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噂の彼女はフルボーグ ゲーマーOL異世界転生記  作者: 弩理庵
第二部 ワグナーの脅威編
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少女達と異界人 1

「んで、バルロイはお悩み中のお友達は放置しといていいの?」


「ん?・・・チェニスのことかそりゃ?」


「バルロイにチェニス以外に友達いるかどうか私は知らないって・・・」


「俺は先に警告はしてる。それを聞かなかったのはチェニスだからな

 偶にはそういうことで悩むのもいいんじゃないのか?

 あいつも少し勘違いしてるところがあるからな

 自分の手腕ではなく王族という後ろ盾があってこその結果だってのを

 いい薬になるだろうから、一人で考えさせる事にするさ」


「ならそれはいいや。じゃあ、私が一番個人的に気になってる問題

 あの子達は、今後どうしたいって考えてるか分かる?

 私にはあんまわかんないんだよね、なんでバルロイの意見が聞きたい」


 わからないってか、まあ嫌われたか怖がられただろうなー・・・って不安か

 聞けばいいけど聞きに行ってひきつった笑顔で話されるのも怖いんだよね

 悲鳴でも上げて逃げられたら、結構ダメージでかいだろうし・・・


「まあ、俺もユミアとしかあまり話さないので殆ど直観だけどな

 ユミア、サーラ、パノンはここを離れるんじゃないか?

 ユミアはニルン村への蟠りを完全には捨てきれないだろうし

 あの子は兵隊とかよりお客相手の仕事のほうが向いてるだろうな

 煌めきのランプ亭でよけりゃ俺が口きいてもいい

 サーラとパノンはあんまり話さないからよくわからんのだが

 あの子達も兵隊には向いてない。まあ、これはユミアもなんだが

 三人ともザロスに武器は向けたが、結局殺さなかっただろ?

 武器を向けるのに迷うやつはダメだ。武器を向けるってのは

 覚悟をもってから相手に向けないと逆に自分が死ぬこともある」


「なるほどね・・・まあ、みんな元々ただの村娘だもんね

 で、アエルとレミリアは?」


「アエルは兵隊を続けるかは分からないが、この村には残るだろ

 この村は元冒険者が多いだろ。で、そういう奴らは結構な割合で

 孤児から大人になったってやつがいるんだよ

 まあ、冒険者は登録して依頼さえ熟せれば誰でもできるからな

 孤児でもきちんと結果を出せば金になるし生活できるわけだ

 孤児経験者は自分がどういう扱いをされたら嫌だったって経験がある

 だからアエルにとっては、理解しやすい住人が多いってこった」


「なるほどね、環境的にはアエルには合っているってことか」


「レミリアは聞くまでもないだろ?

 あれはレイラに死ぬまで付いていくだろな」


「なんでよ? 姉妹で仲良く新しい人生って普通考えるでしょ?」


「レミリアは正直よくわからん。凄すぎるんだよな色々と

 ただ、あいつはなんていうか・・・芯がある

 何かしたいこととか、興味があることの為なら、何でもする

 それにレイラと一緒にいて強くなれば、姉になんかあったとき

 助けにいけるだろ。あの子はたぶんそういう考えで先を見るんじゃないか」


「確かに末恐ろしい15歳だしね・・・

 いくら戦術リンクから知識が得られるとはいえ

 初見でヘリを飛ばすとか、拳銃で落下する敵を打ち落とすとか

 挙句に物事への興味とかアプローチが固定概念に囚われてない

 私個人としてはあの子は嫌いではないので、そこはいいんだが

 兵隊やってると体がね・・・あの子はがんがん昇級しそうだしね・・・」


 バルロイがレイラの升に酒を注ぐ

 レイラは無言で顔だけ動かして礼をしてちびりちびりと飲む

 バルロイは酒に鮭とばを浸して食べると美味いと感じたらしく

 升酒の中に鮭とばを浸してボンネットに置いてから


「ま、あとは直接本人らに聞け

 あいつら心配してたぞ、まだ下にいるだろうから行ってこい」


「・・・あんまり気が進まないけど、まあ・・・そうだよね

 わかった、行ってくるわ。あんま飲みすぎないように」


 残りの酒を置いて、七輪を片付けてから地下へと向かう

 この入り口は今後、基地への入り口には使えないな

 非常時だったとはいえ、村人全員が存在知ってるもんな

 新しい入り口考えないとだな・・・タイゾウすまん、仕事増えるわ

 既に殆どの村人が退去してシャッター等が展開していないので

 面倒な開閉作業なしに避難所に到着する

 数組の村人が、寝袋で寝ているだけの閑散とした広い空間の隅で

 ハラペコ小隊の屯っているテーブルだけがやけに目立つ


「・・・何してるのあんたら・・・」


 ソファーの上に、服をはだけた状態でレミリアが汗だらけで横たわっている

 それを呆れた眼差しで見下ろしていた4人が、私に気付いて振り返る


「ランバートン様、おはよう御座います。御加減は如何ですか?」


「ただの疲労だから寝たから大分良くなったかな

 心配かけて申し訳ない。まあ、私でも疲れるし休みはいるってことだ

 で、そこでおへそ丸出しで転がって唸ってるレミリアはどうしたの?」


「もう食べられない・・・幸せ・・・でもくるしい・・・うーっ・・・」


「あの、誕生日で出たケーキ・・・一人で丸々1個食べて・・・

 残しておけばいいのに、全部食べ切ってこの子・・・

 スカートを止める金具みたいなの、はまらなくなっちゃって・・」


 私はおもいっきり噴き出して、笑い転げそうになりかけて辛うじて堪える

 スカートのホック外して食べてたとか・・・どんだけ腹部肥大してんの

 てかケーキ丸々一個?・・・まさか、アルベルトやらかしやがったか!?


《アルベルト、念のために聞く。レミリアに出したケーキはどんなの?》


《チョコレートケーキでございます

 中はココアクリームと生クリームのダブルクリーム層を設けまして

 スポンジにはたっぷりと、濃厚なチョコレートソースをしみこませた上で

 表面はオレンジの香りを効かせたチョコレートコーティングで仕上げました》


《・・・カロリーの塊みたいなやつね・・・で、大きさは?》


《レミリアの誕生日ということで、8号サイズをご用意しました》


《直径24センチの10人用を一人で食べたのレミリア!?》


《はい、美味しそうに喜んでお食べになられました

 レイラお嬢様の誕生日の風習に倣ってお出ししたのですが

 喜んで頂けて執事としてとても嬉しく思います》


 アルベルト、ガチでやらかしやがった

 あの罰ゲームを人間の誕生日の風習と本気で勘違いしやがった

 てか、8号だ?? 満腹はない仮想体験ですら、あのサイズはきついぞ

 こいつあれを、現実の満腹がある状態で、一人で食べたの??

 まさか・・・まさか???


《アルベルト、まさかとは思うけど・・・その後のアップルパイも?》


《はい、それはそれは美味しそうに喜んでお食べになりました》


《・・・わかった・・・手配と進行は有難うなんだが・・・

 あのサイズを一人で食うのは、あれは誕生日を利用した嫌がらせよ

 私の国の風習では、普通にカットしたのを食べるか

 一人用の小さいサイズか、せいぜい2号か3号のサイズよ・・・・》


《・・・つまり・・・ボンジリ様やリッパー様が

 レイラお嬢様の誕生日に出していたあのサイズというのは・・・・》


《誕生日にかこつけた、祝いもんだから食えないってことは無いよな?

 という嫌がらせ。全員で誕生日にそれをやり返す悪習をしてたのよ・・・》


《・・・・・・・・・》


《アルベルトのミスじゃない、私がそこらを伝えていなかったのが問題だ

 サポートロイドのお前に人間の風習なんて説明しなきゃ理解できない

 特に主が実際に目の前でしてたことが、正解だと勘違いしておかしくない

 これはアルベルトに責任はないけど・・・レミリアの体重はピンチだろうね》


《・・・・・・・明日からの訓練プログラムに、長距離走を組み込みます》


《うん・・・このままだと、デブリアになっちゃうから、宜しくね》


 アルベルトとの通信を切って、全員に説明をする・・・気が重い・・・


「あー、えーとね。以前、私の誕生日でやった悪ふざけをアルベルトが

 勘違いして、正式な習慣とか風習と思い違いしちゃってね

 で、まあ・・・本来は10人用以上のサイズのケーキを出して

 レミリアがそれを一人で食べた挙句に、追加のパイまで食べたので

 まあ・・・食事も出たんだろうし・・・12人前とか食べた計算になる

 で、チョコレートケーキのカロリーが4000カロリーを超える臭いのと

 食事とアップルパイでいくらかなんてもう想像つかないんだけど・・・・

 えーと・・・たしかレミリアの年齢の必要カロリーが・・・2200くらいか

 でトータルでたぶん5000〰6000とかあるとして・・・・

 あのね、レミリアね、この夕食で 3日分近い食事と同じカロリーをね

 この夕食だけで摂取しちゃったのよ・・・つまり、9食食べたのと変わらない」


 4人が口を押えて机につっぷし、ぶふっ だの ぐふっ だの

 必死で笑えを堪えて耐えているのがわかる

 当のレミリアはそれどころではなく、額に脂汗を浮かべて、唸っている


「明日から訓練にダイエットプログラムをアルベルトが入れてくれるって

 ここ数日で、合計で2日以上避難して村の畑も手入れがいるだろうからさ

 訓練プログラムで農作業支援も入れてもらうから、それで体力消耗しなさい

 と言いたいところだが・・・・」


 ソファーに腰を下ろして、人数分の烏龍茶を取り出して配る

 食いすぎならこれが一番マシだろう・・・油分解するらしいし


「ワグナーの件がほぼ片付いたし、貴方達の身を脅かす脅威が

 ほぼ排除されたといってもいい。よって除隊したい者にはこれを許可する

 ここを移住先として指定するなら、ここでの仕事についてはガフ君に頼んで 

 何かしらの仕事が出来るように手配する。見ての通り大都市ではないので

 希望通りの職業につけるかは分からないが、それは理解して欲しい

 他の地域への移住希望者は、バルロイに相談して行先を考えるといい

 既に決まっているなら、そこでの生活や仕事についても、バルロイと

 相談して決めていけばいい。申し訳ないが私はこの世界について疎いので

 そこについては力になれないが、そこも理解してほしい」


 なぜか、場を重苦しい沈黙が支配する

 いやまって、だってしょうがないじゃん?

 この世界にきて4日だよ? それで全手配はできないって

 いやバルロイがやってくれるよきっと、大丈夫だって・・・たぶん

 そんな将来不安みたいな重苦しい沈黙で返されると、困る・・・


「いやほら、あの、えーとあー・・・なんだ

 バルロイはああ見えても、なんかいろんな所に伝手があるみたいだから

 仕事の斡旋とか口利きはたぶん、皆が思ってるより悲惨ではないと思うよ?

 ほら、それにあれだ、ほら、上にいるえーとなんだ

 ほら、チェイマンさんもきっと、手かしてくれるって・・・たぶん・・・

 だからひどい扱いのところで農耕馬みたいに働かされるとかそういう事は

 たぶんないって! てかそうなったら私がシメにいくから大丈夫だって!」


 必死で取り繕ったのだが、どうも全くもって説得力がなかったらしい

 ユミア、パノン、サーラの3人は、遂には嗚咽を漏らして泣き始めた

 ・・・すまんね・・・頼りにならん保護者で・・・

 私はこの状況を打開するための言い訳を必死で考えたが

 何一つ、案どころかその欠片すら浮かばず、沈黙するしかなかった・・・











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