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ここに来た理由

コロニーとは言っても、つまらないものだ

壁が開く以外は地上の建造物にいるのと変わらないし

無重力の空間が広がっているわけでもないから、当然2本の足で立って歩かなければならない

広大な宇宙や青く輝く地球を見れるような窓もなかった

唯一変わった事といえば、僕の横を嬉しそうに飛び跳ねながらついてくる

変てこなロボがいる位のものだ


そんな冷めた事を考えながら僕は、拓に送られたマップに従い歩いていた


ヒロ『・・・ここか』


そこにはこの、コロニーのサイズをまるで無視した、小さな扉があった

公民館にあるホールの扉とそうは変わらないであろう扉が開くと

運動会の時に集まる人数と変わらない位の人たちで溢れかえっていた

 

これは拓を見つけるのは一苦労だなと、溜息が漏れそうになったが

その心配はどうやら無用の様だ


扉から見ると右手に一段高くなったステージの様なものがあり

僕を抜かした3人が、朝礼の時の先生の様に座らされていた

あぁ、僕もあのステージに祀り上げられるのかと思うと

拓達を探さなければと漏れそうだった溜息が、別の形で大きく漏れた

 

一瞬この場から逃げ出してしまおうかと算段を練ったが

すぐにその必要はなくなった


ジューダス『遅いよ~ヒロ!さぁこっちこっち』


僕を見つけたジューダスが嬉しそうに壇上に僕を誘った

僕はバツが悪そうに席に座ると、拓と目を合わせ苦笑いをした


ジューダス『皆さん、お待たせしました』

ジューダスがマイクで会場に呼びかけると、周囲はより一層の期待のまなざしでステージを見上げた


ジューダス『我らのHOPE!ヒロの帰還です!!』


会場は一気に湧き上がった


僕はその状況に、苛立ちにも似た感情を覚えた

いや、苛立ちそのものだったのかもしれない


ヒロ『ちょ、ちょっと待ってくれよ!!』

ヒロ『訳も分からないまま連れてこられて、こんなステージに上げられて、帰還??僕はこんな所初めてきたのに!!』

 

会場が静まり返った

しばらくの沈黙の後、周囲にヒソヒソと話す声が聞こえだした頃、ジューダスが静かに語りだした

 

ジューダス『ヒロ・・・君が理解できないはしょうがない、無理にステージに上げてしまって申し訳ない、だけどね帰還というのは本当なんだ、君はこのコロニーで生まれた子なんだ』


ジューダスの語りかけに、僕は我に帰り、おとなしく拓の横に戻ることにした


ジューダス『いま、この宇宙が戦時にある事は、なんとなくわかるね?

そして今、戦局は極めて不安定なものなんだ。

このコロニーですらどうなってしまうか、一触即発

そこで我々は、戦局の鍵になるであろう希望の種をいち早く戦力にする為、赤ん坊を一人地上に送った

それが、君なんだ』


ヒロ『・・・わからないよ、なんで地上に送ることが戦力になるんだ?』


ジューダス『それは、とても難しい理論でね

このコロニーは、いや、コロニーを含む艦隊は、常に光を超える速度で地球を旋回している

そうなると、光の速度で飛び続けている我々と、地上に送られた君とでは時間の進み方が違うんだ

特殊相対性理論というのだけれど、簡単な話、僕らが赤ん坊の君と最後に別れたのは、半年前の出来事なんだよ』


ジューダスの話す事は、ちんぷんかんぷんだった

理解なんて到底できないけど、実際宇宙に飛び出した僕は、既に思考が何でも受け入れられる柔軟なものに変わっていた

それは、拓達3人も同じ様だった


ヒロ『で、でも、そうだったとして・・なんで僕が・・・希望なの?・・・』


ジューダスは眉を少し上げ話を続けた


ジューダス『このコロニーは3種類の人間達で区分されているんだ

1つがNormal、この会場にいる多くがそれに分類される

2つめがForesight、戦闘服を着た人間たちがそれだね

3つめがAdaptation、ここにはいないが優秀な人間だ

君はこの中のForesightに分類される人間で、その力が生まれた時から異常に強いんだ』


ヒロ『・・・フォーサイト??』


ジューダス『そうForesightとは近未来予知、極近い将来、自分に何が起こるかを予見することができるんだ

もし悪い未来なら予見し変えることができるし、良い未来でもより良いものに変えることだってできる

その力を生まれながらに艦隊で一番強く持っていた

・・・それが君なんだ』


予見、この言葉を聞き、僕も3人も妙に納得がいった、そして全ての辻つまが合った

あの時トラックを宇宙に誘う為の操作を難なくこなせたのは

無意識に数ある未来の中から最良の物を選び行動していたのだと

そして幼い頃からの些細な出来事も全てこじつける事が出来た

思えば、車を運転したいだけなら、初めからバッテリーだけ抜き去った親父の車を持ち出せばいい事、それをわざわざお年玉を使い切り、ボロのトラックを直してまで運転したのは

全てここに来るためだったのかとも思い始めた


ジューダスはその後も20分ほど話し続けたが、フォーサイトの話を聞いてから上の空になってしまい、まったく覚えていない

3つめの人種アダプテーションについても何やら言っていたが聞き漏らしてしまった

そんな事より僕はこれからどんな運命が待ち受けているのかと思うと、とてつもなく怖くなり

家に帰りたいと思うようになっていた



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