並行異世界編……偶然の激突!? ガウガウ師匠と赤貧の神シルク
こんばんわ。
楽しんでいただけましたら幸せます。
あれから三ヶ月が過ぎた。
ここは大通り……そう、とあるダンジョンにある大きな街の大通り。
そんな大通りの隅っこに小さなライオンのぬいぐるみと天使が舞い降りたような美しさが際立つ少女(?)が煤だらけの顔にボロボロに布と藁を纏って座っていた。
二人(一人と一匹)の前には錆ついた缶詰の缶が一つ置いてある。
「右や左の旦那様ガウ」
「右や左の旦那様」
小さなライオンぬいぐるみと眉目秀麗な少女(?)言葉をくぎり一呼吸置くと……
「貧しくて生きることも食べることも苦しみ抜いている哀れなガウガウ達に小銭などのお恵みをガウ……」
「私たちが生きる為に皆さまの小銭をお恵みを頂けませんでしょうか……」
一目見たらその場で止まり見つめてしまうほどの美少女(?)の声に世の冒険者や商人、街民をはじめ一部の百合好きを含めた男性がこぞって小銭を握りしめて小さなライオンのぬいぐるみととびっきりの美少女(?)の前に列を作る。
「ありがとうございます! ありがとうございます! これでガウガウお父様と一緒にご飯が食べられます……皆さまありがとうございます」
「ありがとうございますガウ! 皆さま、命の恩人ガウ……ガウガウ一匹の時は皆さまこっちを見向きもしなかった薄情者たちなのに……娘の効果は絶大ガウゥゥゥ!」
缶詰にはあっという間に小銭からお札まで山積みになっていく。
そして、小さなライオンのぬいぐるみと美少女(?)が店じまいをするようにそそくさとお金入った缶詰を回収しようとした時……
「おんどりゃ、誰の許しを貰ってここで商売してるねん、ぐあぁぁぁーっ!」
「がるるぅぅぅーっ、下っぱ縄張り取り締まりの小物はうるさいガウ! ガウガウの威圧だけで失神するぐらいなら来るなガウ! 授業料として懐の財布はしっかりと頂くガウ、、いっぱい小銭貰ったガウ、あったかーい朝ごはんを食べるガウ」
眼光を光らせた小さなライオンのぬいぐるみの威圧に二メートルを超えた乱暴者を絵にかいたような冒険者は白目をむいてドスンとその場に倒れてしまう。
衆人環視! 僕たちのアルバイト(生きていくための仕事)に出資(施し寄付)をしてくださった皆様が茫然とする中、小銭やお札が入った缶を回収した……こんにちは僕です。
廃棄物ゴミ山で拾ったボロボロの布服に藁で編んだスカート。
はっきり言っておきますが僕は女装趣味があるわけではありません……しかたないのです! これもガウガウ師匠との修行を兼ねたアルバイト、お金を稼がないと生きていけないのですものーっ!
「ガウガウお父様、もう潮時です。地域の取り締まりのやつらが沢山来る前に引きあげましょう」
「ガウガウも賛成がう。とっととお家に帰ってお金を数えるガウ! だけど今日はりんが先に帰ってお風呂を沸かしておいてほしいガウ」
「お風呂と言いますと……ああっ、確か引き出しに入っていたお猪口に60度のお湯をそそぐのでしたね」
「そうガウ! さっさと帰って師匠のためにお風呂沸かすガウ」
いつもは我先に「ガウガウは疲れたガウーっ! めんどうくさいガウ、さっさと帰ってゴロゴロしたいガウ」と言っている小さいライオンのぬいぐるみガウガウがボロボロのほっかぶりを外して僕に「早く帰れガウ!」と促す。
小さくつぶらな瞳は何時にもなく真剣だった、僕はガウガウ師匠の想いをくみ取るように一足先にオンボロすぎるアパートに向かった。
「ガウ……そこの御柱たち隠れてないで出てくるガウ! 襲撃するにしてもそんな隠れ方じゃひよこ村のピーチクちゃんは騙せてもガウガウは騙せないガウ!」
先ほどの雰囲気とは対象的なオーラを纏ったガウガウ、もうすっとボケた怠け者オーラは微塵も感じない。
「おほほほほっ、あらあら見つかってしまいましたわ」
「ミヒロはすっとこどっこいなのですーっ! だから食パンの耳がご馳走って言いきる福の神の落ちこぼれなのです! こう言う時はスーパーのサービスタイムと同じなのです! 早い者勝ちでさっさと兄さまをぶんどって、今までの手間賃としてピーやピーの刑をしてやったほうが良かったのです!」
「ガウ? お下品な奴ガウ。 りんの知り合いガウ?」
「チビのぬいぐるみ! 特別に自己紹介してやるから喜びすぎて破裂しろなのです! 耳をかっぽじって鼓膜を破壊しながら聞くのですーっ! うちは兄さまの妹にして婚約者にしてしっかりまったりと赤い糸で雁字搦めのプリティ赤貧の神・シルクなのです!」
「ガウガウは鼓膜なんてないガウ、貧乏暇なしの根源ガウ!? 脳みそまで困ったちゃんな奴がう……ガウガウの愛弟子りんのストーカーには少しお灸を据えいやるガウ」
いかがでしたか?
クスッと笑ったて頂けましたら嬉しいです。
今後ともかきくけ虎龍劇場を宜しくお願いします。




