土偶神と家族って言葉の巻
こんにちは、やっと書けました。
この回はしっぽりした話です。
喜んでいただけたら嬉しいです。
――あにさま・・・黙っていてごめんなのです・・・好きです、好きなのです、だから・・・幸せになりやがれです・・・ずっと、ずっっっっと、一緒にいたかったです――
シルクのかすれた声・・・地平線を揺さぶる様な衝撃が走った最後の言葉だった。
困り果てたようで悲しそうで。
頬を撫でる涙が全てを物語ってといた。
空でも陸でもどんな苦しくて貧しかったころもずっと一緒に肩を寄せ合って、心を寄り添って生き抜いて。
こんなちっぽけで忌み嫌われる存在(奴隷)だった僕をあにさまと言って懐いてくれたシルクが僕の前から消えた。
『うちたちはどうやらかしたらお金いっぱい稼いであったかいおうちで幸せになれるのですか?』そんな言葉を煤ばんだ真顔で平然と言ってきた極限の貧乏を極める赤貧の神様のシルクが。
「そんなゾンビみたいなげっそりした顔色、わたくしの土偶専用パンティをクンカクンカと匂ぐことを生きがいにしている童貞エロチンコ魔人似合いませんことよ! シケた根性でどつぼ人生真っ盛りになるのでしたら四桁五桁の計算もできなさそうな陰金田虫の助と名を変えれば良いのです!」
「なんでパンティを匂がないといけないのですか! そりゃ、シルクの下着にムラムラしてこっそり口の中に入れて堪能しようとしたら、あまりの悪臭に倒れて救急車で運ばれたことがありますが・・・それに陰金田虫の助ってセンスのない最低なあだ名じゃないですか!?」
「なんですって! なんて失礼なことをいうのですか! たんぽぽ荘三号棟の陰金田虫の助さんにあやまりなさい!」
「その人、本当にいるのですかーっ!?」
「いますわ、家賃滞納のスペシャリスト・・・私の管轄ではありませんが上級滞納店子の一柱ですわ」
土偶神のアラハ先輩がうむうむと頷くととっても不似合いな可愛らしいポシェットから一枚のチケットを渡された。
貰ったチケットからひんやりとしたとした感覚が伝わってくる。
そこには災いの神婚約トーナメント参加券(参加料一万円)と印刷されていた。
こ、これって!?
「結婚も恋愛も結局は競争なのですわ・・・そう、例え敗れても・・・競争なので・・・シクシク、あら、瞳から大量のお水が流れてしまいます」
「いやーっ、アラハ先輩! 泣き止んでください、密室の部屋が・・・ブクブク」
・・・五分後
「ちょっと溺れさせてしまって申し訳ありませんでしたわね、ちょっと先日、学校の校庭にある伝説の木の下で告白したら・・・悪趣味な土人形マニアと付き合うつもりはない・・・などと言われたの淡い想い出を思い出して・・・ううっ、シクシク」
「うあぁぁ、もう泣かないでくださーい」
「シクシク・・・あれ、良く見れば」
「うおぉ、急に顔を近づけないでください、迫力満載です」
「それも燃え上がりそうな恋のキラメキかもですわ、ムフ・・・」
「アラハ先輩! 冗談は顔だけにしてください!」
「言いたいことはよくわかりますわ」
『わたくしほどの器量良しが近づいたら・・・』と何か勘違いをしているアラハ先輩、その土偶顔が暑苦しく怖いだけですよーっ。
「わたくしのたった一人の可愛い部下であり家族も同然ですもの。わたくしがシルクとの恋のキューピット役を引き受けてさしあげますわ」
土偶の瞳の奥に光る決意の意思。
アラハ先輩はそっと目を細める。
僕にはもうわかっていた、そう、シルクを取り返すには非力で人である僕一人ではどうすることもできない。
アラハ先輩はあちらの世界でも有名? そうだったし、なにより『家族』その口から紡がれた言葉がうれしかった。
いかがでしたか?
ブックマーク登録や感想、お待ちしております。
次の回ぐらいからハードな回に入る予定です。
お楽しみにしてもらえれば嬉しいです。




