森のくまさん
森に一匹のくまがいました。くまには宝物が3つありました。1つは肩から下げている緑のポシェット。底の部分が少し破れていて時々森でひらったどんぐりが落ちることがあるけど今はその穴にちょうどいいまっぼっくりが引っかかっていていい具合になっている。
それと 、赤いシャベル 。上の方が黒くなってきたけどそれが また、味があっていい。3つめは黄色くて丸くて甘いもの。
どうしてもお腹がすくとそれを少しだけ舐めるんだ。けど、舐めていくうちにだんだん白くなってきてしまった。でも甘さは変わらない。むしろ 最初よりも甘くなっているようにも思う。その3つがくまの宝物 。今日も お気に入りをポシェットに入れて森の中をお散歩 。楓の木のトンネルをぬけていくと お日さまの光が一点にあつまっているところがあった。
恐る恐る近づいてみると 小さな家がそこにはあった。小さい家といっても ちょっと小さいといった具合ではなく くまの手のひらとそう変わらないぐらいの家だった。でも その家がなんとも言えないぐらい可愛いかった。壁と屋根は木の枝を丁寧に重ねてあって 隙間は少し大きめの葉っぱがかさねてあった。
「ぼくは はいれないだろうなぁ 。でも 最近少し痩せてきたし はいれるかもしれない。
「よし 、やってみよう。」くまはそう思うと大きな葉っぱの重なったところから 鼻を入れてみた。鼻が はいった。でも、そこからは無理だった。今度は 息を止めて頑張ってみたけどやっぱり駄目だった。今度は 耳からやってみたけど同じだった。
「駄目か。」「素敵なのになぁ。 ぼくのお家のイメージにぴったりなのになぁ。」諦めて 引き返そうと歩き始めた。
ちょっと 振り返ってみてみると やっぱりかわいい。太陽の光があたっていてそこだけきらきら光っていた。くまは あわててまた引き返してきた。「諦められない 。でも、中には はいれないし」くまはおうちの前に座って腕組みをしながら考えた。
しばらくして くまは立ち上がりぽんと手を叩いた。
「おうちにしないで帽子にしょう。こんな かわいい帽子誰も持ってないぞ。歩くたびににきらきら光って 」「うん そうしょう」
おうちは きらきら光って素敵でした。ただ さっきより少し大きな葉っぱの位置がかわったような気がしました。でも そんな小さな事全然気になりませんでした。それよりもさっきは気がつかなかったんですが 葉っぱの所々に小さな真珠がついていてそれが光って余計にきらきら光っていました。その真珠 よ〜くみると 雨粒でした。そういえば 昨日雨が降っていた事を思い出し くまは ぽんと手をたたきました。すると 葉っぱの上にならんでいた真珠が転げ落ちました。あわてて受け止めようと手で受けました。だけど真珠はくまの手のひらの上できえてしまいました。いえいえ 消えたのではなく くまの手のひら全体にひろがって それが お日様にあたってきらきらしていました。くまは しばらく自分の手のひらをながめていましたが そのあと ますますそのおうちが欲しくなりた。
くまは きらきら光る手のひらのことを忘れるようにそっとおうちを持ち上げてみました。ところが びくともしません。くまは さっきよりも少し力をいれて持ち上げてみました。でも だめです。もうこうなったら遠慮はいりません。くまは 全力で持ち上げました。
『どっすーん』くまは しりもちをついてしまいました。よし もう一度
でも 何度やっても同じでした。違うのはくまのお尻がどんどん痛くなって少しおさるのお尻のように赤くなっているだけでした。
「よし、最後だ」くまはおうちに手をかけてひっぱりました。
『どっすーん』くまはお尻だけではなく背中も打ってしまいました。
『ころころ』くまがしりもちをついたとたんポシェットからシャベルが落ちてしまいました。
「いい事思いついたぞ このシャベルで掘って もって帰ろう」そう思うとさっそく くまはシャベルでおうちのまわりを掘りはじめた。 しかし おかしな事に掘ろうと思ってシャベルを地面に押し込み力を入れても ほんの少ししかほれなかった。うーんと力をいれてみました。やっぱり同じです。それどころか そうしたら そうしたらくまの大事な宝物のシャベルの先がかけてしまいました。
「ぼくの大切なシャベルが‥」そりゃ 先が少し黒くなっていたけどかけてはいなかった それなのにそれなのに くまの目から涙が一粒こぼれた。「つめたい」と小さな声が聞こえました。
「だれ?」「だれかいるの」くまはあたりをみわたしました。でも だれもいません。
「ぼくたちのおうちをこわさないで」また 小さな声が聞こえました。
「え だれ?どこにいるの」くまは もう一度あたりをきょろきょろ見渡してみました。でもだれもいません。「おかしいなぁ」と言ったとたん「ここだよ」「きみの足の上」と聞こえてきました。
「え。」くまはあわてて自分の足の上をみました。でもだれもいません。「ぼく しりもちついて目がおかしくなったのかな。」
「よくみて」「ここ」「きみの足の親指の上」と 小さな声。
「親指の上?」そういうとくまは自分の足の親指のところをじっとみました。すると なんか小さい黒いものが手をふっているように見えました。よーく見てみると それは ありでした。
「ぼくをよんでいたのは君かい?」「そうだよ」さっきからずっとよんでるのに全然気づいてくれなくて もう声が出なくなるかと思ったよ」
「ごめんね」「全然気づけなくて」「いいよ。気づいてくれてよかった。じゃ ない。」ありは首をふりながら そう言った。「そんなことより ぼくたちのおうちをこわさないで。いくら 頑丈につくったとはいえ これ以上 さわられるとこわれるよ」
「ぼくたちのおうち?」「きみだけじゃないの?」
「違うよ。ぼくの友だちがいっぱいいるよ。」
「どこに?」
「そこの葉っぱの中をあけて中をのぞいてごらん。ただし あんまり近づかないでね。みんなが 怖がるから」そう言われて くまは そっと葉っぱをあけ 少し遠慮がちに中をのぞいてみました。すると 中には ありたちがいっぱいいました。ただ みんな 体を寄せ合ってふるえているようでした。
「あんなにふるえて きみの友だちは風邪をひいているの?」くまがありに尋ねると
「違うよ。きみがおうちを壊しそうなんで 怖くてふるえているんだよ。」「ぼく 壊してないよ。こんなすてきなおうち こわすわけないじやないか。ぼくの宝物にしょうと思ったぐらいすてきなのに」くまの声はすこし大きくなった。
「こわそうとしたよ」「ぼくたちのおうちをを持ち上げようとしたり掘ろうとしたじゃないか。そのせいでぼくたちのおうは少し傾いててしまったんだよ。」「きみがおうちを持ち上げようようとしたり掘ろうとしていた時 中にいたぼくたちは最初何がおこったかわからなかったんだ。おそる おそる窓からのぞいてみたら きみがおうちを壊しているのが見えたんだ」みんなは震えるし だから ぼくが きみに言いにきたんだ」
「ぼくが おうちを持ち上げたりしたから」くまは 小さな声でそういった。
「そうだよ。ぼくたちがこのおうちをつくるのにどれだけ苦労したか。森の中から木の枝をとってきて それを重ねていって葉っぱで窓もつくって 葉っぱをつけるだけではすぐに風が入ってくるので一年中色が変わらない緑色の葉っぱを探してきて なんで緑色か わかる 緑色の葉っぱは破れにくいんだよ。その 葉っぱに木のつるをつけて木の枝でとまるようにしたんだ。 それだけではないよ。風が吹いて飛ばされたら大変だから地面の下は木の根っこに木のつるを巻きつけて動かないようにしたんだ。ほんとに大変だったんだ。それなのに きみは ぼくたちのおうちを壊そうとしたんだ」ありはありったけの声をだしてくまにそういった。
くまがさっき シャベルで掘ったところをみると確かに木のつるが何本も何本も巻きつけてあった。その 量をみると どれぽど大変だったかが わかる気がした。
「ごめんね。」「ぼく きみたちのおうちを‥‥」「ごめんね」「ぼく ほんとにこのおうちがすてきで‥だから‥ごめんね」くまは小さな小さな声で でも心をこめて謝った。窓からのぞいて中にいるありたちにも謝った。「ぼく どうしたらいい?」くまがありに尋ねると ありは 「じゃ まず おうちをまっすぐに戻して。優しくだよ。」
「わかった」くまは 少し傾いたおうをそっとそっと まっすぐにした。「次は きみが掘った土を元に戻して」そう言われるとくまはあたりに散らばった土を集めておうちのまわりに優しく置いていった。
「これでいい?」
「いいよ。」「後はぼくたちが治すよ。」
「え、 全部治すよ。」と くまはあわててそういった。
「後は地面の下の木の枝を治すから きみには 無理だよ」
「ごめんね」「きみたちの宝物を」
「このおうちはぼくたちにとっては宝物だけど。きみが思っている宝物とは違うんだ。」
「ぼくのとは違う?」
「ぼくたち ありは 寒い冬の間を乗り越えられるように 食べ物を集めて地面の下で暖かい春を待つんだ。でも 地面の下は真っ暗で何にも見えない。だから時々 地上の景色も見れるようにこのおうちをつくったんだ。」
「そうか。そうだったんだ。」「ぼくは このおうちがあまりにも素敵だったから‥‥」
「そんなに素敵」と さっきとは違う声が下の方から聞こえてきた。みると おうちの中からありたちがが出てきてくまを見上げていた。
「素敵さ。こんなすてきなおうち見たことないよ。 だから ぼく‥‥」「まだ ほしい?」
「え そりゃ ほしいけどきみたちの大切な宝物だから‥ぼくの宝物にしたらだめなんだ。だから もう壊したりしない。」
「そんなに気にいってくれたなら 遊びにきてくれたらいいよ。それから 優しくなら触れてもいいよ。」
「ほんと いいの。ぼくの宝物になった」と くまは手をたたいた。
そのとたん 数匹のありがひっくり返った。
「ごめん。大丈夫?」
「大丈夫だよ。ぼくたちはきみと違って小さいから手をたたくのもやさしくね」「それからぼくのじゃなくて ぼくたちの わたしたちの 」
「そうか。そうだね。 みんなの宝物だ。 」「ぼくの宝物。 ポシェット シャベル そして 黄色くてあまくて丸い物」くまが甘くて丸い物をみてみると「あれ 丸いのが半分になってる」 「さっき しりもちをついたときに 半分になったんだ」「ありさんたち ぼく おうちをこわしたおわびに これ どうぞ。」
「それ なぁに?」「あまくて ほっぺがおちそうになる食べ物だよ」
「ほんと ぼくたち あまいの大好き」といって くまの手のひらにのっている あまい物を少しなめてみました。「ほんとだ」こんなに美味しいのはじめてだ。」
「でも おうちの中にははいらないよ。」「どうしょう」
「じゃ ぼくのポシェットのひもをおうちにかけて その中にいれておけば いいよ。このポシェット 実は穴が空いているんだ。だからここから はいれるよ」
「だめだよ。くまさんの大切な宝物なんだから。それにそんなことしたら くまさんの 甘いのを入れるところがなくなる」
「大丈夫 あるよ。」そういうと くまはぱくっと甘いのを口の中に入れて食べてしまった。「あー あまい。おいしい。もう とけちゃった。」「あ!なくなちゃつた」 「ごめんね。ぼくたちのせいで」
「大丈夫だよ。ぼくは冬がきたら春まで寝てしまうから。」
「くまさんの宝物シャベルだけになっちゃつた。」ありがそういうと くまは「ぼくは このシャベルがあれば いいんだ。春まで寝る時に穴を掘るんだけど 手が疲れたらこのシャベルを使うから これがあれば大丈夫だよ」「それに ここにくれば ぼくの宝物ちゃんとあるんだから」
「わかった。くまさんの宝物ちゃんと置いておくからね」「くまさんのポシェットもとばされないように石でおさえておくね」
「ありがとう。お願いするね。それと あのね ぼく ありさんにお願いがあるんだ。」
「なぁに。ぼくたちにできること?」 「うん。ぼくは冬がきたら春まで寝てしまうから冬が見れないんだ。だから 春になってまた 逢えたときに 冬ってどんなのかおしえてほしいんだー。」と 少し恥ずかしそうにくまが言った。
「なんだ。いいよ。ちゃんとおぼえておくね。」と その時 北風が吹いて くまさんのポシェットが少し揺れた。
もうすぐ 秋の終わりです。