てるてる坊主
休み時間、机に頬杖をついて窓の外を見る美雨。後毛なくひとつにまとめられた黒い髪は艶々としている。
「あーあ、なんで雨ってだけで憂鬱なんだろ」
「月曜だからってこともあるでしょ?」
「確かにそうだけどさー。髪くくるのに時間かかるし、傘さしても濡れるし、ほんと嫌」
「名前に雨って入ってるのに?」
「ホントそれ。なーにが美しい雨だよ」
「口悪っ」
「しょーがないじゃん」
顔を見合わせて、吹き出すように笑う。名前も性格も非対称なのに、なぜか息が合う。カラオケに行けば、毎回曲が2、3曲被るし。
「このまま降り続けるのかなー。サッカーしたかったのに」
「じゃあ、おまじない、しない?」
「雨が止みますよーに、って?」
「そう。小学生の頃とかって、てるてる坊主作らなかった?」
「あー、作った作った。え、美晴も作ってたの?」
「うん。しかも、量産してた」
「えー、マジ? 名前に晴って入ってるのに、晴れなかったの?」
「名前は、弄らないで……」
そう言うと、美雨はすぐさま両手を合わせて頭を下げた。髪が揺れる。
「ごめんーって。それで、効果あったの?」
「それが全然。運動会前に作ったのにね、雨止まなくて中止になったんだ。しかも2年連続で」
「まじかー。それは嫌だねー」
「そうなの、連続で予備日まで潰したからね、願い叶えないなら要らないって、私、みんなの首、切ったんだ」
「え……」
「そしたら、ちゃんと雨が止んだから、翌年からは首を切って、それを吊るすようにしたんだ。えへへ」