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夢野萌は考えている

 どうやら、このサイトに『迅雷伝説』が投稿されたのはつい最近のようであった。

 投稿日時は一昨日。

 嫌な予感がしたが、その内容を確認してみた。


「これ……俺が書いていた『迅雷伝説』、そのままじゃないか」


 そのままコピペした内容。

 それが、「如月紡」の名前で投稿されていた。

 しかも、またバカにするようなコメントがついている。

 

 ---------------------

 如月ってる迷作じゃんこれww

 作者まだ生きてたのか、草

 もう鎮火したと思って投稿したのかな?

 相変わらず痛々しい内容だな~~

 見てて不快、というか嫌い

 ---------------------


 そんなコメントばかりである。

 なんだよこれ?

 なんで今になってまた?


「違う……俺じゃない。俺じゃないよこれ」

「落ち着いてください、部長さん」


 夢野が俺の肩を叩いてくれた。


「わかってますよ。これ、パクリ……いや、コピペですね。ただの愉快犯です。誰かが面白がって投稿しただけです」


 小さな声だが、怒気を含んでいるのが分かった。


「気にすることありません。こんなのを面白がるのは、一部の暇人だけです」

「そ、そうか……そうだよな」


 そう言いながらも、俺は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

 これ……もしかしてあいつか?

 前に再開した元同級生。

 速水と一緒にいるのを見られた元同級生。

 あいつの仕業か?


「ええ、だから大丈夫です。それに、未完の小説をただコピペしたところで前と何も……」


 夢野の言葉が止まった。


「あ、あれ?」

「どうした夢野?」

「これ……完結した小説としてアップされてます」


 本当だ。

 完結済みになっている。

 だが、俺の書いたオリジナルは未完のはずだ。

 勝手に続きを書いたってことか?


「えっと、俺が書いたのは……ここだ、ここまでだ」


 自分の見覚えのある箇所までスマホをスライドする。


「……続きがある。この先は……」


 勝手に書き加えられた部分は、酷いものだった。

 最終決戦を迎えた主人公は、あっさりと敵のボスに敗れ、ヒロインは捕まって陵辱される。

 そのまま主人公は活躍することなく、全滅し、バッドエンドで終わっていた。

 あまりにも悪趣味な展開である。


「なんだよこれ……」


 さすがに俺でも腹が立ってきた。

 炎上して、完結させることなく投げ出した小説だったけど……それでも俺は小説を書くのが好きで、これは俺が楽しんで書いていた作品なんだ。

 それに、夢野と……速水が、面白いって言ってくれた小説なんだ。

 それを、バカにされた上に、こんなめちゃくちゃな終わらせ方をされて……。


「……ひどいです……ひどすぎます!」


 俺より先に、夢野がぶち切れた。


「許せませんよ、こんなの! なんとかしましょう、部長さん!」

「お、おう。そんなに怒ってくれてありがとう」


 おかげで、少し冷静になれた。

 自分よりも怒っている人を見ると冷静になるよね。

 夢野のおかげで、心臓の鼓動も落ち着いてきていた。


「でも、なんとかって……どうするって言うんだ?」

「そんなの、決まってますよ」


 興奮気味に、夢野が言った。


「部長さんが書くんですよ。本当の完結編を!」


 うん……そう言うと思った。俺もそうしたい。

 でも、ちょっと待て。


「確かに、こんなことをされて黙っているのは癪だ。俺もなんとかしたいと思う」


 俺はスマホから顔を上げて言った。


「でも、俺が本当の完結編だって別の展開をアップしても、炎上に燃料追加することにならないか」

「……そ、それは……」


 夢野がしゅんと俯いてしまった。

 かわいい……じゃない、申し訳ない。

 俺は、自分の小説をアップするためにわざわざ自分専用のサイトを作っているから、偽者扱いされる心配はない。

 そのサイトは炎上してからというものの、鍵をかけて開いてもいないのだが。

 見るのが怖くなってしまったのだ。

 完全に封印している。黒歴史扱い。

 その封印を解除して、俺が続きを書いたらどうなるか。

 わからないが、また炎上する可能性は高い気がする。

 完結を前に逃げ出した作者が、偽者に対抗するために戻ってきたって、ネットユーザーは面白がって叩くだけなのでは……と考えてしまう。


 しばらく重い沈黙が続いていた。

 俺が何か言おうと迷っていると、夢野が先にポツリと呟いた。


「葵ちゃんに……協力してもらいましょう」

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