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噂の彼女はフルボーグ ゲーマーOL異世界転生記  作者: 弩理庵
第二部 ワグナーの脅威編
83/131

祝宴

 アルベルトから、避難している村人に

 アルムの村に侵攻していたワグナー軍の撃退に成功した事が伝えられると

 村人は歓声を上げて村に迫っていた脅威が取り払われた事を喜んだ

 次にアルベルトから、明日午前10時までにここから退去する事が

 伝えられると、村人は明らかに落胆した様子になったが

 今夜は村の安全が確保されたことと、レミリアの誕生日を兼ねた

 祝宴にすることが伝えられると、また歓声を上げた

 レミリアは予想外の発表に、目をぱちくりさせて驚いていた

 アルベルトは事前にこの準備をしていたらしく

 いつもの食事よりも遥かに豪華な食事が室内に運び込まれ

 オリマー、ジーン、ホリイ、アルベルトの手によって

 各テーブルへと配膳されていった

 昼食までの、自分が好きなものを取りに行くスタイルではなく

 一皿一品タイプの食事が、ワゴンから次々と配膳される

 ユミア達ハラペコ小隊は手伝おうとアルベルトに近づくと

 今日は貴方達も祝宴を楽しむ立場ですよと、断られ

 室内の奥まったところにセッティングされたテーブルに案内された


 ハラペコ小隊の面子と、ガフ、バルロイ、ザロス、チェイマンの9人

 それと聖獣様の1匹は、大き目のテーブルを二つ並べた席に座っていた

 避難所の最も奥まったところに設けられたその席は

 バルロイの魔法により周囲に声が伝わらないようになっており

 全員がくつろいだ状態で食事・・・とはいかなかった

 ユミア、パノン、サーラ、アエルに対して

 チェイマンが実は第二王子であると説明がなされた瞬間

 4人は彫像のように固まり、まともな会話も食事も行えなくなった


「今の私はチェイマンだ。王族に対しての礼節を持つ必要はない

 ただの平民として接してくれればいい。そう固くならないでくれ」


 そうは言われても、何か失礼な事をしたら不敬罪になるのではないか

 また王族なんて立場が上の人に何を話していいのやら? と

 4人は必死に笑顔を浮かべようと努力して、ひきつった笑みを浮かべ

 フォークとナイフを同時に動かして皿に音を立てる事しかできなかった


「チェイマン様、この後ワグナーってどうなるんですか?」


 王都から一緒に行動している所為なのか

 また持ち前の天真爛漫な性格のためか

 チェニスに臆せずに話しかけ

 以前の居住地の領主を爵位も付けずに呼び捨てにして質問した


「王国を裏切り帝国との内通。聖獣様と聖鋼の獣車の強奪未遂

 レイドック領への2度に渡る越境と武力侵攻

 ワグナー家の取り潰しは確定だ。腰巾着の血縁貴族も同じだろうな」


「これがあるから、貴族の揉め事はやなんだよな・・・・ったく

 馬鹿な親がやらかしただけで、何も知らない子供も巻き添えを食う

 かといって放っておけば、お前の親は国に殺されたと炊き付ける

 奴が現われて、後に憂いを残す可能性もあるから無視もできない」


「バルロイの言う通りだ

 私も女子供はあまり厳罰が下されないようにと働きかけはするが

 罪が大きすぎて私の進言でどこまで効果があるのやらだ・・・」


「しょうがないのかなー・・・できれば軽い罰で済むといいんだけど

 でも無理ですよね? んでもって、私達で何とかも出来ないし

 ランバートン様もこの件では、知らんとか言って関わりそうにないし」


「そういえば、レイラはどうしてんだ?」


「あれ? バルロイさんとチェニスさん知らないんですか?

 一緒に出かけて戻ってきたから知ってるとばかり思ってたのに」


「いや、ランバートン殿は戻ってきてすぐ別れた」


「あれあれ?? アルベルトさーん、ランバートン様知りません?」


 タイミングよく、次の料理を持ってきたアルベルトにレミリアが聞く


「レイラ様は現在、お休み中で御座います

 こちらにこられて4日、まともにお休みを取ってらっしゃらなかったので」


「んー・・・んー・・・なんか変? ランバートン様ってこういう時

 無理してでも顔くらいは出すよね? なんかおかしいですよ??」


「そう申されましても、既にお部屋でお休みになられましたが・・・」


「戦勝記念なんでしょ? 私の誕生日祝いなんでしょ?

 主役の一人だし一緒にお祝いしたいし、少し顔出しとか無理ですか?」


「一応、問い合わせしてみますが・・・」


 アルベルトの先程からの態度が、何時もと違うので皆違和感を抱えていたが

 レイラのここ数日の動きは皆が知っているので、否定もできない

 だがレミリアだけは食い下がった。何となく違うと勘が言っていたからだ


「・・・問い合わせを致しましたが、現在既にメンテナンスに入られています

 レイラ様は既に睡眠状態で、グーデリアン殿が現状対応は不可能と申されました」


「そうか、分かった。レミリア、もうその辺にしとけ」


「え? なんでバルロイさん??」


「アルベルトさん、呼び止めちまって悪かったな」


「いえいえ、問題ありません。それでは他の方の配膳もありますので・・・」


 バルロイは料理に視線を落とし、ナイフを動かしながら


「レミリア、今は素直に好意を受け取って楽しんでおけ

 明日か明後日あたりにはレイラも出て来るだろよ」


「・・・・・・分かりました」


 その後の食事は、あまり会話は弾まなかったが料理は美味かったらしく

 レミリアが浮かない表情をしていた以外は、他の面子は満足気な

 表情で料理を堪能していたのだが、次第に疑問の表情が浮かぶ


「バルロイ、朝食や昼食より、何か量が少ない気がしないか?」


「そういやそうだな・・・なんか夕飯にしちゃ物足りないな」


「それとだなバルロイ、私は何時になったら酒を飲めるのだ?」


「チェニス様、この部屋では飲酒は禁止事項になってます」


 ユミアが申し訳なさそうにそう告げると、チェニスの顔が絶望に歪む


「な・・・なぜだ・・・」


「飲酒は喧嘩や混乱の引き金になる可能性があるということで

 避難エリアでは一切の飲酒行為が禁止になってるんです・・・」


「正しい判断だな。これだけ快適な空間で十分な飲食が確保されている

 その上、寝具も全員に配布されて不満もない

 酒を出さないでも数日なら村人の不満は爆発しない

 出して酔っ払いの喧嘩が起きるリスクのほうが大きいからな」


「アルコールがほとんどないお酒ならありますので、そちらは如何でしょう?

 ノンアルコールビールって飲み物なんですが、村の人には結構人気なんですよ」


「では、それを頂戴しよう」「少し御待ち下さい」「ユミア、俺のも頼むわ」


 ユミアが席をたって何処かへと走っていく

 恐らくノンアルコールビールを取に行ったのだろう


「ところでガフ、お前さっきからずーっと大人しいが、何かあったのか?」


「ちょっと眠いんです。僕もここにきてからあんまり寝てないんです

 アルベルトさんは大丈夫だから寝てくれって言ってくれるんですけど

 やっぱり、レイラさんとか村の皆のこと気になっちゃって・・・・」


「あー、そりゃ悪かった。そうだよな、王都にいってるときなんざ

 お前たぶんずっと起きてたんだろ? そりゃ眠いだろうな」


「起きていたって何もできないから、ちゃんと寝た方が良いんですけどね

 不安になったり、変な事考えたりして横になっても駄目でした

 僕は何時になったら、レイラさんやバルロイさんみたいな

 立派な大人になれるんだろ・・・村長として何も出来てない」


「レイドック男爵、バルロイを見習うのはやめたほうが良い

 この男を見習って行き着く先は婚期を逃した遊び人だ」


「そんなことは無いのでは? バルロイ様であるならば

 嫁を募集していると噂を撒けば人が殺到すると思いますが・・・」


 あまり自主的に喋らない、ザロスが珍しく口を開く


「本人がその気がないのに募集をしても意味はないだろうな

 バルロイの場合は実際には、婚期を逃しているのではない

 今でもいくらでもチャンスはあるが、本人が興味がないだけだ

 結婚より自由と好奇心を優先した結果の寂しい老後が待っている」


「言ってくれるな・・・しかしある程度事実なので反論もできないか

 まあ、結婚してもいいって思える女が居ないってのもあるがな」


「そうか? お前の身近には魅力的な女性が多いと思うのだが?」


「誰だよ? レイラとか言うなよ・・・俺の人生が終わる」


「ランバートン殿は魅力的だとは思うが、確かに身の危険もあるだろうな

 しかし、レミリア嬢はどうだ? 知的で行動的でお前の好みに合うだろ?」


「へ? 私???」


 突然話題を振られたレミリアが、メインのフィロステーキをくわえたまま

 色気もへったくれもない表情で会話に参加する


「・・・まあ・・・その、なんだ・・・顔以外のな

 身体的な特徴が好みに合うかどうかというのもあんだよ・・・」


「バルロイさん、それどういう意味ですか!!

 私がまだ発育途中なのを無視して現状だけで言ってますか!!」


「そうか。バルロイが興味がないなら、私がレミリア嬢に

 アプローチしても良い訳だな?」


「本気かチェニス?」「は?? え?? 王族ですよね??」


「私は王位継承権も既に放棄しているし、どうせ政の道具としての

 婚姻が待っているわけだ。そういうのは私も好かんのだよ

 ならばそうなる前に、自分で未来を決めるのも悪くなかろう?」


「これあれですよね? 私の誕生日だからサービス発言ですよね??

 てか自分で言うのもなんなんですけど、私みたいな変わり者とか

 絶対やめたほうがいいですよ! 間違いなく苦労しますから!!」


「本人が自分を珍獣だと認めてるってのもすげーな・・・」


「ちょっと珍獣ってなんですか珍獣って!」


「私としてはだな、身を挺して私を守ってくれた時のあの真剣な表情

 それに臆する事もなく空飛ぶあの乗り物を楽しげに操縦してたあの度胸

 全てとても魅力的なのは事実なのだよ。まあ、身分があるので

 そう簡単に自分の思い通りにいかないのは分かってはいるがね」


 そこに運悪く、ユミアが大量のノンアルコールビールを抱えて帰ってくる


「お待たせしました。色々種類があるのでどれがいいか分からないので

 とりあえずもてるだけもってきま・・??・・あれ? 何かありました?」


 事情を知らないユミアは、よいしょよいしょと缶をテーブルに並べる

 妙に焦った妹、呆れ顔のバルロイ、先程と変わらぬ表情のチェニス

 なぜか死んだ魚のような目をしているハラペコ小隊とザロス

 話を聞かずに舟をこぎかけてハリネズミに顔だけ支えられてるガフ

 なぜか帰ってきたら、このような状態になっていた


「・・・レミリア、あんたまた何かしたの?」


「お姉ちゃん酷い誤解だよそれ! 私なんにもしてないよ! 

 お肉食べてたら、チェニスさんが私にアプローチしてもいいとか

 なんとかいいだして、私だって意味わかんないだよ!?」


「いや、私がレミリア嬢を好ましく思っていると言っただけなのだが

 何故かこのような有様になってしまった」


「・・・それどーいうことよ! 何、私あんたに婚期まで抜かされるの!?

 しかも相手王族!? ちょっとあんた、なんでもかんでも私抜かす気なの!?」


「だからお姉ちゃん、私そういう気ぜんぜんないし、なんにもしてないの!!

 てか私だって好きな人いるし、チェニスさんにそういう気ないし!!」


「私も好ましく思っている程度で

 まだ本格的に婚姻を考えているわけではない

 それより今日は祝いの席なのであろう? 姉妹で喧嘩は宜しくないぞ

 それでは皆で、ユミア殿がもってきてくれた飲み物を試そうではないか」


 チェニスのマイペースの発言で辛うじてその場は収まったが

 ユミアは内心で、また妹が面倒ごとを引き起こしたと溜息をつくのであった





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