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暖炉のように

 さむい冬。

 雪がはらはらと舞う。

 わたしの側に、あなたが居る。

 絡め合わせた指先がじんっと温かさを伝えてくれる。


 さむいのは苦手。

 陽だまりのなかでウトウトするのは好き。

 柔らかな陽だまりの温かさに似ている。

 あなたの指先。

 重ねてしあわせになるキモチ。

 あなたの側に、ずっといたい。


 いてもいい子ですか?


 そっと絡ませ続けて、笑顔を向けていたい。

 悲しい顔をして、あなたを見ることは出来ない。

 幸せはそっと、ヒトからヒトへ伝染していく。


 そばにいてください。


 あなたの温もりを感じていたい。

 忘れて……

 あなたの中にある悲しい想い。

 わたしがあなたの冷たい心、溶かす暖炉になりたい。


 火のはぜる音だけを聞いて。

 わたしの手の平を握り返して。

 薪のくずれる音はあなたの氷が解ける音。

 なでる手の平の小さいけれど。

 わたしはあなたの側にいる。

 氷とかす、柔らかな暖炉のように。


 外に出れば、陽だまりのように。

 家にいれば、暖炉のように。

 手の平は冷たくても、あなたの心を暖め続けたい。


 あなたがわたしの心を暖め続けてくれるから。

 わたしがあなたの心を暖め続ける。

 冬の間だけなんかじゃない。

 春も 夏も 秋も


 季節の風変わっても

 あなたと一緒に

 白髪だらけのお年寄りになっても。


 あなたと一緒に

 幸せの笑顔をずっと、湛えていたい。

 泣いても、辛くても。

 あなたが側にいるなら乗り越えられる。


 わたしを幸せにしてくれるあなた。

 あなたを幸せにしたいわたし。


 さむい冬は苦手。

 身体が芯まで冷えて、どこの先もじんじんと痛いほど

 冷えてしまうから。

 それでも、あなたと絡めた指先は

 とっても温かい。


 冷えた指先同士なのに、陽だまりに解けるように

 こころが温かくなる。

 笑い話をしよう。

 悲しいニュースなんて、今は耳を塞いで。


 ゆりかごを前に歌うように、温かく。

 あなたの優しい声で

 凍りつく暇を与えずに、笑いあおう。

 わたしの声は温かさを与えられてる?

 ちょっぴり不安もあるけれど……


 あなたのほんの少し下がった目じりが、わたしを暖める。

 暖炉のぬくもりのように

 陽だまりのぬくもりのように

 心を暖めてくれる。

 わたしの笑顔であなたは温まっていてくれますか?


 絡めた指先にほんの少し、ちからが加わった。

 さむさで少し震えても、抱きしめるように握ってくれる。


 粉雪は手の平で溶けた。

 いつもなら、少し留まるほどわたしの手は冷たいのに。

 重ねているせいかな。

 すぐに溶けてしまった。


 すこしだけ残念、と言うわたしに

 あなたはまた笑ってくれる。

 子どもみたいと、笑ってるくせに一番目を輝かせてるのは

 あなた自身。


 絡めた指先がするりと抜けた。

 寂しそうに笑顔を曇らせたのを直ぐに見つけて

 安心させるように笑ってくれる。

 反対の手を取って、今度は自分の上着のポケットにいれてくれた。


 小さく当たった感触。

 冷えた指先の感覚は鈍いというけれど、むき出しになっていたそれ。

 ポケットの中で手を離して、小さなそれを手の平に押し付ける。

 笑ってるのに、わたしの瞳は滲んだ景色しか映せない。


 泣き虫と笑っていうあなた。

 でも、泣かせたのもあなた。

 器用に指にはめてくれたそれ。


 笑って、粉雪舞う景色に手の平を差し出す。

 すこしだけ大きくて、小さな宝石が小指に当たった。

 ほんのり温かかったのに、すぐに冷えてしまった。


 でも、心の奥はずっと春の陽だまりの中。

 もう一度、絡めた指先にじんわりと温かさが戻ってくる。

 さっきより、少し熱くて汗ばんでた手の平。

 暖炉の前に長くいたときみたい。


 いつか、本当に暖かな部屋の中で。

 今度はあなたとわたしと


 新しい家族と一緒に

 しあわせなキモチと一緒に

 指先を絡ませて、しあわせをふりまこう。


 さむい冬は苦手。

 でも、あなたの側にいつもよりくっつける幸せ。


 あつい夏は苦手。

 だって、側にいたくても……

 手のひらを繋いでくれても。

 あついって言って、逃げちゃうから。


 さむい冬、暖かな日。

 陽だまりのなかを一緒にウトウトするように。

 暖炉の前で一緒に



 あなたと笑いあおう。

 あなたがわたしの心を暖めるから。

 わたしもあなたの心を暖める。


 しあわせは、暖炉のように

 穏やかにあたたかいね。

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