Tears
小さな花をたくさん集めた。
君が好きだといった花。
店の先には球根があって、写真でどんな花が咲くのかがあった。
人にこの花を贈りたいと言ったら、店員は驚いた顔をした。
君が好きだといった花は、贈り物としては合わないとはじめて知った。
だから、もう一つ。
君が愛らしいと言った花。
いつも主役を際立たせる存在だけど、今日ばかりはこの花が主役。
やっぱり、店員にお願いしたら不思議そうな顔をして他に入れますかと聞かれてしまった。
君が好きになる花はどうやら少しずれてるのかな。
そう思ったけど、それでもその花を店先で見ていた君の笑った顔が忘れられない。
君が愛らしいといった花。
その小さな花束を持って会いにいった。
驚く顔を見たかったけど、それよりも先に花に気がつき顔を綻ばせた。
ほんの少し思惑が外れたけれど、照れたのか頬を紅くしたその顔に免じておこう。
他愛も無い話の中に少し自分の愚痴が混じる。
けれど、君は小さな花へ手を伸ばして柔らかなままで羨ましいと呟いた。
ごめん。そう言葉にしたら、君はまた柔らかく目を細め細い手のひらで頬を挟んできた。
今度は、わたしの愚痴も聞いてくれるよね。
額を押し付けて、悪戯っぽく呟く君にただ頷く。
いくらでも、聞くよ。いくらでも君の声を聞きたいから。
他愛も無い話はずっと続いた。続いていた。
君が好きだといった花が咲いた。
小さな花。
君が好きだといった花は贈り物には適さないらしい。
だから、自分で育ててみた。
驚かせて見たいと思った一心からだったのかもしれない。
花の本なんて生まれて初めて買った。
花について調べるのも生まれて初めて。
初めて尽くしで、上手く育つのか不安だった。
小さな綺麗な花が咲いたとき、すごく嬉しかった。
たった一輪の花。
綺麗な花が霞まないように、君をもう一つ驚かせるために片付けた部屋。
空の青い色が今日はやけに目に染みて、自然と涙が溢れそうになった。
たった一輪の花。
小さくて白い花。
贈り物には適さないと言われたけれど。
君が好きだといった花。
今日は、それをもってあいにいくよ。




