表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

そのこころは…何2(記念臭)

作者: 北 郷
掲載日:2011/03/20

「そのこころは…何」と言う短編の”その後”です。

 彼女と付き合い始めた日はいつから?と聞かれると定かではないが、付き合いあ始めて一年位ではないだろうか…。


 僕は週末になると、浅沼香の思い付きの場所に二人で出掛ける。

 何をするにも僕任せの彼女だが、行先だけは彼女が決めるのだ。目を瞑って地図に指をさすことも珍しくはない。

 しかし、今日の行先は何の迷いもなく当然の様に彼女の口から飛び出した。


 それは、デパートの屋上である。


 ここは時々特設ステージが設けられる。

 あの熊の着ぐるみを着て、彼女と販促の仕事をした時もそうであった。


 今では、汗を沢山吸った熊の着ぐるみの臭いの臭かった事が懐かしい…。



 屋上の防御策に寄り掛かり、風上に居る僕に向かって彼女は目を閉じて微笑んだ。

 最近は僕が鈍いと言って機嫌を壊すことも多いのだが、今日は機嫌がすこぶる良い。


「へ~、今日は随分と、嬉しそうなんだ」

 皮肉交じりに言ってみた。


 しかし、それにも、

「まあね、今日は風の匂いが最高なの」

 そう応る。


「風の香り?」

「そう。私ね、風の匂いが判るの」


「初耳だなぁ」

「公ちゃんに言ったこと無かったぁ?」

 最近二人の時は、公ちゃんになってしまった。


「私の想い出には”もの”はいらないの。風の匂いがあれば充分なんだ。

 風がその時の事を一番想い出させてくれるの…。

 ホントよ。私の色んな想い出がこの風の中に記憶されているんだ。毎日風の匂いが記憶が蘇らせてくれるの。だから明日が楽しみ…」


 風の臭いと言っても、近所に焼肉屋でもあれば別だが、周囲に工場すらもないデパートの屋上では、特に何も臭っては来ない。


「どんな臭いなの?」


「例えばね、昨日は小学校4年生の時の遠足の匂いがしたの」


 遠足の臭いって、何だろう?

 全く理解が出来ないので、今日の臭いを聞いてみた。


「じゃあ、今日はどんな臭い?」

「今日はね、とってもいい匂い、へへへ」


 何か気味が悪い。


「ど、どんな臭い?」


 すると、彼女は「記念臭」と応えた。


 記念臭?何か臭そうな言葉だ。

 だが、別にそんな臭いは漂っては来ていない。

 鼻が詰まっている訳でもない。


「記念臭?」

 

「うん、でもちょっと一味足りないかな」


「一味って?」


「ん~ちょっと汗っぽい酸味がね」


「え~!そんな趣味があったんだ…」


「うん、…」

 平然と彼女は頷く。そして、


「…そんな趣味があるのよ。1年前の今日からね。丁度、今日と同じように雲が流れて風に心が乗って、そして、届いたの」

 彼女が微笑んだ。


 今日が一周年記念ってことなのか?



 

 想い出を懐かしめるのは、写真や音楽だけでなく、彼女に取っては空気の”香り”もその一つでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、そういう意味だったのですね(^^) 北 郷さんからメッセの返事を頂いたあとに、もう一度読んでみたら分かりました。 見えるモノだけが、思い出の品とは限りませんよね。 奥が深いです…
[一言] おお、続編だ……お思ったけど、いまいちストーリーが把握できなかった(汗) こういうのは直感とフィーリングで読むのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ