5話
焚き火がゆらゆらと揺れる。
その火の周りに人が集まり、笑っていた。
どこか懐かしい匂いがする。草と土と、煙と、、、それから、焼かれる美味しそうなお肉の匂い。
「はい、猪の串焼き。脂がのってて美味しいよ」
「うぅ、、、ちょっと怖かったけど、こんなに美味しそうなら、許せる、、、!」
縄文くんが渡してくれた串を、恐る恐るかじる。
―――じゅわ、と口いっぱいに肉汁が広がった。
「うんまっ!?」
「でしょ?やっぱり猪は美味しいよね。あ、どんぐりもアク抜きしてすり潰して、、、」
縄文くんは得意げに胸を張る。弥生くんも楽しそうにどんぐりを石で粉状にすり潰している。
待って、どんぐりを食べなきゃいけないの、、、?
(いや、変なこと考えない!今は、猪肉を食べよう。食べることに集中する!)
談笑の輪の中に、明治さんが戻ってくる。
「さ、夜も更けました。今日はこのままここで休んで、明日の朝には戻りましょう」
「ありがとうございます。明治さん」
焚き火の横に藁を敷いた即席の寝床に入り、夜空を見上げた。
星が、近い。
手を伸ばせば届きそうなほど。
「、、、綺麗」
私の隣で、弥生くんがぽつりと呟いた。
「昔はね、こうして空を見て、神様の声ば探しよったんよ。星の光は、あんた達に届く願いやった」 「願い、、、」
「もし、ひとつだけ願いが叶うなら、美空ちゃんは何を願うと?」
不意に聞かれた問いに、少しだけ考えてから、私は答える。
「んー、、、なんだろう。今みたいに、笑っていたい、かな」
「、、、そっか」
ふわっと微笑む弥生くんの顔が、少しだけ寂しそうだった。
翌朝。
また縄文くんと手を繋ぎ、視界がぐにゃり。
次に目を開けた時には、元の談話室に戻っていた
その夜。
談話室の片隅で、明治、縄文、弥生の三人がひそやかに会話していた。
「、、、やはり、“彼女”は気付き始めていますね」
「そろそろ話す、、、?」
明治は答えず、ただ静かに本棚の一冊を手に取った。
そして表紙を撫でながら、こう呟いた。
「、、、僕はもう少し、何も知らないままでいさせてあげたいです」
「おりゃあも同じばい!」