20日目 少女漫画脳
「少女漫画要素が足りないと思う」
「また藪から棒に」
夕映がばっと上体を起こし、ちょっと久しぶりに変なことを宣い始めた。
私はごろんと仰向けに寝返りを打って、夕映の顔を眺める。
「少女漫画っていいじゃん?」
「……うん。何の話?」
「少女漫画っぽいことがしたいの!」
「……、そう言われてもなぁ」
少女漫画らしいこと……といっても、急には何も思いつかない。私は夕映ほど少女漫画を読まないし、お話としての恋愛に全然詳しくないのだ。
「例えば何があるの?」
「んーとね……。相合傘でしょ。腕枕に、お姫様だっこ、壁ドン、あとは……ハイタッチとかもそうかな。読んでてきゅんってするやつ」
「そういうものかな」
「あれだね。萌えってやつだね」
「言い方が古くない?」
私の返しに「そうかも」と納得だけして、夕映は改めて言葉を続ける。
「だから、やってみない?」
「……何を?」
「腕枕──はあんまり特別感ないよね」
「普段から隣で寝転がってるからね」
「じゃあ、お姫様だっこ」
「そんなコ〇ラのマーチみたいな抱っこポーズしても、無理だからダメ」
「えー……」
私の筋肉量じゃどう頑張っても夕映を持ち上げることはできないだろう。ゆえがちょっとしょんぼりしているみたいだが、できないものはできない。
「それじゃ、ハイタッチ?」
「夕映、お手」
「はい」
私が手を差し出すと、夕映がその上に手を乗せた。
──そのまま数秒が経って、私たちは互いに見つめ合う。
夕映の少しひんやりとした手の感触を確かめるように握る。夕映も私と同じように握り返してきて、お互いにしばらく握手をしてみる。
「きゅん、ってはしないよね」
「これはハイタッチじゃない……!」
夕映がまぁまぁな勢いで突っ込んでくる。まあ、分かってたけど。
「じゃああとは……壁ドン?」
「……いいの? 私に壁ドンなんかしたら」
視線を鋭くして私はちらっと夕映を見る。夕映はごくりと唾を飲んだ。
「…………したら?」
「……ほっぺにちゅーするから」
「なんだか急に、どうやってでも汐璃を壁際に連れて行きたくなってきた」
残り、10日。




