彷徨い神と名無し奴隷の巻
こんばんわ、無事に書き上げました。
それはまるで広大な砂の海だった。
地平線に沿って昇りゆく太陽が遥か彼方まで煌々と照らし尽くす灼熱の大地。
土偶ねいちゃん(アラハ)に首根っこを掴まれ、放り投げられた扉の向こう側。
今だからこそ思う・・・こんなところだなんて思わなかったですーっ!
足を踏み出せば砂・砂・砂・・・乾いた唇を隠すように厚めのボロボロの布で口元をおさえて歩く。
ペットボトルの水は瞬く間になくなりました。
太陽に温められた大気・・・もう汗も出ないし、吸う息は肺まで焼けてしまいそうなのです。
砂漠に放り出されて三日目・・・多少、陰りがある岩場を見つけてシルクは少し休むことにした。
「あにさまぁ~、うちが悪かったのですぅ・・・くすん・・・むむっ、この岩に張り付いたトカゲ美味そうなのです、三日ぶりのご飯いただきます・・・ごほごほごほ」
シルクは大きく咳き込むとトカゲを摘み、口に放り込むと涙が溢れた。
後悔・・・知らなかったとは言えあにさまがこんな過酷な土地で頑張っているときにうちは・・・まったく相手にされなかったのでジェラシーの塊になってしまっていたのです。
「はうう、トカゲ程度じゃ腹のたしにもなりやがらないのです・・・喉もカラカラです・・・もう・・・永遠にあにさまに逢えないかもしれないです」
そう、口走った途端、込み上げる思い。
逢いたいです、うちはあにさまがいればなにもいらないのです。
いっぱいわがまま言ってゴメンなのです・・・お部屋で一人、アイス食べてごめんです・・・ナス田楽美味しかったです、ダンボールハウスに住んでいるとき、お金に困って100年はいたうちの使用済みパンツを売りに行こうとして、あまりの悪臭に吐いたこと許してあげるです。
「あいやー、間違えたある・・・か? いや、ご主人様の薫りが・・・するある」
妙な確信がある言葉がぺしゃーと岩陰で倒れていたシルクの頭上から降り注ぐ。
こんなセンチメンタルなときにいったい誰ですか?
脱水症状で干からびそうなシルクはぼんやりと虚ろな瞳で見上げた。
「女・・・ある、も、もしや、またしても浮気あるかぁーっ!」
緑色の髪を靡かせてた少女だ・・・いや、ペッタンコな胸のあたりから幼女であろう耳のとんがった奴が身の程知らずにもうちに向かって銅の剣をむけてくるのです。
もしかして、うちを三枚おろしにして食べるつもりじゃーっ!?
「クンクン・・・間違いないです。あの変態ご主人様・・・うちに可愛らしく愛らしい名も付けないまま、サソリ男の娘や砂かけババア以外の女・・・いや、幼子に手をだすなんて・・・次見つけたら罰ゲームある」
あよよーっ、うちは煤まみれで汚いし骨ばっかりで美味しくないですよーっ!
心でヘルプーと吠えるうちの身体を軽々と持ち上げたのです。
この子、凄い、怪力なのです。
「このご主人様の臭いがプンプンする奴、アジトに帰ったら、ご主人様のこと洗いざらいはかすある」
びえーん、誰かーったすけてー。
うちは力強く担がれて晩御飯のおかずにするべく連れさらわれたのですーっ!
ほぼ変わらぬ体躯の相手にひょいと担がれたぐったりしたシルクは心の咆哮とは裏腹に狩られた小動物のように無抵抗に運ばれるのであった。
いかがでしたか?
この章あたりから少しの間はシルク編になります。
やっとヒロインが動き出す・・・予定です。
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