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中は、思っていたよりも、ずっと小さかった。
長い椅子が、何列か並んでいる。
でも、広い教会みたいに、ずらっと、ではない。
少人数で使うための場所、という感じだった。
床は石で、ところどころ、すり減っている。
誰かが、何度も、同じ場所を歩いた跡みたいに。
壁には、色の薄くなった絵がかかっていた。
何の場面なのかは、よく分からない。
でも、祈っている人たちがいる、ということだけは、伝わってくる。
ろうそくの匂いと、さっき嗅いだ香の匂いが、まだ少し、残っていた。
家の匂いじゃないのに、なぜか、落ち着く。
窓は高くて、小さい。
外の様子は見えないのに、昼だということだけは、分かった。
光が、細く、斜めに差し込んでいるから。
椅子に座るように言われて、腰を下ろした。
木は、少し、冷たかった。
ここは、知らない場所なのに。
さっきの部屋よりは、ずっと、安心できる気がした。
「ここならとりあえずは……」
「人は来ないだろう……」
ひそひそと、何人かが話しているのが聞こえる。
私がいるのは、まずい……らしい。
私は縋るように、アルヴェインさんを見上げた。
「あの……」
すぐに、アルヴェインさんが、私の方を見た。
さっきまで周りを警戒していた目が、私を見ると、少しだけ和らぐ。
「どうした?」
声は低くて、静かだった。
私にだけ、向けられているみたいな声だった。
「まだ名前を聞いていなかったね」
私は、一瞬だけ、言葉に詰まった。
自分の名前を言うだけなのに、急に、現実のことみたいに感じて。
「……朝倉紗和です」
彼は、少し考えるように目を細めた。
「紗和、でいいか」
頷くと、彼はそれ以上深くは聞かなかった。
「ここは、どこですか」
「ここは、小礼拝堂。今は新しい礼拝堂が出来たから、ほとんど使われていないんだ」
そういう事じゃなくて。
喉まで出かかった言葉を、無理やり飲み込んでから、聞いた。
「ここに、私は、どうやって来たんですか。……帰れるんですか?」
思わず、涙声になった。
喋っているうちに、不安が、どんどん重なっていく。
匂いも、声も、空気も。
全部、知らない。
泣かないでいようと思っていたのに、気づいたら、声が震えていた。
隅で話していた男の人たちが、私の前に並んで、バッと頭を下げた。
「……ふざけてた、っていうか……」
「本当に、試してみただけで……」
「こんなふうになるなんて、思ってなかったんだ」
言葉が、途中で途切れる。
アルヴェインさんも、私の横で頭を下げた。
「……俺が、止めるべきだった」
声は、低いけれど、強くはなかった。
少しくぐもった声で、続ける。
「場所を使わせたのも、俺だ」
「だから……責任は、俺にもある」
……つまりは、事故だったということ?
胸の奥が、ひどく冷えた。
でも、誰かを責める言葉は、出てこなかった。
「……そう……」
それだけ言って、私は、目を伏せた。
それ以上、何も言えなかった。
言ったら、きっと、泣いてしまう気がした。




