第41話:受付嬢の気持ち(Side:サイシャ①)
「荷物、少し持ちましょうか?」
私がアイトさんと出会って、どれくらい経つんでしょうか。
初めて会ったのは、かなり昔のような気がします。
でも、実際はまだそんなに経っていないんですよね。
不思議です。
「アイトさんにこんなすごい力があったなんて、とても驚きました。きっと、神様がちゃんと見ていてくれたんですよ」
コシーちゃんを見せてくれたときは、びっくりしましたよ。
まさか、アイトさんのテイム対象は無生物だったなんて。
そんな<テイマー>もいるんですね。
しかも、あんなに可愛くて真面目でしっかりした子にしちゃうとは……恐れ入りました。
「え、Sランクダンジョン!? そんなの無理ですよ!」
「アイトさん、落ち着いてください。ダンジョン自体はもう廃墟になっています。攻略する必要はないですよ」
あの後、コシーちゃんと廃墟になったSランクダンジョンに向かいましたよね。
ダンジョンをエイメスさんにするのは、想定外も想定外の出来事でした。
あんな美人を連れてくるとは、誰だって想像もしませんよ。
「可愛い女の子に囲まれて、嬉しいのはわかりますけど……もっと、私のことも見てくださいねっ」
どうしてアイトさんの周りには、素敵な女の子が集まるんでしょう。
アイトさんの仲間が増えるは、私も嬉しいです。
でも、なんだか複雑な気持ちにもなるんですよね。
あの時は少し不安になって、少々乱暴な態度を取ってしまいました。
「サイシャさん! 無事だったんですね!」
「アイトさんのおかげですよ!」
ゴールデンドラゴンが襲ってきたときは、死を覚悟しました。
アイトさんのおかげで、私たちは生きているようなものです。
あんなに恐ろしいモンスターなのに、アイトさんは全く怖がっていませんでしたね。
正直に言って……かっこよかったですよ。
「アイトさん! おかえりなさい! って、また新しい女の人!?」
「サイシャさん! 違います、これは……!」
ミルギッカさんを連れてきたときは驚きました。
女の私から見ても、すごい美人でしたから。
何をしたのかわかりませんでしたが、“伝説の聖剣”をテイムしたんですね。
誰も触ることすらできなかったのに……。
やっぱり、アイトさんは“選ばれし者”だったんです。
「サ、サイシャさん! キレイなドレスですね!」
宴のとき、そう言ってくれて私はドキッとしました。
内緒ですけどね。
アイトさんはどんなに強くなっても、冒険者ランクが上がっても、ずっと優しいままです。決して自惚れたり、態度がでかくなったりしません。
それって、結構すごいことなんですよ?
「このギルドで指南役をやってくれないか?」
「アイトさんならぴったりだと思うんです」
「指南役……ですか?」
だからこそ、私たちはアイトさんに、ギルドのリーダーを頼んだのです。
ただ強いだけでなく、いつも他人のことまで考えてくれる。
アイトさんこそ、ふさわしい人物です。
私はアイトさん達と一緒に、クエストへ行くことはできません。
それでも、心の中ではいつも一緒に冒険しているような気がします。
――アイトさん、いつもありがとうございます。これからも応援し続けますね。




