お空いっぱい降り注ぐ矢とサソリ座の男の娘の巻
やっとかけました。
楽しんでいただければなによりです。
「だれかぁぁぁぁーっ、たすけてぇぇぇぇぇ」
僕は右肩にサソリ、背中に荷物を背負って、砂漠の砂を撒き散らして全力で走っていた。
後ろから追ってくるはとっても物騒なトカゲの化物。
モクモクと砂煙をあげて追跡してくるトカゲの化物。
そのゴツゴツとした手に握っている無骨感満載の切っ先が尖った棒と獲物を入れていそうな大きな麻袋。
麻の袋はもごもごと動いている・・・僕らの前に犠牲者がいたのですね。
今、通り過ぎたトゲトゲのサボテンが生暖かい同情の眼差しでこっちをみてる気がする。
煌々と輝くお天道様のどぎつい陽光を一身に浴びた砂漠の砂は熱したフライパンの如く熱い。
キラキラとしたトカゲの瞳・・・あれは『逃がすなぁ、久しぶりの肉だ、美味しそうな肉がミディアムレアな焼き加減で走っているぞ』と言っているに違いない。
「サソリ君!」
「!?」
僕の声に反応する右肩に乗るサソリ。
とってもめんどくさそうに尻尾を振ると、先っぽから何やら針みたいなものを躊躇することなく追跡してくるトカゲの化物に投げ捨てた。
ドゴーーーーン!
おおっ、後方からとてつもない爆発音が周囲に轟く。
その爆音はトカゲの化物たちの終焉の薫りがプンプンしている・・・って僕の真ん前に引きちぎれたトカゲの腕が飛んできたぞ。
視覚的印象として廃棄物と化したトカゲの化物たちの肉や骨がすぐに砂塵に埋もれていく。
「どうでおじゃる・・・麻呂の力は素晴らしかろう」
「!?」
「何をそんなに驚くでおじゃるか? ははーん、さては、麻呂の一糸まとわぬ姿に興奮してチンコを棍棒なみに膨らませたことが恥ずかしいのであろう」
「サソリ君が喋った」
「先ほどから麻呂のことをサソリ君などと言いおって。アラハ様の命令がなければ貴様など毒針のサビにしているところぞ」
怠惰な気配そのままにサソリ君が人型に化けた・・・サラリとした黒髪が腰元まで伸び、何処かボーイッシュな雰囲気をまとったスレンダーな麗人がそこに立っていた。
ただ、僕を見る双眸は心まで射抜くほどの剣呑とした眼圧だ。
なんだか、休日に上司から電話があって呼び出された怒れる平社員の眼圧だ。
「本来、ドケチの砂かけ程度の家賃徴収に麻呂が出向くなどお門違いでおじゃる。せっかくポップコーン片手に激グロゾンビ映画を見るつもりでおじゃったのに。これもアラハ様のご意思・・・ひどいでおじゃる」
「そ、そうなのですか」
僕のひょうぬけした他人行儀な返事にサソリ君・・・いや、サソリちゃんは『こいつ、わかってないでおじゃる』と言った素振りで呆れたように首を振り小さく溜息を吐く。
そして、果てしなく続く砂漠を見つめて、何処か懐かしく、何処か寂寥感が滲む雰囲気を僅かにまとった。
「リン殿、麻呂は極丸でおじゃる。アラハ様が統括する第一部隊の末席を配するスコーピオン族の極丸でおじゃる」
「極丸さんですね」
「愛情がない返事でおじゃる」
僕の何気ない返事に極丸は少し不満げながらも小さく頷く。
「うむ、そのやる気がない瞳の奥に宿る、私の肉体を舐めまわすようなエロの光・・・やはりアラハ様から聞いていた童貞ロリエロチンコ魔人と二つ名は伊達ではないでおじゃる」
「土偶・・・いえ、アラハ先輩に何を吹き込まれたかはしりませんが、それはとんだ誤解なのです。僕はノーマルです。健全な青少年なのです」
「な、なんと、検便好きな性少年でおじゃるか!? 嫁入り前の男の娘相手に欲情変態プレイも甚だしいでおじゃる。責任をとって麻呂と結婚するでおじゃる」
「男の娘ってどういうことなのですかーっ!?」
「グフフ・・・それは初夜までのお楽しみでおじゃる・・・まずは空から降ってくるあいつを何とかせねばならないでおじゃる」
「空?」
太陽がカンカンと照りつける空を見上げて僕は苦笑してしまった。
「極丸さん」
「なんとなく言いたいことは分かるでおじゃる」
「では、どうしましょうか?」
「避けるしかないでごじゃるな」
極丸は深い溜息を吐くと『いきなりでおじゃるか』と言いたげな雰囲気で観念したように頭をポリポリとかく。
僕はただただ苦笑してしまった。
なので僕はもう一度空を見上げた。
そこには眩しい太陽のあかりを遮るほどの矢がこちらに飛んでくる・・・いや降ってくる、その総数百万本はあるぞ。
どうして、何が起きたのかわからないまま僕と極丸は覚悟を決めて矢の襲撃に構えた。
ううっ、シルクーっ、僕はこんな辺鄙で何もない砂塵に埋もれるようなところで死にたくないよーっ!
そんな本心を心の叫んでしまう僕でした。
いかがでしたか?
休みがないため次回更新は一週間後になる予定です。
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