5日目 名案
人の寿命が変化したのを見たことがあるかと言われると、一度もない。
人以外でも同じで、うちのハムスターも寿命が分かってからは今までよりもずっと気にかけて飼っていたけど、結局全員、最初に判明した寿命通りに死んでしまった。
近所に住んでいたおばあちゃんも、以前見かけた弱っていた野良猫も。
きっと私が見た寿命通りに死んでしまった。
「じゃあ、私がその一番最初の例になるわけかぁ」
ベッドに座っていた夕映が、主張の強い胸を自慢げに反らせて鼻高々に宣言する。
隣に足を伸ばして座っていた私は、ちらりとそちらを見ながら返す。
「すっごい強気。自信があるの?」
「うん。明日、病院行ってこようかなって。健康診断受けて何事もなかったら、そっからすぐに死ぬなんてことはないんじゃないかな」
なんて、夕映は名案とばかりに説明してくる。
「それは……そうかも」
確かに、考えたことがなかった。
……ハムスターはよく分からなかったけど、人なら。もしかしたら、病気とかを早期発見できたとすれば、治療次第で寿命が延びることもあるかもしれない。
そうなったら夕映はもっと長生きできる。
──もっと一緒にいられる?
「汐璃? 難しい顔してるけど……」
「……ううん。なんでもない」
ふと浮かんだ考えと期待に蓋をして、私は微笑を浮かべて首を横に振る。
夕映は「そっか」と呟き、私の下手な笑みとは違うちゃんとした笑顔を作った。
……いつもそうだ。夕映は天然でマイペースで、私が何を考えているのかなんて、多分想像もついてない。それに私は救われる。
「……ということで、明日は私の寿命が延びたとき用のパーティの準備をしててね。あ、ケーキはなんでもいいけど、LAWS〇Nのとろけるご褒美ケーキにしてね」
「それはもはや何でもいい、じゃないんじゃないかな」