10日目 夏
夏を想起させる風物詩は、総じて短命だ。
例えば、花火。ラムネの炭酸や、かき氷、空蝉、風鈴を鳴らす涼風。
無論、それらは、だからこそ尊ばれると言っても過言ではないだろう。
初めて彼女に出会った時、痛切なまでに惹かれるものを感じた理由として、それが主な誘因だと私は考えている。
周りの小学生の中で、彼女は飛び抜けて寿命が短かった。
大体が25000日を超えている中、一人だけ4000日を切っていたのだ。
でも同情で一緒にいたわけではない。気が合うから友達になったのだ。
そもそもその頃の私の中に、同情という感情があったか疑問だ。
それは今も変わっていなくて。飲み物が欲しい時は一緒に買いに行くか、そうでないときはじゃんけんでどっちが行くか公平に決める。
代わりに行ってあげるなんてことはしない。彼女が傷付く気がするから。
私と彼女は対等でなくちゃならない。
ずっとそうだったから。
これからもきっと、私たちはそうあるのだろう。
──なんて、現実逃避しているのにもそろそろ限界が来た。
正座なんて久しぶりにしたから、足が痺れて痛い。
「夕映。……膝疲れた、そろそろ交代」
私の膝上を堪能する夕映のほっぺを、両側からぐにっと手で潰す。
「ふぇー。あふぉ五分……。そもそも膝枕したいって言ったの汐璃なのに」
「普通、膝枕したいって言いだす側は、頭を乗せたい側なんだよ」
というか、なんで私がやってるのか。交代制だからという言葉に騙された。
「汐璃の太もも、筋肉なくてふにふにしてる……」
「あ、誤魔化した」
「うんうん。もう少ししたら交代ね」
「…………、わかった」
「……不満そうな汐璃もかわい…………。……すやぁ」
目を瞑った夕映が、私の太ももに頬を埋めてわざとらしく寝たふりをする。
「寝たら死んじゃうよ?」
「え。ここ雪山だった? 遭難中?」
「ううん。……夕映じゃなくて、私の膝が」
「あわわわわ」
がくがくと震え始めた私の膝に、夕映は慌てて頭を上げた。




