戻ってきたたんぽぽ荘 嫉妬とお尻は盟友なのですかの巻
この回はリンとシルクの掛け合いの会です。
本編の間幕みたいなものなので楽しんでいただければ幸いです。
セーラー服から見える御足が残念すぎる土偶さん・・・いや、アハラ先輩に連れられてやってきた部屋。
玄関には木製のプレートに管理人室と記されていた。
「今からここがリンの住処ですわ」
「ここがかぁ」
とても感慨深い・・・ついに屋根付きの部屋に住めるのだ。
そう、僕とシルクの住処となる部屋なのだ。
もう、ダンボールハウスやバスの駐留所での夜明かしから開放、小躍りしたい、き・ぶ・んだぞーっ!
中は六畳一間、トイレやキッチンはない。
古さはあるが小奇麗な部屋だ。
奥に押入れがあるが・・・真ん中に正座をしてブツブツと呟くシルクの姿が。
あれ? いつの間にかアハラ先輩の姿がないぞー!
「・・・しやがります」
顔を僅かに伏せてシルクが何かを言った。
何か充分すぎるほどの嫌な予感がする。
シルクの指先が僕の喉元で止まる、すると妖術にでもかかったのか、声を出そうとすると喉に激痛が走る。
「臭いがしやがります・・・女の匂いです・・・しかも好意をもった女の臭い」
うおーっ、何をいっているのだー!?
突然、シルクの頭にアホ毛が立つとピコピコと何かを察知するように揺れる。
ううっ、この感覚はやばいぞ・・・これはお昼のドロドロ三角関係ドラマの定番『嫉妬』というやつでは!?
「あの部屋の店子と何をしてやがったのですかーっ!」
「とんだ誤解だ」
「とんだ誤解ですって! も、もしや、豚駄さんと五回もしたのですか、男の胃袋つかむどころか金玉までつかまれたのですか」
「豚駄さんって誰やねん」
「それをあにさまに問いただしているのです」
髪を振り乱してフーフー言いながらがぶり寄ってくる。
揺れる細髪、秀麗で魅力的な相貌、唇から漏れる息遣いすら誘惑に見える、とっても可愛い・・・やはり僕はシルクのことが好きみたいだ。
ただ、今、そんな本音をシルクに言うと尊大な態度になって『ささ、こちらで、あにさま、すぐに子供をつくりましょう』と言って肉食動物のようにヨダレをたらしてせまってくる姿が想像できる。
「このままではあにさまは南極の真ん中でお尻に国旗をそして『僕は人間こたつです』と叫んで皇帝ペンギンを追いかけて交尾を迫る変態ストーカーさんだと全国放送で噂がたってしまいます」
「たつはずないだろ!」
シルクは暗い、何とも言えない不安げな表情を浮かべると僕の胸に手をあてた。
すると僅かに目を細めて不思議な何かを唱える。
「あれっ!? 立てない」
突然の目眩に襲われバランスを崩す。
まるでシルクの言葉に反応したみたいに僕はその場にしゃがみこんだ。
「フフフ、あにさま・・・いえ、リン君。いつも、うちだけを見てくれるって言ってやがりましたよね」
シルクは毅然とした態度で僕の上着を掴むとクンクンに匂いを嗅ぐ。
これはヤバイぞ、シルクの瞳にメラメラとドス黒い何かが!? もしかして、真っ黒く●すけ製造工場なのですかーっ。
「あの、幽閉されていた祠の前で、この高貴な赤貧の神であるうちのことを絶対に離さないといってくれやがりましたよね・・・うちの脳内記憶メモリーにはっきりと記憶されているのです」
「はっきりと覚えているよ」
そうだよね、シルク・・・僕とシルクが初めて出逢った場所。
まだ、10歳程度だった僕が変態主人に弄ばれて、素っ裸で裏山に放り出された冬の日。
キミは僕の蒙古斑を眺めながら『吸い付いてやりたいですーっ』とペロペロ舐めていたよね。
そして『ひひひ、可愛い顔してやがります、このお尻は掘られたあとですか・・・中古で我慢してやります』と言いながらペロペロ舐めていたよね・・・何だか腹が立ってきたぞ。
「という訳で、今すぐ、直ちに、刹那にうちを娶って寝取るのですーっ!」
「結局そこに行きつくのかよーっ!」
「ここなら、二人っきり・・・危ないアバンチュールなのです」
「誰かたすけてーっ!」
「うちが死ぬまで助けてあげてやるのです。貧乏でも慎ましく生きていくのです・・・グフフ」
その夜、僕はたんぽぽ荘のお庭でダンボールハウスを組み立てて眠ることになった。
せっかく、屋根付きのお部屋を手に入れたのに・・・。
いかがでしたか?
少しづつですがお気に入りも増えてきましてやる気満々です。
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