最終話:これからも、ずっと……
「アイト、サポートありがとな! おかげで、無事にクリアできたぜ!」
「あのダンジョンは一生攻略できないと思っていたぞ!」
「また頼むな!」
俺たちがパーティーをサポートするようになって、冒険者たちのケガや死亡はほとんどなくなった。
――これは思ったより、やりがいのある仕事だ。
聞く話によると、冒険者の安全性が高まるこの仕組みを真似するギルドも出てきたらしい。
とはいっても、冒険者が成長できるように適度なサポートに留めている。
傍らの仲間たちに話しかける。
「これで冒険者が安全な仕事になっていけばいいね」
〔マスターの功績はとても大きな物です〕
〔他人のことまで考えられる人はなかなかいないわ〕
〔主以外では、とてもこんなことはできないだろう〕
みんなで話していると、ケビンさんとサイシャさんが人混みをかけわけ歩いてきた。
おーい、と手を振っている。
「アイト、今日も絶好調みたいだな。やっぱり、お前に頼んで良かった」
「皆さん、とても喜んでいますよ」
“鳴り響く猟団”はさらに活気が増し、今や色んな冒険者たちが出入りした。
昔はいなかったような人たちもたくさんいる。
あんなに広かったのに狭く感じるほどだ。
「ここも人が結構増えましたね」
〔最初に来た時より冒険者がたくさんです〕
〔クエストも増えて大盛況ね〕
〔少々、手狭になってきていないか?〕
ミルギッカが言うと、ケビンさんは顎に手を当てながら話した。
「ああ、ギルドを拡張することも考えないとな。こんなに発展したのは何年ぶりだ」
「これも全部、アイトさんのおかげですよ」
ギルドが大きくなれば、扱うクエストの数も増える。
報酬も多くなるので、街全体が潤る。
街が豊かになれば、訪れる冒険者も多くなる。
理想的なサイクルが生まれつつあった。
ケビンさんは真剣な顔になり、俺に話す。
「アイト、俺はいずれ、お前にギルドマスターを引き継いでもらいたいと思っている」
「えっ! ほ、ほんとですか!?」
思わず尋ね返すと、ケビンさんは黙って頷いた。
サイシャさんも穏やかな微笑みを浮かべながら言う。
「私も受付嬢として色んな冒険者を見てましたが、アイトさんほど適任の人はいないと思います。私からも推薦したんですよ」
「と……とても嬉しいです。そんなことを言ってくださるなんて」
二人の話を聞いて、胸にじわじわと喜びがあふれる。
ギルドマスターは誰でもなれるもんじゃない。
冒険者としての実力だけでなく、周りの人たちからの信頼が必要だからだ。
コシーにエイメス、そしてミルギッカも、一緒に喜んでくれた。
〔マスターはみんなのマスターになるんですね〕
〔アイトは誰にも渡さないけど〕
〔おい、主はわらわの物だぞ〕
みんなのためにも、もっと努力しないといけないな。
気を引き締めたところで、新しい冒険者たちがきた。
今日、俺たちがサポートをする予定のパーティーだ。
「アイトさん! 今日は私たちの番ですよね! よろしくお願いします!」
「憧れのアイト様と冒険できるなんて幸せです!」
「わざわざ、この街に来たかいがありました!」
つい最近冒険者になった、女の子の新米パーティーだ。
三人とも俺より何歳か年下の子たちだった。
なんだかお兄さんになってしまった気分だ。
「今日はスライムの討伐だったよね?」
「はい! 初めてのモンスターなので緊張します!」
「どうやって倒せばいいんですか?」
「スライムも強いんですか!?」
そういえば、俺も最初はスライムにやられそうになっていた。
今となっては遠い昔のようだ。
俺は今までの冒険を思い出す。
――あの時から、全てが始まったんだな……。
思えば、本当にたくさんの出来事があった。
小石のテイムから始まって、Sランクダンジョンに、“伝説の聖剣”……。
みんな、俺の仲間になってくれた。
ギルドの危機を救ったこともあった。
仲介人の大きなグループを倒して、冒険者たちを助けたり……。
どれも貴重な経験ばかりだ。
そして俺は今、ギルドを引っ張る存在になっている。
――俺がここまで成長できたのも、コシー、エイメス、ミルギッカたちのおかげだ……。
俺は自慢の仲間たちを見回す。
彼女たちだけじゃない。
サイシャさんや、ケビンさん、ギルドの冒険者や街の住民も、みんな俺の大切な人たちだ。
――ありがとう、みんな。
明るい気持ちになっていたら、稲妻が迸る音が聞こえた。
それはもうバチバチと。
エイメスを見ると、目から光が消えている。
〔アイトは私の……〕
「エ、エイメス!? ストーップ!」
もちろんのこと、大慌てで止める。
前途有望な若者が消し炭になったら大変だ。
と思いきや、隣から恐ろしい声が聞こえる。
〔貴様ら、良い度胸だな……〕
「ミルギッカも落ち着いて!」
もの凄く怖い顔。
新米パーティーの子たちが震えているよ。
こんなときは頼りになるコシーの手助けを……。
〔またライバルが増えましたか……〕
「コシーまで!」
と思いきや、コシーも硬い顔だった。
俺は彼女らを必死になだめながら、クエストに向かう。
――懐かしいな、この感じ。
俺たちはこの先も、こうやって冒険をしていくのだろう。
これからも、ずっと……。
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