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古代星間戦争と私

作者: 鈴木美脳
掲載日:2020/01/09

 確かに私はすぐに涙を流します。

 その理由はそれは、説明がなければわからないでしょうね。


 昔、星々の間で戦争がありました。

 愛する誰かを守るために、多くの人が死んでいった。

 どの勢力についてもそうでした。


 どの攻撃も、何かを守るために行われました。

 先手を取られることを恐れて、だから先手が取られた。

 特別な悪意なんて見当たらなかった。

 特別な愚かさもまた見当たらなかった。

 悪意や愚かさからあの戦争が起きたのではなかったのです。

 善意や賢さから起きたのでもまたなかった。


 なぜあの戦争は起きたのでしょうね。

 なぜ終わらずに、あれほど長く続いてしまったのか。

 根本的な原因は、各所の実力が拮抗してしまったことでした。

 感情的な要因ではなく、純粋に戦略的な必然性で起こったのです。

 実力が拮抗した理由は、新技術の発展でしたが。

 その技術が発展した理由は、自然現象に帰するべきです。

 私達は運命で戦争をして。

 誰もそれを止められなかった。


 そんなはずはないと言う人達もいます。

 優れた見識によって努力すれば戦争は避けられるはずだと。

 それは必ず、あの戦争を知らない人々の言葉。


 私はあの戦争の間じゅう涙していました。

 多くの死や不幸が悲しくてではありません。

 あまりにも深く美しい情緒を山程たくさん見たからです。


 戦争の時代は、英雄達の時代でもありました。

 そして誰もが英雄だった。

 私達は本当に追い詰められて。

 自分はもう助からないと思った人々は、残る人々のために尽くした。

 逆境は精神を鍛えるのでしょう。

 ですが英雄達は死んでいきます。


 とても頭のいい人々が星の数ほどいました。

 限りなく人情に厚く情緒の深い人々が星の数ほどいました。

 だからそこは感動にも満たされていた。

 しかし戦争は終わらずに続いて。

 あまりにも多くの人々が苦しみの中で死んでいった。


 私にとって永遠の友人がその中に多くいます。

 良かれ悪しかれ、幸か不幸か、私は戦いを生き残った。

 戦争はついに終わったのです。


 平和な時代になりました。

 ですがそこは、物質的財産を奪い合う場でもあった。

 愛のための死が畏怖される時代は終わって、欲のために生きることが人の定義にまでなった。

 でもその感覚は、あの戦場を戦った私には理解できない。

 私達は、情緒的な共有だけを尊んで生きてきたから。

 歌にも歌うでしょう?


 ♪ Imagine all the people ♪

 ♪ Living life in war ♪


 協力しなければ立ち向かえない危機が訪れて。

 私達は手を取り合って力を尽くした。

 自分さえ良ければいいという発想を振り返る人は稀にしかなく。

 精神の尊厳こそをほとんどの人が愛着した。

 打算やその競争を忘れることができたのです。

 生まれの不運も忘れられました。


 そうして私は、人情だけを重視するようになった。

 それを重視してみればよくわかるけど、それは知的な世界です。

 情緒は本当の意味で知性に基づく性質ですよ。

 社会的な情緒的知性だけで個々人の価値を測ることもできます。

 すると、我欲に生きる邪悪な人は、いかに権力者でも塵埃にしか見えない。


 戦争に生きた私達は、そのように価値観を徹底させてしまいました。

 だから人情には特別に敏感で。

 自然な人情に備わった自然な良心を目撃するたび、簡単に涙あふれる。


 情緒的知性は万能の道具だと私は思います。

 他に本当に必要なものは、そこに自然とついてきます。

 逆に他の何を追っても、本当に価値あるものにはたどりつかない。

 生命はどこまでも進歩すると始めから約束されてます。


 世間とは人と人であり。

 そのすべては夢。

 星々に起きた戦争の歴史がそう私に教えました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編の中に、 みごとに世界と世界観その他が、 完成されていますね。 良作と思います。 [一言] 面白かったです。(*´▽`*)
[良い点] 古代の星間戦争を見て、それを語れる人物というのはそれだけで超常の存在だなと思うので、そんな人が人間の情緒や心について考えてると思うと、変わらない考え方の基本がそこにあるんだなとしみじみしま…
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