわりさーん、深夜に叫ぶ痴女がここにいるあるよーっ!」
「ぐすん、いじめないでーっ」
今、あたしがおちょくった・・・いや、絡んできたのはトロロ。
かつて、ご主人様にたんぽぽ荘101号室の家賃を催促をされていた薄紫色のおかっぱに碧眼、その上眉目秀麗であたしのおっぱいが大きい奴あるよ。
ふふん、今は絶壁でも・・・あたしがもう少し成長期の期間が長くなればおっぱいもプリンプリンになるはずあるよ!
「奴隷少女Aよ、夜分に呼び出したのははかでもない」
ちょこっと偉そうなヒゲ男爵こと十二将軍筆頭ハドラーが親愛の情の欠片も伺えない冷めた声音が玉座の間に響いた。
こいつはかつて地下深くに幽閉されていた勇者の子孫である、魔大陸の反魔王同盟にも顔が効く有力者。
無論、ご主人様ラブのあたしほど強くはないけど、オークの大群を一人でねじ伏せた生粋のドワーフ武人であり、ご主人様を慕っている仲間ある。
「あんぱん兵から聞いたある、土偶神様の福音でご主人様の居所を伝えてくれたあるよね」
「その通りだが・・・」
むむむっ、このヒゲ男爵、何か言いよどんでいるある、さっさと吐かないとヒゲ毟るあるよ!
あたしは玉座の間に居座る重鎮をざっと睥睨してふと疑問が浮かんだ。
するとそんなあたしの心を見透かしたようにトロロっちが唇を噛み締めながら一歩踏み出して開口する。
「リン様が転送された場所は魔大陸北部、アササイ地方クレスコ平原」
「アササイ地方ーっあるか!?」
「う、うん・・・そのなの」
当然というべきか・・・あたしはご主人様の運の悪さに絶句した。
魔大陸北部のアササイ地方は現在、統治していた吸血皇帝マハールが死去後、その血族の吸血鬼の眷属と死霊王グリゴールが地方を二分して争っている。
とても危険な地域あるよーっ!
「あたしの部隊がすぐにご主人様を救出しに行くあるよ!」
「それがそうにもいかんのだ」
「ヒゲ男爵は黙っているあるね」
「お主に気持ちもわかるが、今、我が軍最強の英雄たる貴女に抜けられてはこまるのだ」
語尾を荒げて言ってきても聞いてやらないあるよ!
「騎士爵バウナーの弔い合戦として地方伯爵デュラル公が配下の騎士爵を召喚して連合軍でこの地域に攻め込む準備をしていると情報が入ってきた」
「ぐすん、そんなに睨まないでください・・・ハドラーさんの言うとおりなのです。地方伯爵デュラル公の進軍が間近なのですよ」
あたしの視線にビビリながらひっしにトロロっちが訴えてくる。
皆の気持ちは理解できるけど、本質を履き違えてはいけないある。
あたしたちはご主人様あっての自由。
たとえ、隣国から侵略があってもあたしの最優先はご主人様。
「馬鹿じゃないあるか!? この国の国民もあたしたちも全てご主人様に救われたのあるよ、そのご主人様を見捨てて、国・・・そう、生活を守るっていう私利私欲にちかい衝動のためにあたしはご主人様を後回しにするつもりはないある」
「もし、我が軍最強の貴女が一時的にしても国を抜けた状態で戦闘にはいれば、国民にどれほどの死者がでるかわかっているのか!?」
激高したハドラーの声に玉座の間に緊張感がはしる。
だからあたしは言ってやったある。
こんな恩義を忘れて、地位にしがみつき、我が身可愛さにご主人様を見捨てようという奴らに。
「ご主人様を蔑ろにする奴なんて・・・みんな死ねばいい」
あたしは怒りと殺意をまぶした言葉をトロロっちや将軍たちに吐き捨てると玉座の間を出て行った。
いかがでしたか?
この奴隷少女Aは深い思い入れがあるキャラ部門上位のキャラクターです。
もう少しだけ、奴隷少女視点にお付き合いくださいませ。
ブックマークや感想、心よりお待ちしております。
拝読していただきありがとうございました。




