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私の好きなモノ

これは、連載中の「鎖、檻、ここは牢」の一部分になる予定です。

が、どのあたりで入れるか定まっていません。



 夢の中、私の知らない誰かが聞いた。

 好きなものはなあに、と。


 私の好きなもの。

 分厚い雲の隙間からこぼれる光。

 雨上がりの町並み。

 朝露に光る野草。

 星の光すら届かない漆黒の夜。

 季節を運ぶ風の音。

 お兄様の足音。

 弟の笑い声。

 お母様の私を呼ぶ声。


 私の髪をなでる、あの人の手。

 でも、あの人の顔を思い出せない。 

 大好きなあの人の手は、途中から変わってしまうの。

 私の髪を掴んで、引っ張る。

 お前が憎いと叫ぶ手に。



『……お父様の事は?』


 お父様の事は……。




*****




 眠った彼女の夢の中で、心を探る。

 そうして、彼女の中に眠る、誰にも触れさせない思いを知る。


「……お父様の事、怖いのですって」


 だって、私の大切な人を奪ってしまった。二度と会えない場所、声の届かない、たどり着く事の出来ない場所に。心の奥の小さな嘆き。

 最愛の人を奪われ、替わるように表れた人は憎しみの籠った眼を向ける。


「ブランカ様は?」

「なあに?」

「お父上の事をどう思っておられるのです?」


 ツェツィーリアの言葉に、改めてもう会う事のできない父を想う。

 彼女と私は、どことなく似ている気がする。


「お父様はひどい人。私の家族を苦しめて、私の子孫たちも苦しんでるわ」

「……お父上のお気持ちもどうかご理解いただきたく思います。親ならば、子を想うあまりに―――」

「知ってるわ」


 私は知ってる。

 人と歩む事を決めて、本来の寿命を捨てて、父の元を去った時。

 父は人知れずに泣いていた。

 子が、父を置いて先に逝く未来を選択した事を。

 もう二度と、顔を見る事が叶わなくなる事を。

 

「……お父様の事は、とても好きよ」


 できるなら、もう一度抱きしめてもらいたかったわ。




*****




 段々とあの人が私から離れていくの。

 思い出は色あせてしまうのですって。

 ゆっくり、ぼんやりと消えていくの。

 そうしたら、私には何が残るの?

 私を憎む手が日を追うごとに大きくなるの。

 好きなものを遠ざけていくの。

 怖い。




 本当は。

 本当は、受け入れてもらいたい。

 私を憎む手の人に。

 だって、私とその人は。




 ……。

 ダメだわ。まだ、思い出せない。



この連載、本当にメモに近いくらいぶつ切りな仕上がりなので、非公開設定にするつもりが少しの間公開しっぱなしだったのですが。

その間にお一人お気に入りに登録して下さった方がいらっしゃって、ものすごくびっくり&こんなモノにお気に入りして下さるなんて!!と感激しました。どこのどなたか存じませんが、ありがとうございます!!


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