1話
思い出せ、思い出せ私!
確か私は歴史と文系が好きな、取り立て特徴のない普通の女子高生だったはず、、、
「さぁ、みなさん待っていますよ」
黒いコートに身を包んだメガネの男性が私の方を振り向く。
じゃあ、何で如何にも豪華そうな建物に連れて来られているんだっけ、、、!?
広々としたアプローチの向こうに、重厚な建物がそびえ立っていた。
宮殿なのか城なのか、とにかくその規模は広大だ。四階建ての砂糖菓子の様な純白の外壁にはアーチ型の半円の窓がずらりとはめ込まれている。
「外からマシンガンをぶっぱなしても内部には傷一つない程の堅牢な造りなんですよ。まぁ、他の人には見えませんが」
今日も良い天気ですねと話すような軽さで、物騒なことをさらりと言うメガネさん。
連れて来られた部屋は豪華だった。それはもう、豪華としか言いようがない程に。
吹き抜けのエントランスの天井には、太陽の光を反射しているシャンデリアがぶら下がっている。階段の手すりはとてもよく磨かれているのか木がすべすべだし、廊下にも高価そうな骨董品の数々。
「あの、、、メガネさん」
「どうしましたか?」
「もしかして私、知らず知らずのうちに国家秘密に触れちゃって、今から殺されてしまうんですか、、、?」
「何でそんな発想になるんですか!?」
メガネさんがツッコんだその刹那。
「アッハハハ!」
部屋の中から男性の笑い声が聞こえた。
「め、メガネさん!!お、お化けが、、、!!」
「お化けじゃないです。あと、外套を引っ張らないで下さい」
何かあったらメガネさんを盾にしようとして、メガネさんの後ろに隠れる。すると、上から人が降ってきた。今まで生きてきた中で一番大きな悲鳴を上げた。
「いやー、笑った笑った。初めまして、俺は奈良。よろしくな、若人」
「やっぱりお化けじゃないですか!!」
「ぐぇ、、、」
メガネさんを盾にして隠れる。
「ここにいる人達は全員、『日本史』の化身なんですよ」
「日本史、、、?」
ニコリと人当たりの良い笑みを浮かべるメガネさん。
「メガネさんも、、、?」
「ええ、僕は明治。亜細亜の列強を目指して欧化政策を取り入れていました」
メガネさん、、、いや、明治さんに続き、赤毛の男の子が名乗る。
「おりゃあは稲作文化が生まれた、弥生ばい!」
ニコッと熊本弁を話す弥生くん。身長は私より小さい。
「いやいや、そんな日本史の化身ですって言われても、理解できないよ。それに何で私を呼ぶんですか?」
(もしかして、日本史VS私、、、!?)
「戦いません」
呆れたように明治さんがツッコむ。
「それは、若人が―――」
何かを言いかけた奈良さんをバインダーで叩く明治さん。