表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

2日目 隣人




 夕映と私は、小学生の頃から隣の家に住んでいる。

 だから、昔から何をするにしても一緒に居ることが多い。


 性格や喋り方が似ていると他人から言われがちなのも、それが理由だと思う。

 顔も少し似ているからか、姉妹と間違われることだってある。


 明確に似ていないのは身長と、髪の長さくらいだ。私は平均より背が低くて髪も肩まで。夕映はバレー部みたいに背が高くて、髪も腰まである。


「……汐璃って、かわいいよね」

「どしたの、藪から棒に」


 すぐ隣で横になっている夕映が、今気づいたみたいに言う。

 たまに、夕映はこういう変なことを口走る。


「今日も汐璃がかわいいなあって」


「どの辺りが?」

「髪が長いところ」

「まさか自画自賛だった?」


 それだとロングヘアの夕映の方が、よりかわいいということになる。

 ……まあ、夕映の方が私よりもかわいいという点については異論はないけれど。なんて思いながらも、私は続けて聞いてみる。


「他の部分は? もうちょっと具体的なのとかない?」

「右目の下の泣きぼくろが1.8231……mmなところ」

「有効数字5桁は具体的過ぎてやだなぁ」


 何で測ったらそこまで正確にほくろのサイズが分かるんだろうか。


「うそうそ。ほんとは汐璃の全部、頭のてっぺんから眉毛の下までかわいいよ」

「…………」

 

 私のかわいいところ、おでこだけだった。


「なんだかお世辞が苦手みたいだけど。どこで習ったの?」

「現国の授業かな? でもお世辞じゃないよ」

「それはそれで傷つく」


 そういうのは言われて嬉しいお世辞を言った時に使う言葉だと思う。


「照れ隠しだよ。ほんとは全部かわい」

 ふにゃっとした笑みで、唐突にそんなことを言われた。


 さっきまでの落差で、私の胸は不覚にもどきりとする。


 また夕映は私の顔をじっと眺めてくる。別に見られるのが嫌なわけじゃないけれど、あんまり見続けられると、どこかで何か失敗してしまいそうで困る。


「汐璃のかわいさを因数分解したい。やり方、教えて?」


 夕映がロマンチストな彼氏みたいな言葉を吐く。

 むしろ落ち着いた私は、別に照れることもなく素っ気なく返す。


「私、数1苦手だからなあ」

「……そういえば、私もだった」


 可愛さを因数分解するのは、なかなか難しい。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ