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ガラスの様な瞳
「どうして?」
少女の様な無垢な瞳を持ちながら、豊満な身体つきが自然と男の視線を集める。
そのアンバランスさ。
それこそがこの女性の美しさなのだと、あの画家が言っていた事を思い出す。
どうして。
幼児のようにつたないその疑問。それに答えるすべを僕は持たない。
無垢な瞳。
それを生み出すにはどうしたらよいか。
死の淵に立つあの男が壊れたように繰り返していた疑問。
画家は、自分でその答えを見つけたのだ。
「どうして?」
目の前の女性はひたすらにそれだけを繰り返す。
閉鎖された空間。
画家以外の、全ての生命から隔離され続けた女性。
「……初めまして。僕はパーシー。先生の弟子だった者です」
「どうして?」
不思議そうな顔でただひたすら同じ言葉を繰り返す。
壊れた人形のように。
『このアンバランスさがこの絵をより魅力的に見せるのだ』
画家の声を思い出す。
吸い込まれそうなほど澄んだ瞳。
呑みこまれてしまいそう。
きれいすぎる水では魚は生きてはいけないという。そんな危うさを含んだ瞳。
僕は囚われてしまうのかもしれない。