第二章 砂かけババアと砂漠の巻
こんばんわ、ついに第二章です。
楽しんでいただければ嬉しいです。
そこには砂漠あった。
乾いた砂塵、尋常じゃない気温、遠くに見える蜃気楼・・・まぎれもない砂漠だ。
「あれ? 僕はたんぽぽ荘の庭に組み立てたダンボールハウスで寝ていたはずだよね?」
一人ぼっち、だれも聞いていないのに思わず語尾が疑問形になってしまう。
夜、妙に寝苦しかった。
何だか、フライパンで炒られる豆の気持ちがわかるぐらい暑かった。
なので僕は風通しを良くするためにダンボールハウスの内側から野宿工作七つ道具の一つカッターナイフをつかって窓をつくった。
妙に外が明るい・・・というか昼間ではないか?
そして抑えきれなくなった好奇心にそそのかされるように外の世界を覗いた。
「なんでやねーん!」
凶悪なぐらい照りつける日差し。
目を細めながら空を見上げた。
澄んだ空は一面青い絵の具をひっくりかえしたほど鮮やか・・・あれ、お空を飛んでるハゲワシが僕のことを捕食しようと狙ってるきがするーっ。
ガサガサ・・・
現実を受け入れられない僕の足元に赤い虫が・・・って世間で猛毒だって噂のサソリ君ではありませんかー!
僕の気持ちなど歯牙にもかけず、サソリ君はゴソゴソと近づいてくる。
いやーっ、僕は毒の耐性が低いのですーっ!
よく見ると、おや、このサソリ君、両手で恭しく手紙を持っています、しかも茶色の封筒。
この展開・・・とても嫌な予感がしてしまう。
僕はサソリから手紙を受け取る。
早く読まないと尻尾で刺しちゃうよーっと言ったドヤ顔のサソリ・・・もう脅迫の部類です。
「えっと」
僕はサソリの気迫に押されて封筒から可愛らしい便箋を二枚取り出す。
まずは一枚目。
『この世界は悪意に満ちている by アラハ』
僕は思わず自分の目を疑ってしまった・・・世界が悪意に満ちているよりもてめーが悪意に満ち満ちすぎているじゃねーか!
おおっと落ち着け・・・これは罠だ、アラハ先輩の悪戯心全開の罠なのだ。
そう思うと少しだけ冷静になれたので二枚目を見る。
『今回のミッションは102号室の店子、砂かけババアからの家賃徴収ですわ、初心者にとって奴はなかなかの強敵ですので、特別にアイテムの支給と仲間を一匹与えて差し上げましてよ。感謝してほしいですわ万年発情期チンコ魔人・・・では、夕方までに帰ってきてくださいね 土偶の神 アハラより愛をこめて・・・』
視認できる範囲は全て砂漠・・・オアシスすらないのです、それに仲間が一匹って!?
僕は灼熱の陽光と砂漠の熱に耐え切れず、ミリミリと変な音が聞こえ始めたダンボールハウスの中で一際怪しく置いてある黒カバンを発見。
これがアラハ先輩の手紙に書いてあったアイテムが入っているのだろうか?
もう藁にもすがる気持ちでチャックを開けてみると。
・水筒(500ccの水入り)
・棍棒(携帯しやすいミニサイズ)
・日傘(紫外線はお肌の大敵なのです)
・アハラ先輩のプロマイド(でっかい土偶が煌びやかな着物を着てうつっているぞーっ)
以上
「なんでやねーん!」(本日二回目)
ドス黒い想いがこもった感情をふぅと肺の中の空気とともに吐き出すとその場に座り込んでしまった。
家賃徴収どころか・・・自分の居場所すらわからない、もう、絶望的な状態だ。
そんな僕にチラチラとした視線を送る者がいた。
そう『私がついているのだから安心しな』といった視線だ。
視線の主・・・サソリを僕は茫然と見つめてしまった。
そう、これからはじまる、魔王軍との砂漠戦線の始まりになるとはこの時、露にも思っていなかった。
5月29日 日間コメディ部門16位
週間コメディ部門75位
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