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星の子

作者: 風島ゆう


 死んだらお星様になるって言葉があるでしょう。あれは別に比喩じゃないの。生き物の中には、ごく稀に星になる構造で生まれてくる命があるのよ。彼らは星の子と呼ばれて、いつか星になるまで地上で普通に暮らしている。寿命は不思議と四の倍数になることが多くて、だから四年に一度巡ってくる誕生日を超えた時は歳越し祭といって盛大にお祝いをするの。


 ナギの言葉に、僕はふうん、と適当な相槌を打った。

 幼なじみのナギは空想が大好きな女の子だ。また妙なことを言い出したな、と僕は手元のスマホゲームをしながら話を聞き流していた。

 それでね、私今日で十六になるでしょ。とナギが言った。


 十六は四の倍数。私にも星になる時が来たみたい。


 見て、とナギが僕の目の前に座り直す。ワンピースのボタンをためらいもなく外したナギが、ほら、と大きく胸を開いて見せた。

 何やってるんだよ! と慌てた僕の非難が言葉になる前に虚空に消える。そこにあるのは女の子の体なんかじゃなく、星のように瞬きながらほろほろと崩れていく胸骨だったからだ。


 あと半日もすれば、私の体は全部星になる。といっても空に飛んで行ったりはしないのよ。ぴかぴか光って、跡形もなく消えるだけ。


 嘘だろ、と意味のない言葉が僕の喉からこぼれおちる。

 そんなことってあるかよ。今年の誕生日には、長年温め続けたこの思いをついに打ち明けようと、あげたことのないプレゼントを用意して、いつ渡そうかとポケットに忍ばせていたのに。


 喜んだ顔が見たかった。困らせるかもしれないなと不安だった。だけどもう、全て意味のない問題だ。

 言われるまでナギの秘密に気づけず、近くにいながら四年に一度の不安を支えることもできなかった。僕は馬鹿だ。僕は阿呆だ。なのに、どうして。


 どうしてお前は、最後の日に僕のところになんかに来たのだろう。


 夜空に星が瞬き出す頃。ナギは静かにこの世界から姿を消した。

 ナギが僕に残したのは、いつだったか似合ってるよと僕が褒めた、花柄のワンピースだけだった。


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