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円城紡はわかっている

速水と夢野、ふたりの絡みを見ていたら変な気持ちになってしまいそうだったので、目を閉じて無理やり心を落ち着かせてみる。

 ……よし。なんとか落ち着いてきた。


「でも……夢野さんてやっぱりすごいんだな。あんな面白いラノベが書けるなんて」


 なんとか真面目な顔に戻して、夢野に語りかける。


「どうしたらあんなに面白い小説が書けるんだろう」

「愛ですよ愛。ユメはわたしのこと大好きですから」

「俺が新作書いて、夢野さんに見てもらったら俺に必要なものがわかるのかな」


 速水のことは無視して、夢野に語りかける。


「……はい。そう思います」


 夢野がハッキリと答える。

 無視されて不満そうな速水に抱きかかえられているシュールな画だが、夢野の声はこれまで聞いたことの無いような凄みがあった。


「新作の方は、どれくらい書けましたか?」

「え、その……は、半分くらいかな! ちょっと展開に迷ってて!」


 嘘である。

 本当は一行も書いていない。

 つい、見栄を張ってしまった。


「わかりました……文化祭まであと三週間ほどですが、できそうですか?」

「大丈夫だって! それまでには完成させるから!」


 言ってしまった……実際は、完全に行き詰ってしまっているのが現状である。

 どうしたものかね。


「間に合いますかねえ。前にわたしに見せたようなものじゃ、ユメを失望させるだけですよ?」


 速水が夢野の頬をむにむにしながら言う。

 夢野は抵抗するのを諦めていた。

 くそっ、俺にもむにむにさせろ。


「ぐ……わかってる。なんとかするさ」

「……別に無理して書かなくてもいいと思いますけどね」

「そうはいかないな。速水には絶対、俺の小説の絵を描いてもらいたいから」

「はいはい。がんばってくださいねー」


 このときの、速水との会話を聞いていた夢野の表情が――俺は気になっていた。

 何か言いたげな、複雑な表情。

 俺に向かってなのか、速水に向かってなのかはわからない。

 何か言いたそうにしている、それは間違いない。

 でも、夢野はそれ以上何も言ってくれなかった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その日の夜。

 家に帰ると、ポチっていた『はぴぱら』全巻が届いていた。

 俺は早速自分の部屋に持ち込み、ベッドにダイブして読み漁ることにした。

 ……これ、本当に夢野さんが書いたんだよな? はぁはぁ。

 内容が明らかに過激になっている。

 主役のソルとルナの絡みは、完全に友人同士のそれを超えていた。

 挿絵の際どさも相まって、さらに(エロ方向に)パワーアップしている。

 ちょっとちょっと夢野さん……これはいかんですよ。

 完全にすけべである。

 それにこのモデルが、あの二人となると……もひょー。


 ……なんて最低最悪の感想は置いておいて。

 これ、やっぱり面白い。

 これがアニメ化ラノベのレベルなのか。

 俺の小説だってつまらなくなんかない、面白いんだと自分に言い聞かせてきたが、改めてプロとのレベルの差を実感してしまう。

 夢野は年下なのに、こんなにレベルが違うものなのかと。



『速水があんなイラストを描いてくれるのなら、プロにだってなってみせる!』



 そんなことを吹いてしまったが、急激に自信を無くしていく。

 あああ……なんでこう、調子に乗ったこと言ってしまうのだろう。

 恥ずかしい。

 ベッドに寝転んで、速水の描いたイラストを思い浮かべる。

 今にも動き出しそうな躍動感。

 炎と雷を派手に表現しているエフェクト。

 凛々しい表情の少女。

 完璧だ。まさに俺が思い浮かべている『迅雷伝説』。

 その世界なら、今すぐ書けそうなのだが……。


「あ~~~、ダメだあああ! 新作なんて思いつかねえ!」


 枕に顔を突っ込む。

 自分で考えるとどうしても『迅雷伝説』の類似作品になってしまうし、他のラノベを参考にするとまたパクリ作品が出来上がりそうだ。

 俺はそのまま三十分以上枕に顔を突っ込んだまま動けなかった。

 なんとか無理やり奮起すると、ゆっくりと起き上がり、パソコンを立ち上げ椅子に座る。


「時間もないし……仕方ないか」


 パクリ作品になるよりはマシだろうと思い、『迅雷伝説』と似たような設定で小説を書き始めた。

 でも……。


「なんか……面白くないな、これ」


 駄作になる。

 それが分かっていながら、今の俺にはとりあえず書いてみるということしか出来なかった。

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