異世界の戦力と置いてきぼり少女の巻き
こんばんわ、ついに奴隷少女Aの視点に移ります。
いかにして、主人公の臭いを嗅ぎつけて軍勢を差し向けるのかを少し紹介していきます。
どうしておいていくの。
そんなに帰りたい顔して。
手を伸ばしてもいつも貴方に触れることができない。
あたしはこの世界においてけぼり。
どんなに追いかけてもあの人はあたしの前から消えていく。
いつも追いついて、その傍らまで近づくのに・・・この想いはつたわらない。
どうして・・・あたしをおいていくのですか?
どうして、どうして、どうして・・・。
燦々と輝いていた陽が暮れて、のっぺらぼうな月が夜のお空にのさばり始めた頃、とっても僥倖な情報、そうあたしに第一報が入ったのはお肌すべすべ入浴後のつかの間のひとときだった。
「あんぱーん」
この地域の支配者だった、騎士爵バウナーをご主人様とあたしの二人で倒して奪い取った領土。
解放した奴隷たちとともに打ち立てた『ご主人様連合』。
今や、魔大陸全域に其の名を轟かせている新興勢力と言われるまで強大になった。
そんな、あたしたちの『ご主人様連合』が建てたお城から伝言のあんぱん兵があたしに何かを伝えに来たらしい。
伝えに来た、そう、あたしはお城に住んでいない。
そして、あたしのおうちには警備の者なんていない。
常識から考えれば、『ご主人様連合』の重鎮であるあたしがとてもありえないスラム街の隅っこで暮らしているなんてだれもおもわないだろう。
あたしが住んでいる場所。
ここはめがねドジっ子で虐げられた異世界勇者たちの子孫であるトロロっちが住んでいた元家である。
ここに住めば・・・そう、トロロっちが行っていた『たんぽぽ荘101号室』と言われるこの部屋に住めば、もしかしたらご主人さまがやってくるかもしれない。
そんな淡い期待にすがるようにあたしはボロくて品が無いこの部屋を少しばかり住みやすく改造して住んでいる。
「あんぱーん」
「何度も叫ばなくてもよいある、お風呂上がりある、急かすなあるね」
「あんぱんぱーん」
「・・・わかったあるから、すぐに出るから待つある」
奴隷少女Aは口の中でごちりながら身体を包んでいたバスタオルをベッドに置いて、一糸まとわぬ姿の上から愛着のあるボロ着を着る。
このボロ着はご主人様と出逢った時に着ていた服・・・あたしにとって、こ主人様と過ごした時間を知る、数少ないアイテム。
「こんな夜更けに何あるか?」
少し喧嘩腰な口調。
しかめ面で玄関を開けると・・・あんぱんが怯えているある。
「あ、あんぱーんぱーん」
「えええーっ!? ご主人さまがーっ」
「あんあんぱーん」
「土偶神様のお言葉ですってあるか!」
あたしの気迫に圧されてしどろもどろあんぱん兵。
あたしの顔は真っ赤になっているだろう・・・この喜びは、もはや狂喜ある。
脳の中を高濃度で沸騰したご主人様に逢いたい細胞があたしの感情を高揚させる。
「すぐにお城に出向くあるよ!」
嬉しい誤算とはこのことある。
てっきり、最近あたしたちの領地にちょっかいかけてくる地方伯爵デュラル公の刺客(嫌がらせ)かと思っていただけにおおっぴらに喜んでしまった。
熱っぽく紅潮する頬が熱い。
誘う蜂蜜色の瞳に光を宿し、エメラルドグリーンの煌きを髪に纏いながら奴隷少女Aは大切な銅の剣を持ち、お城に向かうのであった。
いかがでしたか?
これから盛り上げていく所存です。
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