集落の主と妖怪婚期逃し(砂かけババア)? の巻
ついに砂かけ登場しました。
本来ならば人などが住むに適していない砂漠の真ん中。
そこに退廃した王国や粘っこく腐敗した政治に愛想を尽かした不法移民や捨て子、はたまた逃げ場を無失った騎士や犯罪者、そして亜人や魔族まで色とりどりな種族がそれぞれの事情で中規模の集落を形成していた。
無論、ここに集まるにはそれなりの原因があった。
一つ目はオアシス(水)とか細い実りがある畑が点在している。
二つ目は来るものの過去は問わずに寛容である。
そして、三つ目、それはここを治める主が砂漠の創造者であり、魔王たちからも絶対不可侵域と認められていることである。
只今、本来のサソリにもどった極丸より脳内テレパシーにてそんな説明を受けました、こんにちは僕です。
目の前には頭にターバン、全身を覆い隠すほどの灰色のローブ、そして、牛乳の蓋をレンズにしたようなグルグルめがねの妙齢の女性が赤い瞳を艶っぽく潤ませて僕を見る。
「若い坊やが淑女に対して出会いがしらに化物扱いかい、ナンパの類じゃないようだね」
ゾッと背中が寒くなった・・・こんな灼熱の砂漠で背筋が寒くなるなんて・・・本能的エコロジー天然クーラー・・・なんて言えないぞ、ヤ、ヤバイ、殺意がビンビン感じるぞ。
こらーっ、極丸、サソリの姿でこっそり砂の中に隠れないでーっ! 尻尾だけ丸見えですよーっ!!
「見たところ、移民でもなさそうだね。可愛い顔した坊や・・・何者だい、もしかして、こんな辺境で砂塵ドラゴンの交尾相手にでもなったのかい?」
嘲った冗談めかしつつも、その気迫は圧倒的なものだ。
「僕はたんぽぽ荘から来ました、家賃徴収管理人のリンといいます。102号室の砂かけババアさんから家賃を貰い受けにきただけなので、その・・・」
「ふーん、家賃徴収管理人ねぇ・・・、又、とんでもなく貧弱な子を差し向けたものね」
「も、もしかして、砂かけババアさんの所在をご存知なのですか?」
「?・・・坊や、何も聞いていないのかい?」
息が止まりそうなほどの殺気がなりを潜めたが、この妙齢の女性は怪訝な面持ちをすると腰元の袋に手を突っ込んでゴソゴソと何かを取り出した。
そして、何やら一枚の紙を取り出した。
おや、その紙・・・市役所などで見たことあるような・・・って、でかでかと婚姻届けってかいてありませんかーっ!?
「坊や、ここにハンコ・・・いや、名前を書くだけで家賃を払ってあげるよ」
「家賃を払うって言うことは・・・もしかして」
「可愛い顔して鈍感な坊やだね、童貞かい? この魅惑的プロポーションの私が砂かけババアだよ」
ズレたグルグルめがねの隙間から見える赤い瞳で僕を射抜く。
僕は身の危険(貞操の危機)を感じ取るが身じろぎできない、蛇に睨まれたかえる状態だ。
「いやいや、おかしいでしょ、家賃払うのに、どうして婚姻届けにサインをしなければいけないのですか」
「さあね、何だか、坊やを見ていると胸が締め付けられて・・・すごく、欲しくなるんだよ。その身も心も・・・魂も・・・」
「いやはや、よもやいき遅れの売れ残りクリスマスケーキの異名の砂かけババアまで毒されるとは、リン殿の能力に脱帽でおじゃる」
「その声はアラハのところのサソリの小娘風男・・・いやオカマだったかい」
「誰がオカマでおじゃるか! いき遅れお婆の分際で」
「ほほっ、とんだ減らず口だね、誰がいき遅れだって」
フフンと鼻を鳴らした極丸を一瞥した砂かけババアが『グヌヌ』と悔しそうに唇を噛む。
「わかったでおじゃる。勝利したほうが今夜、リン殿を抱くということでどうでおじゃる」
「ふん、望むところだ。坊やの生気を干からびるまで搾り取ってあげるよ」
「干からびるってどういうことですかーっ! 僕の了承もなく勝手に賞品にしないでくれぇぇぇ!」
砂かけババアとスコーピオン・クイーン極丸の侮蔑するような視線のぶつかり合い・・・いやぁーっ、火花散っているし、もう、お金を回収して早く帰りたいぞ。
そんな僕の願いも虚しく、おぞましいけどバカバカしい戦闘が火蓋をきったのであった。
いかがでしたか?
楽しく読んでいただければとても嬉しいです。
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