革新か、保守か──俺の一票が世界を変える!!
この物語はフィクションであり。実在の企業・団体・政治・政策等を批判する意図はありません。
目を覚ました瞬間、俺は違和感を覚えた。
自分の名前が思い出せない。そして、「1004527」という数字が付いた、黒い石板──「スマホン」と呼ばれるものが持たされていた。
「新たな目覚めを迎えし者よ。君はこの国の一員だ」
そう言って俺に語りかけてきたのは、流れるような文字の羅列だった。どうやらこのスマホンという石板は、個人識別の役割を果たし、あらゆる情報を得るための端末らしい。
そして、この世界では今、国王を決める戦いが行われているという。
革新派と保守派
国王を決める方法を巡り、二つの勢力が対立している。
革新派:「国民全員が持っているスマホンと個人番号を使って、直接国民投票を行うべきだ!」
保守派:「これまで通り、紙の投票用紙を使い、選ばれた代表者が国策を決めるべきだ!」
革新派が勝てば、国民一人ひとりが政策を直接決定する時代が来る。保守派が勝てば、今まで通りの時代が続く。
どちらが正しいのか──?
俺は、大きな声で話している革新派の話を聞いて、直感的に「確かにその方が民意が反映される」と思った。だが、その一方で、疑問を感じた。
「自分が投票するなら?」
ふと考えてみた。もし「税金を上げますか?」という投票が行われたとする。
当然、俺は反対に投票する。だが、「では予算が足りなくなった場合、代替案は?」と問われたら──俺は何も考えていない。ただ、「税金が上がるのは嫌だから」と感情的に判断しているだけだ。
投票ですらそうだ、政策など余り聞かずに、何となく信用出来そうだで決めている。
しかも、多くの国民も俺と同じではないだろうか。ほとんどの人は、「最後は、誰かがなんとかする」と思っているのではないか?
もし革新派が勝ち、国の仕組みが変わったとする。
国政に出る人は、ここで言う「誰か」だ、この誰かは、それなりのリスクを背負っている。
そして、政策を主導する者が、まるでチェスや将棋のように「10手20手先」を読んで計画を立てたらどうなるか?
もし「9手目で挫折」してしまったら? その者は無能と呼ばれ、あるいは悪人とさえ見なされるだろう。逆に、20手を見事に完遂すれば、歴史に名を刻む英雄となる。
一方、保守派が勝った場合、この国は数十年間安定を維持できる。しかし、それはやがて「衰退」と表裏一体のものでもある。時代の流れについていけなくなった国は、徐々に取り残されていくだろう。
俺はどちらに投票するのか ?
俺は考え続けた。
変革を求め、未来を切り開く革新派。
安定を守り、長い時間をかけて生き抜く保守派。
どちらを選ぶのが正解なのか?
投票は、明日だ。