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無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです  作者: 青空あかな


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第14話:嫉妬

「……ここが例のAランクダンジョン“火柱の迷宮”か」


 小一時間ほど歩き、俺たちは目的地に着いた。

 森の奥にポツンとあるダンジョンだ。

 今は木陰から様子を窺っている。


〔やはり、雰囲気がありますね〕

〔陰気なとこ〕

「目的の秘薬はダンジョンの最下層にある……ってケビンさんが言ってたね」


 Aランクダンジョンには強いモンスターがうようよいる。

 ゴーレム、グレートウルフ、オーガナイト……例を挙げればキリがない。

 エイメスの時とは違ってここは現役のダンジョンだ。

 気を引き締めていかないといけないな。

 胸ポケットからコシーの険しい声が聞こえる。


〔ここにも色んな罠があるのでしょうか〕


 基本的に、ダンジョンには罠がある。

 魔法攻撃だったり、壁から槍が出てきたり、落とし穴があったり……散々冒険者たちを危険な目に遭わせてきた。


「Aランクだから強い罠がありそうだな。気をつけないと……」

〔見て見てぇ~、かわいいモンスターがいっぱいいるよ〕


 緊張する俺とコシーに対して、エイメスはダンジョンを眺めては無邪気に喜んでいた。

 入り口の周りには、Bランクのトレントやメタルワームがウロウロしている。

 こんなに数がいたら、ダンジョンに入るだけでも一苦労だろう。


「さすがはAランクダンジョンだ」

〔気をつけていきましょう〕

〔ねぇ、早く行こう~〕


 エイメスは何の迷いもなく進もうとする。

 ので、俺たちは慌てて引き留めた。


「ちょっと待って、エイメス。しっかり準備しておかないと」

〔えぇ~、そんなのいらないよぉ~〕

〔エイメスさん、マスターの言う通りです。相手はAランクとは言え油断してはいけません〕


 天真爛漫系なエイメスと、真面目でしっかりしたタイプのコシー。

 俺から見ても、これはかなり良いコンビだった。


〔マスター、私に魔力を〕

「そうだね」


 念のため、ダンジョンに入る前にコシーを大きくしておく。

 これでモンスターや罠に後れを取ることはないはずだ。


〔ありがとうございます、マスター〕

「これでよし。さぁ、行こうか」


 荷物も確認し、準備万端だ。

 しかし、いざダンジョンへ! というところで、コシーがまた余計なことを言ってしまった。


〔このダンジョンもマスターがテイムしたら、エイメスさんみたいになるのでしょうか〕

〔……なに、アイト。別のダンジョンの子が欲しいの?〕


 エイメスの目から光が消え、稲妻が迸る。


「ち、違うよ! そんなわけないでしょ! コシー、変なこと言わないでよ!」

〔エ、エイメスさん!? 何も、そういう意味で言ったわけでは……!〕


 俺らは必死に訂正した。

 だが、エイメスの耳にはもう届かなかった。

 両手をダンジョンにかざすと、勢いよく放つ。


〔アイトは私の物なんだから! 許さない!〕

〔「うわぁあっ!」〕


 彼女の激しい稲妻がダンジョンを駆け巡る。

 あまりの衝撃で、俺とコシーは吹き飛ばされてしまった。


『『ギャアアアッ!』』


 ダンジョンの周囲、そして中からモンスターの断末魔の叫びが響き渡る。

 周りを徘徊していたモンスターも、稲妻が触れた瞬間消し飛ぶ。

 あっという間に、ダンジョンは黒焦げになった。

 稲妻が消えると、不気味なほど静かになる。

 エイメスの実力を目の当たりにして、俺とコシーは震えあがった。


〔ふう、ヤキモチ焼いちゃった〕

「エ、エイメス……」

〔そ、そんな……〕

〔アイトは誰にも渡さないんだからね!〕


 ギュッ! とエイメスは抱きつく。

 その顔はいつもの明るい表情に戻っていた。


「う、うん、そうだね」

〔そ、そうですね〕


 もはや俺たちは、そうだね、としか言えなかった。

 エイメスに連行されるようにしてダンジョンに入る。

 一言で言うと、惨状が広がっていた。


「す、すごい……」

〔魔石や素材がいっぱいです……〕


 床一面に、魔石や素材が転がっていた。

 今回ばかりは、さすがにモンスターたちに同情する。

 せめて、苦痛が一瞬だったことを祈った。

 たぶん、ここで一生分の魔石や素材が手に入るのではないだろうか。


〔マスター、あれは何でしょう〕

「ん?」


 途中、罠だったと思われる残骸が、そこかしこに散らばっていた。

 中には非常に強い魔法陣もあったが、エイメスの攻撃に耐えられなかったんだろう。

 魔法陣ごとただの消し炭になっていた。

 ダンジョンの罠や仕掛けなども、全て焼き払ってしまったのだ。

 それも、たった一撃で。

 進めば進むほど、俺らは恐怖を感じる。


〔マ、マスター、宝箱がありますよ〕

「ほ、ほんとだ」


 通路の片隅にアイテムボックスがある。

 この惨状だ。

 俺は正直、秘薬を持って帰るのは諦めていた。


 ――この分だと、アイテムも黒焦げだろうな。ケビンさんになんて言おう。まさか、エイメスが嫉妬して……とか言えないよな。


 俺は恐る恐る箱を開ける。


「こ、これは……!」


 ……予想に反して、アイテムは無傷だった。

 Aランクの回復薬が手に入った。


〔アイトは秘薬をゲットしたいんでしょ? だから、アイテムは傷つけてないよ。ダンジョンだって壊れない程度に攻撃したんだから〕

「な、なるほど、ありがとう……」

〔さ、さすがでございます……〕


 確かに、ダンジョンは黒焦げだったが問題なく進める。

 天井や床が崩落することもなかった。

 モンスターのみ倒し、アイテムやダンジョンの構造には全くダメージを与えない。

 その冷静さがまた一段と怖かった。


〔ルンルンル~ン〕


 エイメスは機嫌よく歩く。

 少し離れてから、俺はそっと隣のコシーに言った。


「コシー、発言には気をつけようね……」

〔す、すみません、マスター。まさか、こんなことになるとは……〕


 最下層で秘薬を入手し、なんだかやるせない気持ちで帰路に就いた。

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