砂漠の大軍勢と運命の悪戯の巻
こんばんは、何とか時間を見つけて執筆しました。
楽しんでいただけましたら嬉しいです。
お空に煌々と輝くお天道様がどんより雲におおわれたのか!?
と思ってしまうほどの矢が上空より降り注ぐ。
もし天界か
ら天使の落し物なら悪意の満載だ、これを落とした奴がいたならまさしく堕天使一歩手前だろう。
降り注ぐ矢、その数は目測にして100万本以上。
どこぞかの赤壁の戦いを只今実体験しております・・・こんにちは、僕です。
砂漠のど真ん中、気配を潜めて隠れる場所もない僕はただ、茫然と降り注ぐ矢を見上げていると
「何をしてるでおじゃる! 助けてやるので麻呂の腰にしがみつくでおじゃる」
危機を察知した刺のあるきつい声音だ。
腰をおとして防衛をするための何か仕掛ける雰囲気が漂う極丸が高圧的上から目線の言葉で僕に行動をうながす。
もう迷っている暇などなかった。
僕はすぐさま、言われるがままに極丸の腰にしがみつく。
ただ、年頃の少女(男の娘)のくびれたウエストに積極的飛び込んでしがみつく・・・危機的状況とは言えなんだか少し恥ずかしい。
「むむっ! リン殿!!」
「はい?」
「麻呂にそこまでしがみつくとは・・・も、もしや、求婚しているのでおじゃるか!?」
「どうしてそうなるねーん!」
「リン殿にとって、麻呂に抱きつくことはご不快な気持ちにさせるでおじゃるか?」
「そ、そんなことはないです。柔らかくて気持ちが良いし、ミルクのような優しい薫りがするし・・・って今、そんなことを言ってる暇はないですよーっ!」
極丸が『もうケチな御仁でおじゃる』と言った瞳で僕を見つめると「少し、目を瞑って息を止めるでごじゃる」と耳元で囁きかける・・・今、最後にフーって息を吹きかけましたよね、はううー、僕は敏感なのですーっ!
ドドドゴーン!
極丸の声を遮るように爆音が響く。
怖い・・・もう、ちびりそうなほど怖い、貧乏バンザイの赤貧の神シルクのネチネチヤンデレ嫉妬なみに怖い。
僕は目を瞑って災害が過ぎ去るのを待つ小動物のように必至に極丸にしがみつく。
時折、「ああん、そんなに強くはダメぇー」などの嬌声が極丸が僕の耳元に息を吹きかけながら囁くことはスルーしたい。
そして・・・
「リン殿、もう目を開けても大丈夫でおじゃる」
「えっ、こ、これは、な、何が起こったのですか!?」
目を開けた僕は極丸を抱きしめながら周辺におこった惨状に目をやった。
上空より鋭く落ちてきた矢に射抜かれた回虫を巨大化した小型のワーム(モンスター)。
矢尻に猛毒が塗られているのだろうかその個体たちはほぼ即死。
僅かに生き残った小型のワーム(モンスター)も虫の息である・・・もともと虫なので息を吐いたら虫の息・・・ああっ、なんてつまらないことを考えてしまったのだ。
と、いうか、この小型のワーム(モンスター)たちはどこから出てきたのですかー!
「リン殿、あちらを見るでおじゃる」
僕は極丸が指差す方向を見つめた。
そこには砂漠の地平線を覆い尽くすほどの人型の軍勢がこちらに向かって行進してくる。
蜃気楼でないですよね・・・。
「ふむぅ、砂かけババアの家賃徴収の手伝いにきただけでおじゃるのに・・・何か、ヤバイ出来事に巻き込まれた感が否めないでおじゃる」
極丸はそんな言葉を吐きつつ、もごもごと動く麻袋を軽々と持ち上げた。
「その麻袋ってリザートマンが持っていた麻袋ですよね」
「この世は弱肉強食でおじゃる。弱いものは奪われ、強い個体が栄華をほこる法則にのっとっていただいたでおじゃる。死人に口なしの法則ともいうでおじゃる」
「それって、物凄いご都合主義じゃないのですか!?」
『こいつ鋭いなぁ』といった雰囲気の極丸は何かごまかすように僕ににっこり微笑む。
僕と極丸とゴソゴソ揺れまくる麻袋は状況が呑み込めないまま全力で逃げ出すのであった。
拝読、ありがとうございました。
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