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第9話:ダンジョンの核

〔すごい……今までにない力を感じます!〕

『ソの力をよこせええ! 全て奪い取っテやるぞおおお!』


 ボスオークが叫ぶと、地面が沸騰するようにボコボコと蠢き出した。

 俺は慌てて剣を構え直す。

 な、なんだ?

 土の塊は徐々に形を作り、ボスオークと同じ姿になった。

 コシーもまた険しい顔で剣を構える。


〔どうやら、魔法で自分の分身を作り出したみたいです。本体は直接戦わず、分身で様子を見るということなんでしょう〕

「厄介な敵だな」


 オークにしては知能が優れている。

 それに普通の個体なら、こんなに高度な魔法は使えないはずだ。


『『ゴアアッ!』』


 ボスオークの分身は勢いよく突っ込んでくる。

 ゴブリンより何段階も速いスピードだ。

 コシーは構えた剣をオークに向ける。


〔先ほど吸収したダンジョンの魔法攻撃を解放します! マスター、離れていてください!〕

「わかった……ってうぉっ!」


 コシーの剣が稲妻をまとう。

 さっきの罠魔法と同じか、それ以上の強烈な迸りだ。

 こんな電撃を喰らったら、ひとたまりもないだろう。


〔いきますよ!〕

『『ギャァアッ!!』』


 コシーが雷の剣でオークの分身を引き裂く。

 次々と砕け散り土に帰る。

 分身と言えど本体がSランクだから、それに近いポテンシャルはあるはずだ。

 想定外だったのだろう、ボスオークが怖じ気づく。


『ナ、なに……!? なんダ、お前は……!?』

〔おとなしく討伐されなさい!〕

『……まダだ! まだ終ワっていないぞ!』


 ボスオークは地面に向かって魔力を込める。

 土がヤツの体をまとい、ボスオークは土の鎧で覆われてしまった。

 遠目から見てもかなり堅そうだ。

 地面を押し潰すようにして、猛スピードでこちらに突進する。


『覚悟シろ! 粉々にしテやる!』

「クソッ、土の鎧か!」

〔大丈夫です、マスター!〕


 コシーはすんでのところでかわすと、剣を振り抜いた。

 ボスオークの身体を鎧ごと切り裂く。


『がハっ! なん……だと……つ、強スぎる……!』


 ボスオークは倒れ、ピクリとも動かない。

 コシーがたったの一撃で倒してしまった。


「やった! ボスオークを倒したぞ! すごいな、コシー!」

〔やりましたね、マスター!〕


 俺たちは手を取り合って喜ぶ。

 Sランクモンスターを討伐するなんて夢にも思わなかったことだ。


「あっ、コシーの身体が」


 喜んでいたら、コシーがどんどん縮んでいった。

 どうやら、魔力を使い切ったらしい。


〔縮んでしまいました〕

「ありがとう、コシー。君のおかげで強敵を倒せたよ」

〔いえいえ、マスターのおかげです〕


 コシーはいつも俺のおかげだと言ってくれる。

 俺自身ももっと強くならないとな。

 心の中で静かに、だけど硬く決心する。


「さて、核はどこだろうな」

〔あそこの部屋にあるのではないでしょうか?〕


 コシーはボスオークが共食いしていた部屋を指す。

 モンスターは本能で魔力が一番強い場所を探り当てたのだろう。

 俺はコシーを胸ポケットに入れて進む。

 食い散らされたオークの死骸が無造作に転がっていた。

 血や内臓の臭いでむせ返りそうだ。

 死骸を避けながら真ん中まで進むと、ひと際強い魔力を感じ取った。

 中央の台に球体が浮かぶ。

 ほぼ無色透明で向こう側が透けて見えた。

 あまりの美しさに思わず見とれてしまう。


〔マスター、この浮いているのはもしかして……〕

「コシー、これがダンジョンの核だよ」

〔これが……〕


 核を壊すとダンジョンは消滅すると言われている。

 だが、Eランクダンジョンですら核の破壊は至難の技だ。


〔こんなにキレイなら、さぞかし冒険者の間でも取り合いになってるんじゃないでしょうか?〕

「実際はそうでもないんだ。加工も何もできないんだよ。魔石やアイテムの方がずっと有用だから、ほとんどの冒険者は無視しているね」

〔そうなんですか〕


 ダンジョンの核は近くで見るとさらに美しく、まるで貴重な宝石のようだった。


「これに魔力を注げばいいのかな?」

〔マスター、さっそくやってみてください〕

「よし」


 果たして本当に、ダンジョンをテイムできるのだろうか。

 俺は透明な球体に手をあてる。

 半信半疑になりつつ魔力を込めた。

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