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円城紡は伝えたい

 翌日。

 あの後、驚異的な集中力を発揮した俺は、一晩でクライマックスを書き上げた。

 完全に徹夜である。


「ね、眠い……」


 思えば最近ずっとこんな感じである。

 学校ではずっとふらふらしているな、俺。

 徹夜明けで授業をなんとか乗り切った俺は、アニメ部の部室に向かった。

 今すぐ帰って寝たいところだが、その前にやることがある。

 それでも、今日は前と違って気分が高揚していた。

 部室に向かって歩いている内に、眠気が覚めて元気になってきた。


 部室に向かって廊下を歩いていると、音楽室に向かって階段を上っている速水を見つけた。

 今日も吹奏楽部の練習に向かうようだ。

 昨日、学校でどきっとさせられた女の子。

 前から俺の小説の絵を描いてくれていたことが判明した女の子。

 もっと緊張するかと思ったけど、それより速水と話したい気持ちの方が強かった。

 今は、伝えたいこともある。

 俺は階段を駆け上がると、後ろから声をかけた。


「速水!」

「あ、先輩。どうしたんですか?」


 いつもどおりの速水の様子で、安心する。

 俺は少し息をきらしながら言った。

  

「『迅雷伝説』が、完成した」

「はやっ!」


 さすがに昨日の今日ではびっくりするか。

 そりゃそうだ、昨日時点では何も進んでいなかったからな。

 

「昨日あれだけうじうじしてたのに。一体どうしたんですか」

「いや、ちょっとな。やる気がでる出来事があって」 

「はあ……必殺技名も決まったんですか?」

「ああ、決まったよ」

「そうですか……一体何があったんですかね」


 速水が首を傾げる。

 しかし、それ以上深追いすることはなく、速水の方から口を開いた。


「……ということは、ついにあの炎上サイトを更新するということですかね」


 速水の声からも、少しの緊張が伝わってくる。


「ああ。でも、その前に速水にお願いがあって来たんだ」


 俺は、印刷してきた原稿を鞄から取り出した。


「速水に、最初に読んでほしい」

「え?」


 意外そうな顔をする速水。


「わたしに……もしかして、まだイラストのこと諦めてないんですか?」

「描いてほしいとは、今でも思ってるよ」


 俺は、半ば押し付けるように原稿を渡して言った。


「でも、それとは別に。今回書けたのは速水のおかげだから。読んでくれ、速水」


 呆気にとられたような顔をする速水。


「なんですか、何か気持ち悪いですよ?」


 笑いながら言っているが、ちょっと困惑していることがわかる。

 速水にしては珍しく、困惑しているようだ。


「はは、感動的なシーンでなんてこと言うんだ。ギャルゲーなら絶対イベントスチルあるところだぞ」

「せめてラノベだったら絶対挿絵が入るところと言ってください」


 しまった、台詞間違えた。


「で? これを読めばいいんですね」

「ああ。特に必殺技名には注目してくれ」

「……? まあ、また炎上するようなものじゃなければいいですけどね」


 そう言うと、速水は方向を変えて階段を降り始めた。


「あれ、速水……音楽室はあっちだぞ」

「わかってますよ。でも、アニメ部の部室はこっちでしょ?」


 にっと笑うと、速水は言った。


「今は、こっちの方が優先度高いですから」

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