神隠しと異世界転生者の巻
こんばんわ、頑張って執筆しました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
瞼の裏に潜み蠢く形容し難い闇、あらゆる混沌を内に包むこんだ漆黒の闇。
僕の意識はその奥にある何かに捉えられそうだった。
『早く・・・解き放ちなさい・・・』
その言葉は好奇心と探究心で満たされた居心地のよい声音。
その視線は興味深い観察対象・・・そう、被験者を弄ぶ視線。
その深闇は怠惰と誘惑で満たされた深闇。
『貴方の魂は・・・わたしの欠片・・・』
穏やかな声音のまま、語りかけられるおぞましい言葉。
『貴方は仇・・・わたしの欠片をもった可愛くて大好きな・・・仇』
『フフフ・・・わたしの可愛い子供・・・よくも殺してくれましたね』
美しき声音が奏でる怨嗟の響き。
『今少しだけ・・・待ってあげるわ・・・リリス・・・いえ、今はリンでしたね』
その声は最後に僕の名を呼んだ・・・リンと。
僕はとっても重たかった瞼を開けた。
その瞼、例えるなら・・・それはそれはアロン○ルファで瞼を塞がれたほどの頑固な重たさだった。
開けた視界いっぱいの極丸の顔が・・・って、何故、唇を窄めている!?
僕は極丸の頭を容赦なくしばいた。
「痛いでおじゃる、モーニングチューのチャンスを・・・いやいや、やっと起きたでおじゃるか」
『何てことをおじゃる』と言いたげな眼差しをこちら向けながら極丸が。
「安心するでおじゃる、唇はデザート・・・メインはいただいたでおじゃる。それにしても麻呂がお尻を撫でくりまわしてピーピーしても起きないなんて・・・やはり、リン殿は男色のけが・・・」
「そんな、け、あるわけないでしょー、というか、撫でくりまわしてピーピーってなんやねん!」
「そんなに聞きたいでおじゃるか? ぽっ」
「いや、むしろ、この場所について聞きたい」
「この場所? うむ、では麻呂から問題でおじゃる、ここは何処でおじゃるでしょう!?」
もしかしてコイツ(極丸)も知らねーんじゃないのか?
僕は不思議そうに周囲を見る。
赤茶レンガに囲まれた仄暗い部屋。
室内の大気に毒素が含まれているのだろうか、衣服があちこち破れた男や物乞いのような女・・・皆、顔色が土色だ。
再び極丸を見ると『その御仁をみるでおじゃる』と言っているように瞳をむけた。
そこには騎士らしき人物が座っていた。
ただ、他のものと違い生気を宿した瞳をしている。
なので僕はすっと立ち上がると剣に寄りかかりもたれている騎士に声をかけてみた。
「もしもし」
「亀よ、亀さんよ・・・」
「世界のうちで・・・」
「お前ほど・・・って、何故、我が母国、日本の歌を知っている!?」
騎士の顔に驚きが走る。
同時に僕も『もしもし』と言ったら、『亀よ』と答えた騎士の残念なセンスに驚愕した。
「答えろ! 日本を知っているのか? もしかして俺のように無理やり召喚されてきたのか!」
ヒゲっ面のオヤジが真顔で迫ってきた・・・とってもうっとおしい。
「召喚・・・それを日本では神隠しというでおじゃる」
「神隠し?」
「そうでおじゃる」
極丸が『えっへん、麻呂は物知りでおじゃるでしょ』と言いたげにまな板な胸をはる。
ただ『神隠し』と言葉に再びヒゲっ辛の騎士が驚きを見せた。
「そして、其処のモサモサヒゲの御仁は異世界転生者でおじゃる」
「異世界転生者!?」
「そうでおじゃる、その証拠にここの独房に編みこまれた『高濃度の欝素』の呪縛がこの御仁にはまったく効果がないでおじゃる」
「高濃度の欝素?」
「リン殿・・・無知は罪でごじゃる・・・あちらの世界に戻ったら勉強を教えてあげるでおじゃる・・・さっきのピーピーのお礼に・・・むふ」
その笑顔はとっても怖いですよー!
僕は小さく溜息を吐いた。
ただ、極丸の表情が無邪気で、楽しそうで、愉快そうな笑みを浮かべ、まるで幼馴染のお姉さん(お兄さん?)みたいな口調で。
「出し惜しみは死に繋がるでおじゃる。いい加減に力を見せるのでおじゃる・・・リン殿」
その言葉に反応するように突然、大勢の足音がこの仄暗い部屋を囲むように鳴り響いた。
拝読ありがとうございました。
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