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無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです  作者: 青空あかな


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第26話:予想通りの再会

「ア、アイト、俺たちを助けにきてくれたんだな!?」


 ボーランが涙と鼻水を流しながら、俺の足にすがりつく。

 やはり、彼らがこの危機を招いたようだった。

 コシーがゴールデンドラゴンの攻撃を吸収しきると、ケビンさんが走り寄った。


「アイト! 来てくれたのか!」

「カズシナ村から急いで帰ってきました。街やギルドの人たちは大丈夫ですか?」

「まだ詳しくはわからんが、壊されたのはギルドの壁だけだ。ケガ人も確認できる範囲ではいない」


 ギルドはめちゃくちゃになっているが、冒険者の皆は無事みたいだ。

 住民にも被害はまだ出ておらず、俺はホッと一息ついた。

 ブレスが防がれたのを見て、ゴールデンドラゴンは表情が固くなる。


『む……貴様らはただ者ではないな。洗練された魂を感じる。……このギルドの代表か』


 ゴールデンドラゴンは体中から波動が生まれるほど、さらに魔力を溜める。

 すごい魔力だ。

 コシーとエイメスはすぐに戦闘態勢に入る。

 だが、ここで争ったら、さらに被害が大きくなってしまうかもしれない。

 何とかして、戦いは避けたいところだ。


『今度は手加減せぬ』


 まずは一刻も早く、ゴールデンドラゴンの赤ちゃんを返すべきだ。

 俺はボーランに振り向く。


「ボーラン、今すぐ赤ちゃんを返せ!」

「ア、アイトまでそんなこと言うのかよ。な、なぁ、ここまできたら、一緒にゴールデンドラゴンを討伐しようぜ。俺たちの仲じゃないか。そうだ! 赤ん坊を売った金の半分をお前にやるよ! そうすりゃ、一気に金持ちに……」

「返すんだ!!」


 自分がボコボコにされた時より、はるかに強い怒りを感じる。

 ボーランは唖然としていたが、やがて諦めたようにしぶしぶと赤ちゃんを俺に渡した。

 俺は急いでゴールデンドラゴンの前に走り、丁寧に赤ちゃんを差し出した。


「ゴールデンドラゴンさん、本当にすみませんでした。赤ちゃんをお返しします」

『……』


 ゴールデンドラゴンは無言のまま赤ちゃんをくわえると、大事そうにお腹の袋にしまった。

 だが、赤ちゃんが戻っても彼女の険しい表情は変わらない。


『確かに息子は返してもらった。だが、それでも私の怒りはおさまらない。そこの四人組に夫を殺されたのだからな。貴様ら人間に復讐しなければ、怒りが静まることはない』


 その相変わらず鋭い目を見ると、ボーランが小声で俺に話した。


「おい、アイト。一緒にゴールデンドラゴンを倒そうぜ。そうすれば、俺たちは……」

「ボーラン、やめろ。いい加減にろ」


 俺はボーランを振りほどくと、ゴールデンドラゴンの前に歩いた。

 魔力がほとばしっていて、近づくのも大変なくらいだ。


〔マスター……〕

〔アイト……〕


 コシーとエイメスの心配そうな呟きが後ろから聞こえる。


「ゴールデンドラゴンさん! あなたの旦那さんは生きています!」


 俺は気迫に負けないよう、力いっぱい叫んだ。

 ゴールデンドラゴンの眉がピクリと動く。


『……もっとマシな嘘を吐いたらどうだ? 安心しろ、ムダな苦痛など与えない。一瞬で消し炭にしてやる』

「旦那さんは俺が傷を手当てして、回復したんです。カズシナ村近くの森で休んでいます。信じてください!」


 いくら説得してもその表情が和らぐことはない。


『人間の言うことなど信じられんな。もし夫が生きているというのなら、その証拠を見せろ』

「森に行ってくれればわかります!」

『とうてい信じられん。さようなら、愚か者たちよ』


 ゴールデンドラゴンからは、さっきより数段強い魔力を感じる。

 やはり、モンスターが人間を信じるなんて無理なのか……。


〔マスター!〕

〔アイト!〕


 コシーとエイメスが俺の近くに来る。

 それぞれ剣を構え、雷が迸る。

 みんなで戦えばどうにか勝てるだろう。

 だが、ここでゴールデンドラゴンを倒してしまうと、赤ちゃんの親を殺してしまうことになる。


 ――くっ、どうすれば……! 彼らは、何も悪くないのに……!


 超高温のブレスで膠着状態が壊れそうになったとき……何かが羽ばたく音がして、地面が激しく揺れた。


「「な、なんだ!?」」


 みんなが驚く中、ギルドの壁からもう一匹のゴールデンドラゴンが現れた。

 森で手当てした、夫の方だ。


『よかった……間に合ったようだな』


 母親ドラゴンは目を見開く。


『あ、あなた!? 生きていたのですか!? ケガは、大丈夫なのですか!?』

『ああ、もう平気だ。そこの人間に命を救われたのだ。人外の存在を仲間にした、その不思議な人間にな』


 夫のゴールデンドラゴンは俺を見て話す。

 手当てはしたものの、傷は浅くなかった。

 カズシナ村の森から飛んできたら傷が開いてしまうのに……。


「ま、まだ動ける状態じゃないですよ! 傷が開きでもしたら……!」

『なに、あまり我らを甘く見ないことだ。さすがに、少々無理はしたがな。……さて、我が妻よ。無事息子は帰ってきたし、我も命に別条はない。ここで引いてやったらどうだ?』

『……』


 母親ドラゴンはしばし悩んでいたが、やがて俺たちを見て言った。


『人間たちよ、貴様らの同胞が行ったことは許せん。しかし、同じく貴様らの同胞によって、我の命が救われたのも事実。よって、貴様らの命は見逃してやろう。息子も無事に帰ってきたしな』


 それを聞くと、ギルドにいる人達はホッとした。

 もちろん、俺もだ。


「ありがとうございます……ゴールデンドラゴンさん」

『人外を従える不可思議な人間よ。一つ良いことを教えてやろう』

「な、何ですか?」


 母親ドラゴンは俺を見たまま話す。

 何を言われるのか緊張するな。


『フツラト平野に、天の神剣が出現した。すでに、腕自慢の人間どもは向かっているようだ。もし、挑戦する気があるのなら行ってみるがよい』


 ――天の神剣……。


 “伝説の聖剣”と呼ばれる、極めて珍しい宝剣だ。

 不定期に出現しては、また姿を消すことで知られている。


「ど、どうして、それを俺に……?」

『なに、夫の命を救ってくれたことと、息子を返してくれたお礼だ。もっとも、貴様が神剣に認められるかは別だがな』


 そう言うと、ゴールデンドラゴンのつがいは大きく羽ばたいた。

 壁の穴から外に出て、あっという間に空のかなたへ飛んで行く。

 ギルドと街の危機は去ったのだ。

 皆は歓声を上げる。


「やったー! 街は救われたぞー!」

「アイトは俺たちの救世主だ!」

「助けてくれてありがとう! どうなるかと思ったよ!」


 俺たちの周りに、瞬く間に人だかりができる。

 コシーとエイメスも嬉しそうに話す。


〔戦わずに街を救うなんてマスターにしかできません!〕

〔やっぱり、アイトはすごいね!〕


 ケビンさんにもギュッと抱きしめられた。

 喉が詰まりながらお礼を言われる。


「アイト、なんてお礼を言ったらいいのかわからんな……。本当に、ありがとう」

「いえ、できることをしただけです」


 今度はカウンターの奥から、サイシャさんが飛び出てきた。

 埃で汚れているが、大きなケガはしていないようだ。


「サイシャさん、無事だったんですね!」

「アイトさんのおかげですよ!」


 よかった……何とかなって……。

 みんなの笑顔を見ると強く思う。

 しかし、まだすべての問題が解決したわけではない。

 皆ボーランたちを憎しみを込めて見る。

 彼らのせいで、大変な目に遭ったのだ。

 冒険者たちの怒号がギルドに響く。


「ボーラン! 貴様らは何をしたかわかってるだろうな!」

「アイトが来なかったら今頃死んでいたよ!」

「お前ら! タダで済むと思うな!」

「私たちがどんな怖い目に遭ったと思うの!」


 ギルドや街の人たちは口々に怒鳴りつける。


「「あ……あ……」」


 ボーランたちは、ただただ震えあがっているだけだった。

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