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無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです  作者: 青空あかな


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第36話:指南役

「アイトさん、ちょっとよろしいですか?」

「俺たちから頼みがあるんだが」


 宴から数日過ぎた頃。

 ギルドに行くと、ケビンさんとサイシャさんに呼ばれた。


「はい、なんでしょうか?」

「今やお前はすっかり有名人だ。他の街のギルドマスターも、お前のことを讃えているくらいだぞ」

「アイトさんの弟子になるために、このギルドへ向かう冒険者もいるみたいですよ」

「いや、そんな……俺は大したことはしてませんよ」


 二人の話を聞くと、少し照れくさくなってしまった。

 たぶん、ストラ君やフツラト平野にいた冒険者たちが話したのだろう。

 隣にいるエイメスやミルギッカ、胸ポケットのコシーが自慢げに話す。


〔マスターは世界を代表する冒険者になったのです〕

〔ようやく、世の中がアイトの凄さに気づいたってわけね〕

〔わらわは一目見ただけで、主の素晴らしさがわかったがな〕


 彼女たちは誇らしげだが、俺の方こそみんなを誇りに思っていた。

 俺なんかより三人の方がすごいのだ。


「それでケビンさん。頼みというのは何でしょうか?」


 また、モンスター退治の依頼だろうか。

 みんながいれば、どんな強いモンスターだって倒せる。

 そう強く思える。

 しかし、ケビンさんに言われたのは予想もしないことだった。


「このギルドで指南役をやってくれないか?」

「アイトさんならぴったりだと思うんです」

「え? 指南役……ってなんですか?」


 初めて聞く言葉だ。

 なんだろうな。

 俺の疑問を察したように、ケビンさんは説明を続ける。


「簡単に言うと、ここの冒険者全体のリーダーだ。冒険者たちを手助けしてほしい」

「なるほど……具体的にどんなことをするんでしょうか?」

「駆け出しのパーティーや、難易度の高いクエストに行く冒険者をサポートして欲しいんだ。もちろん、自分たちが行くクエストを優先してくれて構わない」


 ケビンさんの話を聞いてストンと納得した。

 サイシャさんも真面目な顔で話す。


「私たちは冒険者の危険を、少しでも減らしたいと思っているんです。クエストには死がつきものですから」

「そういうことでしたか……」


 確かに、どんな依頼も危険を伴う。

 クエストの成功率が上がって、冒険者の死亡率が下がればみんな嬉しい。

 仲間が死んで、悲しい思いをする人も減るだろう。

 コシーたち三人も賛成のようだ。


〔マスターがいれば皆さん安心です〕

〔これなら、アイトが色んなパーティーに入れるわね〕

〔どうしてもと言うのなら、わらわの力を貸してやらんこともない〕


 ケビンさんは一段と真摯な表情になって言う。


「モンスターを全て倒しちまうと、他のヤツらの成長が進まないから、加減が難しいとは思うが……。どうだ、やってくれるか?」


 ギルドや他の冒険者に貢献できる、貴重な仕事だ。

 何より、自分の力が人の役に立つなんて、とても悦ばしいことだ。


「ええ、もちろんですよ。ぜひ、俺にやらせてください」

「ありがとう! お前以上の適任者はいないと思っていた!」

「アイトさん、ありがとうございます!」


 ケビンさんもサイシャさんも、とても喜んでくれた。

 新しい冒険者生活が始まるんだな。


〔また色んな冒険に行くのが、今から楽しみです〕

〔今度はどんなクエストかしらね〕

〔ふん、わらわは主がいれば、それでよいわ〕


 みんなで話していると、ギルド中の冒険者たちが集まった。

 あっという間に、俺たちは囲まれてしまう。


「アイト。さっそく、俺たちのパーティーに入らないか?」

「私たちもお願いします。修行をつけてください」

「俺たちのパーティーリーダーになって!」

「なかなかクリアできないクエストがあるんだ! 手伝ってくれよ!」

「アイトみたいな冒険者になるには、どうすればいいんだ!?」


 いっせいに、パーティーの加入を頼まれてしまった。

 みんながみんな俺に押し寄せてくるので、大変な人だかりになる。

 ギュウギュウ押されて苦しいけど、全然嫌な感じはしなかった。


「ちょ、ちょっと、順番に行きますから……!」

〔マスターは相変わらず、すごい人気です〕

〔私たちも幸せだわ〕

〔コラ、割り込むな! 主の近くにいけないだろ!〕


 遠くで、サイシャさんがニコニコ笑う。

 もみくちゃにされながらも、俺もニッコリと笑い返した。

 結局、順番で冒険者パーティーをサポートすることになった。

 しばらくは、彼らのクエストへ一緒に行くことになりそうだ。


〔マスターも人を導く側になっていくんですね〕

〔アイトに教えられるなんてすごい贅沢よ〕

〔主がいれば、どんなモンスターも敵ではないな〕


 コシーたちの話を聞き、ふと思った。

 そうか、俺もこの先、ケビンさんみたいな役回りになっていくのかもしれないな。

 なんだか不思議な感じすると同時に、身が引き締まる思いだ。

 充実感のようなものが、じわじわと心に広がっていった。

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