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一番愛してる、
「……俺じゃぁ、ダメなのか?」
唯一の人。ただ一人、全てを捨ててでも手に入れたいと望んだ人。
望まれた女は、静かに一歩、身を引いた。
「あんたの事は、世界で一番愛してる」
そう言った顔は笑っていたけれど、泣いていた。
「でも、世界で一番大切なのは、あんたじゃないの」
「……」
そう言って、立ち去ろうとする女の腕をつかみ、引き寄せる。
出会ってから、大した年月はたっていないはずなのに、手が覚えているよりも幾分か痩せた。これは、彼女の苦悩の表れなのだろう。
「……俺は世界の誰よりも、お前の事が大切で、愛している」
「ありがとう……私も愛してる」
だけど、さようなら。どうか元気で。