差し出すために生まれた少女02 王子の章01
なんと、あれからまた三年。。。
気分がのったので、続きを。。。
この王国の王子は、わがままな事で有名だった。
高慢で、他者を想いやる事ができない。他に兄弟がいないため、国王夫妻がとても甘やかしていた。そうすると、自然と城の者たちもそれに追従する形になる。
ただ一人、魔女、ツェツィーリアを除いて。
「儂は何度も忠告したからの」
王子が産まれてから十五年間。ひたすら国王夫妻に苦言だけを言っていた魔女が、ついに城を去るという。
それを聞かされた時。国王は正直ほっとした。
魔女の小言を煩わしく思っていたし、歴代の王たちがこの者を尊重しろと記録に残してはいるが、この幼女に何ができる。せいぜい、小さな体でいっぱしの文句を言うくらいだ。
「儂は、もう人間に愛想が尽きた」
謁見の間を退出する直前に、小さく幼女が呟いた言葉。
それがやけに国王の耳に響いた気がした。
そして、事件は起こる。
ツェツィーリアが消えてからちょうど一か月。明日が王子の十六歳の誕生日だという日。
勉強を嫌がった王子が城を抜け出すのはいつもの事。城の誰もが、全く仕方がないとばかりに苦く笑い、王子を探すのもいつもの事。王子が戻ってくるまで見つからないのもいつもの事。
だが、この日に限って、王子は夕食の時間になっても戻ってこなかった。
人々が不安になり、騎士たちに命じて本格的な創作に乗り出そうとした時、その知らせは届いた。
「申し上げます! 森に入った猟師が、大量の血を流し倒れる男と、馬を発見したとのことです! すぐに救助しましたところ――――」
国王は目の前がクラリと歪むのを感じた。王妃は倒れてしまい、寝室へと運ばる。
『忠告はしたからの』
『人間には愛想が尽きた』
ツェツィーリアの言葉がよみがえる。
「……メリッサ・キャンベルを呼べ」
かすれた声で、一人の少女の名を告げる。途端に数名の騎士がはじけるように駆け出した。
救出しましたところ。
馬は即死だったようです。ルーイ様の愛馬でした。倒れていたのはルーイ様で間違いございません。大量出血と、どうやら頭をひどく打っているご様子。かろうじて息があるとのこと。
医師の見立てでは、助かる可能性は限りなく低いと……。