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こちら陽気なたんぽぽ荘 ~大家と店子の家賃戦争~  作者: かきくけ虎龍
第一部 たんぽぽ荘の家賃徴収人のお仕事編
2/162

もしかして罠なの? たんぽぽ荘に到着とかえるの音色

僕はもともと、どこにでもいる普通の人間だった。

 ただ、少し、常人よりも腕っ節が強く、か細いわりに病気にも怪我にも耐性のある強靭な肉体を持っているだけだ。

 そして、男性とは思えない美少女顔。

 よく大阪眼鏡橋でティシュ配りのバイトの最中にナンパされたり、風俗の勧誘を受けたことが懐かしい。 無論、僕は大和男児だ! 女の子顔だからって男色のけはない。

 少しばかり路銀に困って、××なバイトをしたことは記憶の彼方にしまって置く。

 

 ただ、僕は奴隷だった。

 幼きころに誘拐されて人身売買組織僕が売られた奴隷だった。

 売られたさきでうけた屈辱の日々。

 そこで、シルクとの出会い。

 シルクとはあの屋敷から脱獄をした仲間。

 自称・妹気取りだが信頼できる仲間。

 脱走を決行したあの日の決意、全てはたんぽぽ荘に導かれるためのお膳立てだったのかもしれない。


「あにさま、チラシの住所、うちたちの新しい住処、そう、子作りの巣はここのようです」

「シルク、ぶっとんだ頭の中に蛆虫でも湧いたのか? 脳みそをそれ以上熟成させると溶けてなくなるぞ」

「ぐふふ、流石はあにさま、鬼畜のドSです、あにさまはロリコン病にかかった極悪非道のサドスティクです、もうもう、そんなにうちを欲しいならお礼にうちの匂い付きほかほかパンティをさしあげるのです」

 

 シルクの変態的思考は今に始まったことではないので軽く流す。

 それしてもシルクの変態的な表情は百人いれば百人が振り向いてしまうほどの可愛らしさだ。

 140センチ弱の小柄で日本人形のように腰元まで伸びた黒髪が特徴的。

 体型は残念なほどスレンダー、幼児体型というやつだろう。

 貧乏丸出しのボロボロでくたびれた衣服を身にまとっていてもその愛らしさはいっこうに失われない。

 齢600歳と自称する貧乏・・・いやいや赤貧の神。

 そんな神様は只今、目的地であるたんぽぽ荘の穴があいた外壁から「いひひひ・・・敵状視察なのです、悪い子はいねーかー」と不敵の笑みを口元に浮かべて中を覗いている。


「シルク、行くよ」

「ううっ、うちという大切な妹を置いていくそぶりを見せるとは、この愛情の裏返し放置プレイ・・・はうう、悶えてしまいそうな快感です」

「そのまま昇天して天に帰ってしまえ」


 一人悶えるシルクを尻目に僕は玄関であろうツタ植物が我が物顔で出迎えてくれる玄関門の前で立ち止まった。

 土地が有り余っている田舎とはいえこの一画まるまる占拠している大きな平屋だ。

 一見、手入れが行き届かずお化け屋敷にも見えるが生活臭がはっきりと見えた。


「あにさま」

「とりあえず、そこの薄汚く埃かぶったインターホンを押してみよう」

「ぐぬぬ、インターホンの上にある張り紙に『触らぬ神に祟りなし』と書いてありますです。あからさまに怪しいです」

「うん、そうだね、絶対に罠だろうね」

 

 僕は納得したようにシルクの言葉に頷くとそのままシルクの手首を持って、インターホンにぶつけた。


「うにゃー! このやろう人差し指脱臼なのですーっ。痛いのですーっ、責任をとってうちをお嫁さんにするのですーっ」

「安心しろシルク。人の格言で『痛い痛いも好きのうち』や『豆腐の角に頭をぶつけてマゾになる』などの由緒正しき言葉がある。少し実践しただけだ」

「そ、そうなのですか。流石はあにさま、物知りです。それなら許してあげます」


 なんてちょろいやつだ。

 そして僕とシルクは炎天下のもと、「ゲーコゲーコ」と田んぼに生息するかえるの合唱を聞きながら一時間ほど待つ羽目になるのであった。

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